6話 変化は覚醒と一緒に来ます

チュンチュン…


「んん…」


「はっ!?」


バサッとその場から布団が落ちる。


「はぁ…はぁ…夢…か?」


私は今ウォンデッドに斬られて…それで‥


「そうだ傷!!」


そう思い、確認すると胸にはぐるぐると包帯が巻かれていた。


「やっぱ…夢じゃ…ない」


驚きながらも、今自分が生きていることにとても安堵する。


あそこまで、死にそうになったのは初めてだ…いや、もう絶対に経験したくない。


「ここは…私の部屋だよな」


1度だけ見た、畳や窓にドア。

いつの間にか家に帰ってきてたらしい。

多分だが、意識を失ってからすぐに運び込まれたのだろう。


(生きてることに感謝だな…)


とりあえず風呂に入りたい。治療をされていたとしても1度身体が血にまみれたと思うと何だか気持ち悪い。


そう思って私は外出時に括っていた髪を下ろし、手をクシのようにして上から通そうとした…が頭のてっぺんに触ると違和感があった。


(うん?なんだ?)


私は両手を使い、頭のてっぺんを触る。


モフモフ…


「もふ…もふ…?」


急いで鏡の前に向かう。


そこに写っていたのは私であり私でなかった。


「な、なんだこれぇぇぇぇぇ!?」


-------


ドタドタドタ…ストン!


「おいおい、誰だよ廊下走りながらふすまを乱暴に開けたのは…って朱乃しゅのか」


「おはようっす、朱乃ちゃん!怪我の具合は大丈夫っすか?」


そう言うカズと椿つばきの呼び掛けを無視し、私はちゃぶ台の上にバンっ!と手を置いた。


「怪我なんかどうでもいい!!なんだよ…何なんだよこれはよ!!!」


そう言って、体のおかしな部分に指を指す。


鏡を見て、写っていたのは動物の耳としっぽが生えた自分だった。


2人は目を丸くし、お互いを見つめ合うと、すぐにニヤッと笑う。


そして、私の両肩を嬉しそうにポンポンと2人が叩いた。


「いやーおめでとう!まさかあの状況で覚醒かくせいするなんてな!」


「その姿も可愛いっすよ~!朱乃ちゃん!」


「そうじゃなーい!!!」


と2人の手を振り払う。


「なんだよ、褒めて欲しいんじゃないのか?」


「絶対そうじゃないだろ!」


私は怒りをあらわにしながら、声を荒らげて言う。


「説明求むって感じっすか?」


そうだと深く頷くと、椿はなるほどという顔をした。


蒼空そらさーん。朱乃さんが説明求むって言ってるっす~」


椿が台所の方向に声を掛けると、ひょこと蒼空が顔をこちらに覗かせる。


「あ、朱乃ちゃん。おはよう~。説明…ね。ちょっと待ってね、今朝ごはん作ってる途中で…」


そう言うとまた慌ただしく、またすぐに台所に引っ込んでしまった。


「…お前らが説明することは不可能なのか?」


「説明はなぁ…」


「苦手分野っすね~」


--------


白いご飯に、味噌汁、卵焼き。

朝ごはんとして理想の物が目の前に並んだ。


「い、いただきます…」


スっと卵焼きに箸を通す。

1口食べてみると甘い味が口いっぱいに広がる。


(う、うめぇ…ふわふわでケーキみてぇ)


とその卵焼きに感動していたが…


「ちがーう!!そうじゃねぇって!」


バン!と箸を置きそうになったが、一瞬理性を取り戻しストン…とゆっくり置いた。


しかし、この感情は収まらない。


「なぁ!マジでこの耳…あとしっぽ!何なんだよ!」


それをチラッと見て、蒼空は味噌汁をすするとふぅと落ち着いた表情をしてこちらを見てきた。


「さて、朱乃ちゃん」


「な、なんだよ…」


「えー…と、どこから説明するか、すっごい難しいんだけどね?」


「あぁ、もうこの際、簡潔に伝えてくれ」


と呆れた表情で彼女に目線を向ける。


そうすると彼女もわかったと言うようににこやかにその事実を伝えてきた。


「あなたは人間じゃありません!」


「はぁ…」


「あなたは白狼。この世界で最強とも言われる白狼はくろうの力を受け継いだ2代目の白狼さんなのです!」


「は、はぁぁぁぁ!?」

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