祝福のスキルってなに? 〜成長と共に増えるスキルは持て余すばかりで使い熟せないよ!貧乏から目指してない頂きへ続かないで欲しい遠い道。道草って必要?逆にしちゃダメですか?
甘埜衣 羽都
6歳から始まる編
第1話 夢、のはなしとか
恐れ入ります。
5話くらいまでゆっくり進めてます。
ただ、こんな事があったらな的な妄想を書きました。
気に入った方が居たら幸いです。
◇ ◇ 夢
これは夢だ。
夢の中で夢をみたような夢。
へんな夢。ありえないような夢。
そんな感じの夢。
たぶん、????だと思う。目の前に座っていて、なんでも知ってる、質問にもなんでも答えてくれる、そんな会話をしていた????が、そう、そんな存在だったんだなと思う。
その表情はよく見えなくて、よく分からなかった。
ことばを話す口あたりは見えてたと思うけど、話は今はなんとなくしか覚えていない。男の人のような、女の人のような、どちらとも取れないような、そんな雰囲気の、そんな印象。
あれ、ことばは、耳で聴いていたのかな。
音だったような、調べだったような。
耳では無いところで聴いていたのかな。
そもそもことばだったかな。
優しい音楽のような。
でも内容は記憶には、心には残ってる。
だけど、今はもう思い出せない。
ほんと、色々だった。
でも、不思議と怖くはなかった。
そういえば、着ている服の形も、その色も覚えていない。
色々教えて貰ったけど、話の内容はあとで少しずつしか思い出せないと、忘れることはないけれど、直ぐには全部は思い出せないと、そう教えてくれた。
混乱しないように、出来るだけなるべく成るべく、そっとそっーと優しくと。
あとで分かったけど、最後の少しずつってとこ、それだけだけどはっきり覚えていた。
そこだけ覚えてても、直ぐには役に立たない。
でも、大きな混乱は回避出来そうだと。
長いような短いような、そんな風な会話と言う名のカタコト的な通信を交わし、色々話しを聞いていたけど、目の前が突然真っ白になったあとで、また真っ暗になって、そして意識がなくなった。
そして、目が覚めた。
あれは、いつの頃の、何歳の時に見た夢だったのだろう。
あの時の少しずつとは、なんだったか?
このスキル『キトウ』って、なんだったかな?
◇ ◇ 近況とか
名はホルス!9月で6歳の、この家の次男坊!
窓から見える庭には朝から雨が降っていて、水溜りも出来てるし、今日は外では遊べない。
晴れていて、体の調子が良い時には、外で村中の同じくらいの歳の友達と遊べるのに。
狭い部屋の中では、今は母がベッドの上に座って、妹のアキラに乳を飲ませてる。
僕は床の上に敷いた麻袋の上に、さっき母が庭の端に植えてあり、売るために切って来たニラを並べて、良いのと悪いのを、弟のアスラと選り分けている。3歳の弟は見てるだけで、役に立たない。黄色いのを握って振り回して遊んでいるだけだ。
少しでも黄色くなった部分が有れば、売れない。緑色でツヤツヤして元気そうなのは、売れる。緑色でも元気の無いのは、売れない。緑で萎れてたり、傷がついてたりするのは、売れないけど、其れらは自分家で食べれる。枯れて黄色のは、捨てる。
今年5歳になる僕に出来る、所謂、農家のお家のお手伝い。
売れるのは、母があとで綺麗に揃えて、夕方に来る行商人に届けて、少額だけど買い取ってもらえる。
行商人は後で大きな村や町を回って、最後に街に品物を卸したり、仕入れたりして、またうちの辺境の開発村まで、回って来てくれる。
野菜とかは傷むからマジックバッグに入れるとか。
そのバッグが高かいとしか知らないけど。
いくつかの行商人で、この商いを回してる。
でも、行商の場に子供を連れて行くことはない。
3歳と0歳を抱えていては、雨の日は危ないので。
なので、僕は今日は家の中で過ごすしかない。
