なんの光ぃ!?
俺が邪神に拉致された25年で、この世界は大きく変わってしまった。
かつて、この地上を征服し埋め尽くしていた人類は殆どが駆逐され、残りの人類は地下に逃げ込む羽目になった。
その原因となったのが、今この地上を埋め尽くしている「化け物」である事は語るべきだろう。
その種類は豊富で、鳥、牛、鹿、魚、虫……無数の姿形を持つ異形の化物だ。
その多くは、ひたすらにこの地球にある文明と自然を壊し、我が物顔で歩き暮らしている。
まるで、最初から自分達であるかのように。
その化け物は、基本この世に生きる全てに襲いかかってくる。人間は勿論犬猫やトカゲ、多分虫だって逃した事は無いんじゃなかろうか。
そんなバーサーカーみたいな生態してるもんだから、下手に動いて縄張りに入ったらその一体の化け物に襲われる事になる。
例えば今!!俺はとある廃ビル群の中を進んでいたんだが、崩れたビルの上でカイコの繭のような巣を作っているステンドグラスの様な色味を持つ鳥――いや、鹿か?
まぁ兎に角、ステンドグラスみたいな鹿に鳥の羽をつけた化け物が居るんだが、俺が廃ビルの中を進むとどうやらそんな化け物の縄張りに足を踏み入れたみたいで……
今、俺はその辺り一帯のビルから、その化け物にジッと見られている。その翼を大きく広げ、恐らくは威嚇しているのだろう。
こんな神話生物みたいな奴にも威嚇の概念があるのは驚きだが……もしくは、俺が邪神につけられた加護のせいか?
まぁ、そんな事はどうでもよくて……問題はそんな状態になってからかれこれ二十分膠着状態が続いていることなんだわさ。
このタイプの化け物――俺は適当にシカドリって呼んでるんだが、こいつらは実は一体一体はそんなに強くない。
一匹ずつなら適当な武器を持った純人間でも7.8部で勝てる位には弱い……ただ、この種でありがちな厄介な特性がある。
数が多いのだ、ひたすらに。
先ほどこの辺のビル一帯に居ると言ったが、これは比喩ではない。マジでこの辺りのビル全てに巣を貼ってその一つ巣の中から最低三匹は顔を覗かせているのだ。
まぁ、俺は完璧で幸福な邪神様から加護を得ているので、数匹ずつの対処なんて余裕なのだが……数の暴力!数の暴力は勘弁して!!!
昔初めて戦った時にエラい目見てな……集団で襲われてボコボコもボコボコにされて、切られ叩かれ潰されエグい目をみたもんだ。
痛かったし、邪神様が気軽に不老不死の加護付けたから死ねねぇし……正直精神崩壊しない加護が付けられてなかったら普通に発狂もんだわ。
と言うか、何で俺気軽に不老不死や精神崩壊しない加護付けられたの?
不老不死なんか人類の夢じゃん、その為にどれだけの試行錯誤が行われたか分かってんの?それを……「取り敢えず生で!」感覚でつけやがって。
話がそれまくったな。まぁ、そんな訳でトラウマもあってあんまり相手したくない奴らなんですわ。
まぁ!もう俺見つかって目ぇ付けられたから終わりなんですけどね!ちゃんと隠密してたのに……見つかったらもう……ね?
幸いこいつらは縄張りから出れば深追いはしない方なので、頑張って突き抜けましょう!えっ?戻ったほうが早いだろ?帰り道わかんにゃいの。
「あー……死にませんように!!」
俺が願掛けにそう叫ぶと、先程まで膠着していたシカドリが一斉に羽ばたき出して威嚇を始める。
俺が次の瞬間、勇気を出して突き抜けようと脚を踏み出すと、辺りのシカドリが一斉に飛び立ち俺に向かってきた。
「はいッ!やっぱ来たァ!」
俺は次の瞬間、背中から4本の触手を出す……触手と言っても、エロ同人で見かけるヌメヌメのやつは少し違う。先端が西洋剣の様に鋭く尖り肥大化した、相手を刺し殺す事に特化した触手だ。(因みに、普通のヌメヌメな触手も出せる。)
俺は兎に角ダッシュで走り抜ける……少なくとも、並の人間よりかは確実に速いスピードだ。だが、シカドリからしたら十分に追いつけるスピードでもある。
俺を追いかけるシカドリ達……俺はそんな奴らに背の4本の触手で思いっきり歓迎してやる。
俺の触手は縦横無尽に伸びて、シカドリ達を追いかけ迎え撃つ……数匹も纏めて刺し殺し、刺されたシカドリはまるで蚊取り線香を食らった蚊ののように地面にぽつりぽつりと堕ちていく。
えぇ、このまま地道に数匹纏めて落としたんじゃ俺が絶対体力切れでバテて襲われるので、一気に走り抜けます!触手動かすのにもカロリー使うのよね。
「ランナウェェェェェェェェイ!!!!」
いやぁ!叫びながら走るのってテンション上がるな!!えっ!?気でも狂ったんじゃないのかって!多分!!!そう!!!!!!!
「――――!!!」
「――――!!!」
シカドリも叫んでますねぇ!鳴き声は鳴き声なんですけど聞き取れないんすよね、コイツに限らず化け物の鳴き声全体的に。多分この世の言語じゃないんでしょうね……
っと、見てください!あのシカドリ!胴体の中心からなんかでてますね、まるで脱皮してるみたいです!あれ、シカドリの分裂行動です!
