第3話 ちゃんと両思いだから。

それから俺たちは、手を繋いだまま商店街をぶらぶら歩いた。


「ねえ、輝人。なんか甘いもの食べたいな。」

華乃が俺を見上げてくる。その顔が可愛すぎて、つい笑ってしまった。


「じゃあ、クレープでも食べる?」

「うん!」


俺たちは並んでクレープ屋に向かった。華乃は迷いに迷って「いちごチョコ生クリーム」を選んで、俺は「バナナチョコ」を頼んだ。


「一口ちょうだい。」

華乃が俺のクレープをじっと見つめるから、俺は黙って差し出した。


「んー、おいしい!」

嬉しそうに笑う華乃を見てると、なんだかもう、胸がいっぱいになる。


「じゃあ、俺も一口。」

そう言って華乃のクレープを取ろうとしたら——


「だーめ。」

華乃はいたずらっぽく笑って、クレープをひょいっと遠ざけた。


「え、なんで俺だけダメなの?」

「だって……輝人に食べられるの、なんか恥ずかしい。」


その言葉に、俺の心臓が一気に跳ねた。


「……じゃあ、次は間接キスの罰ゲームな。」


俺がそう言うと、華乃は「えぇ?」って困った顔をしたけど、ほんのり頬を赤くして、最後には小さく笑った。


「……それなら、罰ゲームじゃなくてもいいかも。」


俺たちは顔を見合わせて笑い合った。


きっと、こんな時間がずっと続けばいいなって思った。


——もう、罰ゲームなんていらない。俺たちは、ちゃんと『両想い』だから。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る