遊び相手になってくれるかも知れない兄は、夕方まで勉強に行っていて、今は家にはいない。
帰ってくるまではまだまだ時間がある。
◇ ◇ 子供は大切
母が18歳の冬に生まれた兄8歳は、今年に7歳となる農家の子供達が通う、近所の親切なおばさんの元に、夕方のきりのいい時間まで勉強しに行ってる。
今、母から聞いて知ったけど、ちゃんと学校で先生だった。
末の子供が生まれたうえに貧乏でお金が足りなくて、学校が1年遅れたんだって言ってた。
そんな事は、貧乏な村ではよくある事だって。
夕方まで預かってはくれてて、親が迎えに行かないと帰れないのは、一人で外に出ると、子供はいつの間にか攫われてしまうからだ。
そしていつの間にか、知らない街の人買いに売られ、また買われ、また別の知らない街の奴隷商の店先とかに並ぶ事になるかも知れない。
子供は親によって口減らしで売られることもある。
特に農家の女の子はそんな目に遭いやすい。
親元に直接交渉する人買いもいれば、酷い人買いや親になると生まれる前から引き合いに。
戦争の後は特に、男の子の人攫いとかが厳しくなると、注意されたりしてる。
子供にとっては安心できない危ない世界だ。
◇ ◇ 仕事と学校と
僕のいる国では、子供は何を勉強するか、将来は何の仕事に就くか親と話して決めて、其れに合った先生の所へ、自主的に自費にて学びに行く。
それはお伽話のお話しで、すっごい大昔の大昔に、異世界と言う国から召喚された勇者さまと聖女さまが、それまで居た国の有り難い習慣として広めたと言う勉学の為の″教育を受ける権利の保障″や、勤労の為の″毎日8時間働けば幸せに暮せる″や、それらの言葉に従った、この国だけに伝わっている諸々の風習。
他に呪術言葉″働き過ぎは呪われ死ぬ″とか
″日曜を家族に捧げぬ者は天国に行けない″があるけど、時々本当に仕事を休まないで、楽しそうに働いているけど死ぬ人がいるので、信じてる人が結構いる。
天国に行く人の働き方は良く分からないけど。
死にたくは無いけど、働かないと暮らせないのは当たり前だから、当然両親も働き者だ。
ビンボーハヤダ、ハタラクモーンと、お伽話の勇者が好きだと言われた歌を歌いながら、父は今日も畑に歩いて行く。
兄は父と同じ農家になる為、農家の事を教える学校に2年間通い、内1年で文字の読み書きやお金の計算を、残り1年で農家としての最新の農耕技術と実践で栽培から商売的な事まで教わると聞いた。
必要であれば3年通う人も、たまにいるとか。
3年目は更に学費も要るし特別な事を学ぶらしい。
両親が子供に家で勉強を教える等の時間的な余裕は無く、色んな意味で厳しい状況と両親は言っている。
何しろ父は昼間は農業などの労働でいつもクタクタで、夕食後は内職に励み、いつ寝てるのか分からないぐらい疲れている。
いつも朝から眠たそうにしてるしね。
外では8時間しか働かないので、呪われないと豪語してるけど、たまに他所のお父さんが呪われ死ぬ事例があるとよく噂になってるので、心配はしている。
それでも、夜も遅くまで色々頑張っていると、時々煩いくらいに自慢してくる。
その時は尊敬できないくらい鬱陶しいし、僕の心も荒ぶることがあるくらいだ。
朝からいきなり抱っこして頬ずりしてくんな、男同士で気持ち悪い!
こっちが5歳の子供だと思って、舐め腐りやがって、大人になったら覚えてろ!
ヒゲも剃れ!こっちの顔が痛い!、擦ったところが赤くなるしほんと痛いんだ!顔近づけんな、こっちの美肌が痛むんだ!
いつもはしない、へんな匂いも擦り付けてくんな、臭いだろ!抱っこはいいから早く降ろしてくれ!なんか生ものなんかの臭いがして臭いんだー!
僕の顔は笑ってるけど、ほんとは心の中で悪口叫びまくってるって、知らないハズだ!まったく!
