第8話

それを無視して寝室に入ると「、ちょっと!」嗜める声が腕を引き、顔だけ振り返れば困ったように眉を下げていて。



「何だよ。」


「ご、ごはんは?」


「それよりお前が食いたい。」



ストレートに申せば、暗い中でもわかるぐらい顔を赤くしている。



「お、おふろ、はいってないよ、?」


「後で一緒に入ろうぜ。」



逃げ道を無くす俺に、潤む目で見上げるソイツは、それが余計に昂らせる事を分かっていない。



「で、でも、」



いい加減素直に俺を欲しろよ。



「嫌なわけ?」



少し苛ついて眉根を寄せれば、じとっと恨めしそうに睨んでくるソイツは、



「わかってるくせに、」


あたしだって寂しかったんだから。



やっと素直な言葉を吐き出し、それに笑う俺を「何で笑うの、」不機嫌を露わにしている。




「茉依。」



誘うようにその名を呼ぶと、ピクリと反応を示す女は、艶気のある表情で俺を見上げて。



「……哉希が、欲しい、」



いつも、あたしばっかドキドキしてる、とか言うけどな?俺の方が緊張しっぱなしなんだよ。



いつだってその肌に触れる時、躊躇するぐらい大切で、愛しくて仕方ないんだ。

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