第41話 天下人の生き様
「代報者たちの目が怖いっすね……」
「そりゃいつ何時、中に潜んでる祟魔が一斉に外へ出てくるか分かったもんじゃないからな」
ついに迎えた第4層ボス戦攻略日。いつものように二条城の周囲を歩いていれば、ちらほら周囲から鋭い視線が降ってくる。万が一、中に潜んでいる祟魔たちが外へ出てきた時のことを考え、すぐさま対処できるようにと二条城周辺には100名の私服代報者を配備。それに加え、今日は入場を規制し、一般人は特別な理由が無い限り入れないようになっている。
「ちんたらしてんとはよ。みんな待ってるで」
「はいはい」
二条城内部へ入り、本丸御殿の入口まで到着する。普段はダンジョン攻略に来た人たちでいっぱいになっているが、規制のため人は俺たち以外ほとんど見当たらない。辺りが閑散としている中、本丸御殿の大扉へ触れる。直後、アナウンスが脳内に聞こえ、転送が開始された。
◇◆◇◆
拠点に到着すると、既に準備万端のギルドメンバーたちが勢ぞろいしていた。いつもは何人か私用で遅れてくるのだが、最後ともなるとちゃんとするらしい。規定時刻になり、拠点内の会議室の扉が閉められる。
「全員揃ったところで、始めるとするかねぇ」
「あぁ。まずは第4層のボスについて。みんなに探索がてら収集してもらった情報を纏めると、今回のボスは戦国三英傑最後の1人――徳川家康という結論に至った」
華南が話した後、ホワイトボードの表面が縦にひっくり返され、裏面が露わになる。そこには今回のボスが徳川家康と決め手になったことが書かれていた。
三つ葉葵の紋は勿論、道中のCランク・Bランク・Aランクの戦域・非戦域で家康公の噂がちらほら上がっていたこと、戦域の攻略中に石田三成や豊臣方などの徳川家康が天下太平の世を目指す上での障害となった人物たちがモンスターとして現れたことなどがボードに記載されていた。
「徳川家康といえば、今僕らがいる二条城を築いた人っすよね」
「せやね。天下を取った徳川家康が第4層のボスってのはなかなか燃えるな~」
徳川家康は江戸幕府が開かれる2年前にこの地へ二条城を築城。以来、二条城は徳川家康は勿論、徳川家にとって京都に上った際の居城となった。その築城主が第4層のボスに当たる。相応しいと言えば相応しいな。
「それで、属性や武器についてはどう見る?」
「んー、今まで本丸御殿のボスは全員刀を所持してたから、やっぱりそれなんじゃないかねぇ?」
「属性は恐らく土だろう。慶喜公、信長公、秀吉公の属性は、それぞれの生き様や成して来たことから決められているところがあるからな」
家康は忍耐強いし、250年余り続く江戸幕府の基盤を築いたと言っても良い。特にその忍耐強さはホトトギスの俳句にも表れている。武器に関しては徳川家康が剣豪に剣術を習っていたこと、そしてかなりの数の刀を所有していたことが少なからず由来しているのだろう。
「問題の家臣は、前と同じく出現したら最優先で討伐。死亡順に各個撃破で倒す形になると思うっす。事前に家臣に対しての知識はある程度みんな頭に叩き込んでいるでしょうから、そこは誰が来ても大丈夫っすかね」
「そうだな。ま、何かあってもその場で対応するだけだ。いつも通り準備を終えた者から広場に集合。13時よりボス討伐を開始する」
◇◆◇◆
最終準備を整え、集合した俺たち。サナは毎度の如く武器を新調したようで、今回はランチャーを購入したらしい。何処でそんな危ないもん使うんだよと呆れながら、第4層のボス部屋まで辿り着く。
ボス部屋の入口は黒塗りの大手門になっており、俺たちが散々今まで通って来た二条城の東大手門とそっくりだ。
『新たな挑戦者を検知。認証を開始します。――ギルド・八咫烏、総勢36名を確認。伏見大広間への挑戦を受けますか?』
伏見……? あれ? 今回も違うのか?
首を捻りながら不思議に思っていると、華南が「はい」を選択したようで転送が開始された。
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