母も母で家事から育児やら、父の手伝いから何から何まで忙しそう。
2人とも口癖のように、農家には日曜はないんだ!と、言って、頑張って働いている。
有り難い両親であり、当然だが尊敬している。
母の名前がナツナで、父には村一番の美人と言われている。
母も目の前で言われてその時だけは嬉しそうだよ。
父と母は同じ歳で、学校で知り合ったらしいけど、狭い村だし良く分からない。
父の名前ががタクヤで、母からは素敵な旦那さまだってさ。
爺さまがタクマなんだけど、弟がアスラで妹がアキラだから、そう言うことらしい。
村の中では、安直名付の家系と、失礼な噂があるらしいが、本当だと思う。
結構恥ずい。
学校の勉強では、文字と計算の覚えが良い子は、1年待たずに実践に移行していく。
これも『オボエ』か『ナラウ』スキルが取れ次第、学習能力が良くなるからだ。
そして、余程な不運者やバチ当たり者でも無ければ、卒業までに『ノウギ』スキルが取得出来る。
父も同じ過程で、学校で取得している。
『ノウギ』のスキルは色々な意味があるけど、この過程だと『農業技術』のスキルになると父が言っていた。
別の踊りスキルでの『ノウギ』は、『能舞技術』と言うのがあり、全く技能が違う。
スキルの元話は、大昔から伝わるお伽話、魔王を倒す勇者さまと聖女さまからの言い伝えらしい。
実話らしいと噂があるが、その証拠は勇者の国に咲いていた桜の木らしい。
そんな桜の木なんて昔からあるに決まってるし、証拠にはなって無いと、僕は思います。
勉強の職種は村々で多少の赴きがあり、海とか港が有れば漁業とか、森や山が近ければ林業、鉱山が近ければ鉱業など、色々だと、兄から聞いた。
学校の本で読んだらしい。
街になれば、飲食や宿泊や服飾など、本当に色々ある。
その村や町、または街で教える体制が有れば、学費とか教科書とか用意出来て通える事が出来ればとなる。
基本自治体や家が貧しく無くて、大人達が教える事に余裕が有ればになる。
其れは村長や町長、領主とかの考え方次第。
国になれば、貴族子女向けに高額な学費なんだけど、専門の学校も用意されている。
平民向けの専門の学校も一応ある。
学校も品位とか格が有るらしく、貴族と平民は別の学校になる。
地方の貴族では家庭教師も雇えるが、『社交のために王都へと』が一般的で、養子や婿取りの対策も有るとか無いとか。
平民の学校では、成績優秀とか品行方正とか眉目秀麗とか揃った者などが、偶に早世した子息子女の穴埋め的に養子に迎えられる事もあるんだって母から聞いた。
僕は次男だけど養子に出される事もあるかもだ。
あるとしても、養子先も農家だけどね。
◇ ◇ 農家の税金と学費
兄が通っている農家、農業の教育についての一般的な、その学費の額は、その家が国へ納める税金の額の5%と国が定めていて、少々高い設定となっている。
定めているのは、不正を防ぐ為。
過去に勝手に国が値上げしたとの詐欺を働き、着服された事が有り、問題となった。
当然、王都で公開処刑されたらしい。
それ以来値上げされていないと、母が話していた。
先生は納められた学費は非課税で受け取れるが、全額勉強の費用に使わないといけない。
先生の収入は国や領主から別に支払われ、生活費は其れを使うけど、税金を収める義務は免除されていて納税はない。
税金の計算ではその家の総合年収を元に算出する。
農家だと1日の稼ぎとしては、夫婦で銅貨12枚そこそこが平均的な儲けなので、12月全部で360日だから、年間4320枚で、銀貨43枚と銅貨20枚だ。
儲けは経費と田畑面積の取れ高差引の8割で算出。
年によって取れ高が違うので、一律面積から8割。
不作でも面積から8割なので、蓄えが大事。
農家なので狩猟などの臨時収入は非課税。
8割だと銀貨34枚と銅貨56枚。
端数は切り捨てる。
その8割を10割としてから税を計算する。
この国の税金が開発村の農家の場合8割分からの4割なので、40%が1382だから銀貨13枚と銅貨82枚が税。
で、学費は税の5%で、銅貨69枚だ。
お世話になる時に1年分全額払うので、親としては少し厳しいと、母が言っていた。
僕はまだお金の計算は無理だけど、母が何かお金のことに関しての話になる度に、父に何度もこの話をするので、いつの間にか覚えてしまった。兄も空でスラスラ言えるので、僕の頭が良いわけではないみたい。