シカドリはああやって分裂して個体数を増やしてるんですねぇ。アブラムシみたい。しかも分裂にそんなに時間がかからないのも厄介な所でね、マトモにやり合おうとすると倒すよりも相手が分裂して増える数のほうが大きくなっちゃうんですよ。
まぁ、一番いいのは纏めて燃やすかして滅却する事ですねぇ。実はシカドリが一番最初にこの世界に現れた化け物でして、そっから一匹から数日でその土地を埋め尽くすくらい増えたんですよ。
だから核で纏めて燃やしたらしいです。
それは成功してその地からは居なくなりましたよ、また新しくどっかからやってきましたけど。
それでまた核撃って滅却して、また核撃って滅却して、三度目くらいで駆除から隔離の方向に話が進んだらしいです。
マジであの神話生物誰が送り込んできてんだよ……俺に改造手術したあの邪神共ではないんですよね、あいつら滅亡したのきずいてなかったし、俺の改造に夢中だったし。
「そろそろ縄張りから抜けるか……?」
体感結構遠くまで来たのでそろそろ生息域から抜けるはず……追ってきてる数もちょっとずつ減ってますね。
いやぁ、今回はシカドリの最終自衛手段がでてこなくてホッとしました。
シカドリにはね、自分の命と引き換えに相手を倒すための、所謂必殺技があるんですよ。まぁ、マジで発動したら死ぬんでよほどのアレがない限りしないんですけどね。
それ食らったら邪神の加護に守られている俺の身体も半分ぐらい消し飛びます。普通の人間?文字通り塵も残りませんよ。
「―――!!―――!!――!!――!!―!!―!!」
そうそう、丁度こんな風にだんだん短くなる鳴き声を発するのが合図なんですよ……ほら、ああして口を大きく開いて中のガラス玉みたいな器官から派手なビームを速射してぶっ放すんですよ。
あ、光が―――――
《hr》
その化け物の中の数匹は、自身の目の前に映る、自身の天敵となり得る者を、己の命をかけて抹殺することを誓った。
多くの化け物が、深追いは無用と巣へと引き返す中、たった数匹だが彼女らは己の命を掛けて、未来永劫の繁栄のために犠牲を払ってでもその天敵を排除する事を誓う。
同種の為、種の繁栄のために……その為に己の命を使うことに対する躊躇は、その化け物どもにはなかった。
その証を、誓いを立てるように、だんだんと短く鳴き声をその化け物――追われている哀れな天敵が呼ぶ名を借りて……シカドリは、甲高く響かせた。
この世界に住む一般の人間にとっては、絶望の瞬間の音……かと思いきや、そうでもない。なぜなら、シカドリはこの一撃を人類に対して使用したことはないからだ。だから、一部の知るもの以外この鳴き声の意味を理解できるものは居ないだろう。
そしてシカドリの大顎は、四方に大きく開く……そして、喉奥から己の命を、己自身を司る器官――人に例えるなら、脳と言う物を口元まで吐き出す。
まるで赤いガラス玉の様に美しいその球体は、マーブルのような模様に波立たせていた。そして、その色はだんだんと紅に染まっていき……大きく輝き出す。
その時点で、彼女らの意識と言えるものはこの世にはない。あるのは、身体に撃ち込まれた……その一撃を当てるというプログラムだけである。
「あぁ……間に合わねぇな。」
天敵はそう言って覚悟を決めて、駆け抜けながら奥歯を噛み締める。
次の瞬間、ただの砲身となったシカドリ達の口元から露出した真っ赤な球体から、その球体と同程度の太さの熱線が放たれる。
それは光の速度で天敵へと向かっていき……その身体を一瞬で捉え、焼き尽くす。
青年から伸ばされた触手諸共に……その衝撃に、地面は凹みクレーターとなってしまう。そして、生み出された煙が辺りを包んでしまった。
代わりに、シカドリ達は力なく地面へと堕ちていく……お互いにとって必殺だったと言うわけだ。
崩れたビルを通り抜けて、ビル風が吹き、熱線によって生まれた煙を流していく……
……そして、誰も居なくなった。
そう言いたくなるが、この天敵は複数の邪神から(面白半分の)魔改造と加護を受けた男……そして、それ故にシカドリ達の天敵となり得る存在。
生まれたクレーターの中心には、左半身と下半身を焼き焦がされた男が寝そべっていた。服は当然丸焼け……即ち、全裸だ。
下半身が吹き飛んだから、見る苦しいものが丸出しになっていないのは不幸中の幸いか。
無論、普通の人間ならこんな状態になれば即死……そもそも熱線を受けた時点で地面の焦げ跡と見分けがつかなくなることだろう。
「あぁ……くっそ。派手にやりやがって……服だって探すの面倒なんだぞ?」
男はガバっと身体を起き上がらせようとするが、身体の半分以上が吹き飛んだからか、うまく動けない。
すると、男の傷からウネウネと触手がざわめいて現れ、からみついていく……すると、その身体をだんだんと形成していく。
だが、そこから作り出されるのは、人間のものではない。妙に生々しくも所々硬化し鋭角化した……一言で片付けるなら、怪人や怪獣の様な姿だ。
男は、異形と化した自身の左腕を見つめながら溜息をつく。
「擬態すんのにちと時間かかるなあ……まぁ、顔は平気だからマントで隠せば問題ねぇか。この辺は化け物の住処だし、人も来ねぇし……大丈夫か。」
男は半分人間、半分怪物のアンバランスな状態で立ち上がる……当然、左右のバランスも違うからよろけたりもしてしまう。
男は、その場から離れる前に最後っ屁を放ち力尽いてしまったシカドリ達の方を振り向くと、軽く肩をすぼめながら、言った。
「どいつもこいつもそんなに俺が憎いかね……俺なりたくてこうなった訳じゃ無いんだけどなァッ!!!!?????」
男、不老不死歴5年の心からの叫びであった。
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