夏休み。祖母に傾聴ボランティアへ連れ出された志布志幸子(しぶし さちこ)は、事故のせいで首から下が動かなくなった金子美咲(かねこ みさき)の退屈な話を聴くことに。だがその最中、美咲の読書感想文を見て閃いたのだ。書きあぐねていた宿題、これを丸写しにすれば! しかし提出した読書感想文がコンクールで賞を取ってしまって……
幸子さんは自分が働いた悪事のせいで文学少女を演じるはめに陥ります。ウソを突き通すため美咲さんに頼り、それこそウソでウソを塗り固めた日々の果て、自分のついたウソと対峙するわけですよ。
この“ウソ”を中心に据えたシンプルで太いストーリーラインがすばらしいのです。でも、間に置かれた美咲さんの思い――なぜ彼女が幸子さんを助けてあげたいと思ったのか、なにより小さくありながらなにより大きな理由があればこそ、おもしろかったですだけではけして終わらせない、厚いドラマを魅せてくれる。これがなによりすごい!
読みやすさと読み応え、ふたつ同時に味わえる素敵なお話です。
(新作紹介「カクヨム金のたまご」/文=髙橋剛)