不作が続くと僕の学費が無くなるので、そこはお家の神棚に祀った豊穣の神様に、毎朝母と一緒にお祈りと一緒にお願いもしている。
だからきっとなんとかなると思う。たぶん。
兄との歳の差もそこに関係してると母と父が話していた。子供2人とか3人とかだと間違いなく学費が払えない。そんな農家が多いらしい。
出来ちゃった事件、と言うらしい。
母曰く、有名な事件で解決してないらしい。
うちには事件は無い!と母が言うから、ウチの家には襲われる危険は無かったらしい。
なので弟は3歳で妹は少し遅れて0歳。
少し遅れた理由は、母がどうしても女の子が欲しかったらしい。
家族が男ばかりでは、つまらないって。
◇ ◇ 領地の税、国の税
ここの開発村は200世帯くらいかな程で、ほぼ農家だけど狩を主とする猟師も居たりする。
でも年収はどこも似たり寄ったり。
例えば一軒あたり銀貨14枚なら、村全体だとおおよそ金貨28枚で、ご領主様の領内にある開発村が50あって、その村数なので領地では開発村だけで年間金貨1400枚の税収だよね。
実際には領地直営の奴隷にやらせてる菜園もあるし、領地事業、各種商売業、冒険者事業など色々あるから、もっと税収があるので、領主はお金持ちだ。
本当のところは、開発村税収の倍以上だと思う。
国は領主領地と直営領地があって、総合58の領地があるので、開発村のみの税収金貨81200枚、大金貨8枚と金貨1200枚だ。
母の計算だから間違いない。
いやいやある所にはあるもんだね、そりゃ毎日晩餐会とか夜会なんてする筈だよね。
それとは別の話で、お金の話だけど、因みにだけど大金貨1万枚で小白金貨1枚になるそうで、もう訳が分からなくなるよね。
王都で月に一度とか開催される、物凄い品物が出品されるオークションだと、落札するのに必要だって。
大きな買い物の前例だと、どこかの国の戦争で捕まった戦争捕虜の話しで、戦争に負けた国の第三王女17歳が小白金貨2枚で落札されて、その兄18歳の第二王子が連れて帰った話が有名なんだ。
戦争に負けてるけど大金をスパッと払える様な国!
凄い事だし素敵な事で、その国はまだあるらしい。
沢山の負債が課せられ火の車だって言うけど、そのお金を出してるのは実際に税金を払ってる国民です。
母の巷の噂情報網だけど、正直言ってかなり凄いなと、子供心に思ってしまいました。
◇ ◇ 兄と教室
それで学校に通ってる兄は時々機嫌が悪い。
最近学校内で何か起こってるみたいだ。
兄が通っている農家の学校には、今年入学の6歳の男の子が5人、6歳の女の子が5人いるから、兄も入れると11人居る。
開発村にしてはこの年に生まれた子が10人とは、結構と言う程、多い方らしい。
僕の年代では各3人の計6人なので、比べても凄く多いし、僕の世代は逆に少ないらしい。
兄の組の特に4人が、兄に比べて体も大きく、力も強いらしい。上の年の8歳の男の子と比べて兄は少し大きい方なので、兄が小さい方ではないんだけども、その噂の奴等がおかしいと思う。
そしてその噂の奴等が問題らしい。
ヤツらの性根もヤツらの親には似て無くて、かなり荒っぽくて、親もほとほと困ってるらしい。
まだ6歳とか7歳なのにね。
他の兄弟は普通らしく、乱暴では無いらしいので、突然変異・先祖帰り・悪霊付きとか、散々に言われているとか。
そんな彼らだが、同じ教室の女の子の中に美人さんがいて、取り合いらしい。
その子の事が好きっぽいのに、子供だからイタズラしかしないので、その対象の女の子は狙われてて、好かれているのは分かってるけど、イタズラとかされるのはイヤだから敬遠するし、その美人な女の子にはその気も無いので、とにかく不毛、発展しないって。
その渦中の女の子は僕達の住む開発村の村長の娘で4人姉妹の長女なんだって言うんだけど、その村長には、あとを継ぐ為の息子が居ない。
将来は娘の誰かに婿養子を迎えて貰って、婿養子に後を継がせたいらしいけど、そんなに上手い話なんて、コロコロと転がっている筈が無いと思います。
そして跡取りとなる様な、優秀な男の子の養子を取るには、それはもう凄く結構な金額が必要となるらしいので、そこは最終の手段となるらしい。
◇ ◇ 乱暴者と先生と兄
