第2話

シンプルで小さな二粒のダイヤ。コレを渡してくれた時の龍斗さんの恥ずかしそうな顔を思い出して笑みが零れる。



「痛かったですか?」



意味深に笑ってそう尋ねる倉田さんに一瞬首を傾げて、ああピアスホールの事か、と思い当る。


「あー…でも思ってたよりは大丈夫でした。龍斗さん上手だったから」


「…そうですか、若が。しかも若はお上手だったと。そうかそうか~」


「…?」


何だろう、倉田さん上機嫌なんだけど。キョトンと瞬いていると更にそれは続く。

ズイッと身を乗り出して顔を寄せてくる彼。な、何事…?


「羨ましいですねぇ、秋穂さんの初体験…。あの若の武骨な指が秋穂さんの白く滑らかな柔肌を貫通…」



「――オイ、その微妙なニュアンスの会話を今すぐ止めろ!」


低い怒声が頭上で響いて、いつの間にか隣に居た龍斗さんがあたし達を睨みつけていた。


「お前も余計なことコイツに話すんじゃねぇよ」


「え、普通に喋ってただけですけど…」


「そうですよね~秋穂さん」


「黙れ倉田。シメんぞテメェ」


凶悪な顔で凄んでから、龍斗さんはあたしの腕をがっちり掴んで玄関へ歩き出す。後ろではやれやれと肩を竦めた倉田さんが見送ってくれていた。













「お前ああいう話外でするなよ」


呆れた様な声。スーツのジャケットを適当に椅子の背に掛けながら、いかにも不服そうに注意される。


「…何で怒られてるのか解りませんけど…はい」


「…」


ジトッと睨み下ろしてくる視線を余所に、コーヒーでも淹れようとキッチンに向かう。


最近いつもこうだ。龍斗さんは何かとあたしの行動に目を光らせては文句を言う。そんなに非常識な事はしてるつもりないんだけどな…。


丁度おやつの時間、なので、コーヒーにストックの焼き菓子もつけてテーブルに運ぶ。



「今日はもうお仕事終わりですか?」


「いや、また出る。飲んでくるから先に寝てろよ」


「…わかりました」



正式な後継者に指名されてから、龍斗さんは更に忙しそうだ。将来的に傘下の組を纏める為に、遠くまで出かけて行く事も増えた。


コーヒーに口を付ける横顔を見て心の中で溜め息を溢す。



(顔色悪い…疲れてるんだろうな…)



毎日夕食を一緒に取る事も難しくなってきて、龍斗さんの健康状態も心配になる。放っておくと煙草ばかりに手を伸ばす人だから…

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