第24話 エビエビエビ
ウィリーに連れられて、イルカ運動プールへ行く。
途中で分けられて、僕は医療室行きだけど。
タコ・シェルを脱がされた後の検査は、血液検査と寄生虫検査だけで済んだ。
何回来ても医療施設でのチェックは怠らない。
イルカさん達、愛されてるね。
僕も何度も無料で健康診断を受けられて嬉しいよ。
イルカ専用運動プールには、あいかわらず強く明るい太陽灯が煌めき、塩素の匂いがしない酸素をたっぷりと含んだ透明な海水が満ちている。
今日は人間がいない代わりに、遠くに数等の灰色のイルカがゆったりと泳いでいる。
あのイルカ達の中にも、盗掘に協力しているイルカがいるんだろうか?
だとしても僕には何もできないけれど
物思いに耽る僕を、ウィリーが突っつく。
『エビ!はやく!エビ!』
『了解。まずは注文エリアで普通に注文してみて』
『キュ!』
ウィリーが運動場の壁の赤線で囲まれた場所を突つくと、エサの注文画面が立ち上がる。
前はここでエビタブを押して注文したんだよね。
今日は違うことを試してみる。僕の予測が合っていると良いけれど。
『質問があります。エサのカスタマイズはできますか?』
『はい。可能です』
注文画面で青いイルカが『どんな風にカスタマイズにしますか?』と聞いてくる。
やっぱり!この機能、あると思ってたんだ。
なにしろ人間はイルカが大好きだからね。
『スペイン産のなんとかいうエビ…の解像度を上げたいのですができますか?』
『カラビネーロですね。可能です。何%向上させますか?』
『300%向上させてください』
『了解しました。ただし価格と製造時間も300%向上します。宜しいですか?』
『ウィリー、宜しいって返事して』
僕は注文の手助けはできるけれど決済はできないので、最後はウィリーに返答してもらわないといけない。
ちょっと高いかもしれないけれど、金持ちイルカなら出費できるだろう。
『宜しいキュ!』
躊躇なくウィリーは許可を出す。
やっぱりね。
しばらく、といっても数秒が数十秒になった程度だけれど、注文エリアの壁からリアル度300%増しの海老が放出された。
『エビィ!!』
観察するまもなく、ウィリーがぱくり、と咥えてしまった。
『キュー!キュキュキュ!!キュー!!』
そしてなんか悶えてる。
なんか変なものでも食べたのか。
いや食べたね。
『もっと注文するキュー!!』
水流が乱れる勢いで迫ってくるウィリー。
AWがかかるけれど、まあいいか。
どうせ僕の財布じゃない。
『じゃあ注文するから、また最後に宜しい、って返事して』
『わかったキュ!』
再び3尾ばかり注文すると、画面内の青いイルカが回りだした。
ついでに画面外のイルカも縦回転している。
『エビエビィ!』
パクリ、と出てきたエビをウィリーは三匹同時に咥えあげようとしたけれど、エサがエビっぽく動いたために一匹を咥えそこねた。
おかげで、僕は少しばかり300%解像度高め人工エビを観察する時間が持てた。
お高め人工エビは、パッと見でかなりエビらしく見えた。
爪もあるし、つんとした触覚も突きでた目もある。殻もザラザラとしているように見えた。
脚はちょっと省略されているかも。
たぶん600%ぐらいまで解像度を上げたらいけるかな。
もっとも、そんな点までウィリーが気にするとは思えないけど。
と、観察していたら横からぱくり、とウィリーにエビは取られた。
『もっともっと!』
ウィリー、僕をつついてもエビは出てこないぞ。
なんか墨が出そう。
『ねえウィリー、もう少し希望はある?味はもっと濃い方がいいとか、サイズは大きいほうが、とか。もっと動いたほうがいいとか。ちょっとAWはかかるけど』
餌のカスタマイズの幅は結構ありそうなんだよね。
テストできる部分は、お大尽がついている今のうちにテストしてみたい。
なにかの役に立ちそうな気もするしね。
『AWならあるキュ!』
さすが金持ちイルカ。人間からAWを巻き上げる名人なだけはあるね。
結局、僕は味が濃いエビ、よく動くエビ、大きなエビを注文してやった。
ウィリーは大満足。
『タコ、便利だキュー!』
まあね。頭足類は便利なだけじゃなく賢いんだ。
『タコ、毎日エビ造りにくるキュ!』
ふむ?ちょっと話の流れが変わってきたな。
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宇宙の果てで働くタコは人間になりたい ダイスケ @boukenshaparty1
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