夕刻となり学校も終わりとなって、さっき母の迎えで一緒に家に帰ってきた兄は、いつも通りに少し機嫌が悪い。と言うか、かなりご機嫌が斜めだと思う。
今日の学校の教室で、何か問題があったらしい。
色々と話を聞けば、ご機嫌斜めの原因となったのが教室の男の子で、件の乱暴な奴らだとの話だったし、其奴等が先生の言う事も全くと言う程聞かないし、兄も含めて組のみんなとか、周りに迷惑をかけられていて、イライラしてるって事だった。
また、村長の娘の美人さんにちょっかいをかけると、その美人さんが兄の後ろに隠れたりするし、要らない迷惑が降り掛かって来るなんて事になっているらしいです。
更にはどうにかして欲しくて担任の先生に声を掛けて助けを求めれば、奴等には「情け無い奴だ!」と攻め立てられるし、立場が無い。
それで先生には何故か、「弱い女の子は守ってね」と、逆に頼りにされてるって事です。
そんなのばっかりで、字の練習は兎も角、計算の練習では気が散って、集中出来なくて、今日は何にも成果が無かったと、不貞腐れています。
兄の勉強は、字の読み方とか書き方の基本はちゃんと出来ててそれ等は終えて、綺麗な字を書く為の書き取りの練習と、国の歴史の勉強の為の本読み。後はお金の計算の練習で、足し算とか引き算とかは終えてて、掛け算と割り算の計算の練習に入ったと言っていた。
お金の計算に疲れ果て、それで疲れた頭を歴史本読みで回復してそれを繰り返す事で勉強を熟してる。
合間に書き取り、自分の気分気ままにどの勉強とか練習とか読書とかを選択しても良い。
上手く行けば半年くらいで、実践に移れる計画も考えていたのにと嘆いてる。
それで、今日の予定していたその計算の練習が、今日は特に煩過ぎる奴等の所為で全く手に付かなかったから、かなり悔しかったらしい。
五月蝿く、騒がしく、喧しく、忙しく、全く集中出来ないってまるで拷問をされてたみたいに聞こえる。
村長の娘の長女マアリは、其奴等に絡まれ始めると直ぐに逃げて来て兄の背に隠れるし、其奴等はカナマもヤタエもラタフもサキネも4人で嫌な連携とかして来て、マアリからの邪魔も含めて、もう其奴等のする事なす事の全てが兄の邪魔でしかないし、そんな事しかして来ない。
それに先生が居なくなるときに見計らって、大体仕掛けて来る事が多くなってきたらしい。
兄の組の担任の先生は一年生だけの専任ではなくて、一年上の生徒の面倒も補佐しているので、ずっと自分の担任の組にいる訳でも無いから、常に一緒では無いんだって。
他の生徒からも質問とかされてて、農業技術の本の内容でとか、読本の理解が難しいところの補佐や、文章理解度が高く無いと分からない様な高度な質問などが多いと聞いている。
通い始めて3ヶ月にもなるし、みんな字の読み書きが出来て、余裕が出て来たのが、其奴等の動向が悪い方向に目立ち始めている。
其奴等が真面目に勉強しないならば、早々に追い出されるとか話したり、学校を追い出されたら学費も返金されないとかの処分された時の話を何度も何度も忠告として真面目に言われてるのに、聞く気もないのかほとんど改善されていない。
彼らの親にも、今度5度目の学校からの注意を受けたら、全員が退学との通知をしてるのに、本当に平気なのか?
親も既に諦めてるのかな?
逆に勉強が嫌で、退学したいのではと思わせられる行動ばかりで、理解しにくいと兄が言っていた。
そして、兄の悩みは奴等のことばかりでは無かった。
◇ ◇ マアリ達の無謀な野望
兄は実は村長の娘で長女のマアリに、開発村の村長の婿養子にと狙われているらしい。
娘と親の村長との画策だ。
婿養子の座には、小さな村だし他に良い物件って言うか、優秀な男子の候補が居ないらしい。
まだ7歳だと思うけど、女の子は子供だけど考え方が大人なんだから、ある意味怖すぎる。
ひとつ上の子供で、貧乏で学校に入り寂れた8歳だし、年上ですしそれで他の7歳の子より頭が良さそうなだけなんだけど、それでも兄は優良物件なのかな?
兄の将来性とか、頭の良いところとかは誰が見て判断してるんだろう?
そもそもの話し、僕の兄に優良な将来性って本当にあると思ってるのか?
他の奴らがバカっぽくて、全然将来性が無いように見えるだけかもしれないけど本当にバカなのかな?
実は奴等は親共々婿養子の話しがイヤで、事前に情報を仕入れて、ここは芝居を打ってみて回避出来ないか試している可能性もあるのではなかろうか?
