シャンプー
秋桜
1
「ユキっ、どーーーーーーしたのその髪ぃっ‼‼」
「さーちぃーーーーーーーー…」
ユキが両手をいーーっぱいに広げて泣きながら突っ込んでくる
文字通り”突っ込んで”くる
危うく一緒にすっ転ぶところだった!
あたしが男だったら、こう”がっしり”受け止めて、
ぎゅーってしてから、『泣かないで』なんて頭なでなでしてあげるのかな
「やっぱり、フラれちゃった…」
はぁ… だからやめときなって言ったのに
ユキとは保育園、小学校とずっと一緒に過ごしてきた
中学でも同じ美術部に入って、もし一卵性の双子だったら入れ替わってもなんら困ることないくらいお互いのあれこれをよーーーく知っている
そして
これだけは避けたかったのに、好きな人も一緒
ユキがある日の帰り道
「好きな人、出来ちゃった。」
そうつぶやいた瞬間、嫌な予感がした
予感は当たっていた
2年生になってクラス替えをして今度はユキがアイツと同じクラスになったから
アイツは転校生だった
中一の夏休みが終わって新学期が始まる最初の日だった
同じクラスの男子より背が高かったあたしは、窓際の一番後ろの席に飛び出す形でひとりで座っていた。必然的にアイツの席はあたしの隣になる。アイツも背が高かったから。
どうして中一の途中なんかに転校してきたのか。どうやら前の学校で問題を起こしたらしい、両親が離婚したから、帰国子女で実は年がいっこ上なんだ とか
クラスではいろいろと噂になった
ちなみに、背が高いだけでなくアイドルが目の前にいるみたいな容姿なんだからそれこそ女子が放っておくわけがない
そして女子のルーム長だったあたしに都合よくあれこれと頼み事をしてくる
「わりぃユキ、ユキちゃん、ユキ様ぁ~部活間に合わなくなっちゃうの。今度必ず代わりにやるから!お願いします♡」
何度もあったはずの”今度”は一回もなかった
バレンタインデーには
「参っちゃうな~、今日オレ様ってば何人に呼び出されちゃうんだろ。
あ、いいーこと考えた!ユキ今日だけオレの彼女になれ!な、いいっしょ。」
ふざけて肩に手を回してぐいっと引き寄せられてしまう
ドックン…
し、信じられない
こんな残酷でアホらしい状況なのにあたしってば…
「ざけんな‼いーーかげんにしろぉ!」
ふっと力が抜けて解放されたあたしの顔を愉快そうにのぞき込んでいるアイツ
コラっばかっ心臓、止まれ!いや止まっちゃダメだけど沈まれ‼んで顔赤くなるなっ‼
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