お人好しの兄はその可能性を否定した。
もしかしたら奴等にマアリを押し付けれるかも知れないのに、ちょっとは頭を使って欲しいと、あとを継げない弟ながら思った。
村長の娘マアリの下の姉妹では、次女のトワネが僕と同じ歳で、兄のアポスがダメなら、妹と僕ホルスを婿養子候補にと、村長を含めて密かに画策しているらしい。
僕はその子に会った事がないけど、向こうは会ったことがあり知ってるらしい。
なにそれ!
なんか凄く怖いし、出来れば会いたく無い。
兄世代も僕世代も、近辺に良い候補が居ないらしいけど、どうしたら良いだろう?
「お前も諦めどきのようだな」
お前もな。
なんて兄への返しで言ったら怒られるだろうなあ。
誰か、誰でも良いからウソだと言って欲しい。
でも、本当にそうなら兄が先に諦めろよ。
年功序列って、勇者が言ってた言葉があるからね。
いっその事僕も乱暴者でバカのフリをしようかな?
あ、今ふっ、って兄に笑われた。
「今更足掻いても今の俺もお前も子供では何にも出来ない。非力で無力で頭も回り切れてないし、今のウチでは爺さま含めて太刀打ちなんて出来るわけないよ」
なんかもう、事は既に遅いらしい。
僕は相手の掌の上に、既に転がされていると?
イヤイヤ、兄も同じ状況じゃないのかな?
僕よりも自覚が足りていないのかな?
母の話だと僕等2人は、良い顔なゴツイ父よりも、母や婆さまの柔らかく優しい方向の顔によく似ていて、まぁまぁ女の子には気に入られるくらいかなっという、母自慢の造形のお顔らしい。
でも世の中には上には上が居て、王子さまクラスには負けるので、大きく自慢は出来ない程度だから、自惚れたり気にしてはダメなのだ、と、事あるごとに声高々に説教されているのはなんでだろう。
他に性格も評価が高い。
他の比較対象が乱暴者が多いので、大人しめで理性的に見える僕らは、なかなか良い方に受け止められてるらしい。
兄は勤勉だと思うが、僕もそうとは限らないのに。
「そうだきっと今からでも遅くない、僕は今からバカになろう!」
兄よ、そっぽ向いて笑いを堪えるのは、肩震えててはっきり分かってるし、被害は軽いけどやっぱり傷つくので、やめてくれないかな。
因みにマアリと僕、トワネと兄、の話ではダメらしい。
イヤイヤ、僕だってゴメンだし、まだ5歳の小さい子供だし、僕の将来を勝手に決めるなだし、いろいろ言いたい。
女の子は大体、早くからそう言う事を考えている子が多いらしいので、これからは近寄りたくないし、そう目立たないふうにする事を目標に行動して行こう。
兄は僕の横で何度も首を振ってるけど、認めたら負けだと思います。
◇ ◇ 兄の静かな野望
兄は父と一緒に家の仕事をこなし、他にも耕作地を作って、作付け耕地面積の拡張をしたいらしい。
今の畑の近くの林を開墾して畑にする案自体は父からの話だけど。
林の奥の危険な森までかなり距離はあるし、今のところ林の手前なら魔物も極偶に出るくらいだけど、森ほど多くはないと、父は言う。
開発村だし、他の家も準備を始めているし、何しろ早い者勝ちと、最近村長から知らせも正式に出ている状況。
領も税が増えて、推奨案件だろう。
耕作地が増えれば忙しい分、二人で掛かればその分の力仕事に余裕ができ、暮らしも楽になるからだ。
今は他家も人手待ちで、子供を鍛えるしか準備として、やる事が他に無い手詰まり状態。
やるなら早く進めたいところだ。
その話には僕や弟や妹は居ないらしいけど。
「でもマアリはダメだ」と、兄は怒っている。
婿養子だと元家の畑に掛かれなくなる。
婿先の家の畑仕事と村内全体の総合的な仕事に専念となるし、納税とか貴族とのやり取りも増える。
この領の貴族はマシな方だという噂もあるって聞いてるけど、それでも無礼を働けばクビが飛ぶし、絶対に専業農家の方が気が楽に決まっている。
兄は家の相続を僕ホルスが継いだとしても、自分の力で別の畑を開墾し、農家を続けるつもりのようだった。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
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