愛ちゃんの家の下に着いた。

そこから30分くらい経って、愛ちゃんが2階から降りてくるのが車越しに見えた。

僕の車に気がつくと、泣きながら駆けてきた。

反省して泣けと思ったことを後悔するくらい、胸が痛くなった。

21時半…娘が寝る時間だ。

この時間になると愛ちゃんから電話やメールが届くから覚えている。


僕が内側から助手席のドアを開けると、入ってきた愛ちゃんが勢いよく抱きついてきた。


「宏ごめん!ごめんね!もう言わないから!」


まだ勘違いしている愛ちゃんを優しく抱きしめ返して、できるだけ優しい声を出して僕も謝った。


「僕の方こそごめんね。怒ってるなんて言って帰ってしまって。ちゃんと話すから聞いてくれる?」


ポロポロ落ちる涙を両手の親指でぬぐって、そう聞いた。


愛ちゃんは声を出せないくらい泣いてるから、コクコクと頷くだけだった。

心が痛いなあ。


「実は、愛ちゃんと結婚したいと思ってる。」


予想外だったのか、愛ちゃんの涙が止まった。


「え…?けっ…」


「うん。結婚したい。」


「…」


信じられないとばかりに目を見張って愛ちゃんは言葉を失った。


「だから、この先子供をつくるなんて無理というようなことを言われて、嫌だなと思ってしまって。僕とはこの先も結婚するつもりがないって言ってるように聞こえたんだ。」


「そ…それは…」


愛ちゃんは瞳を揺らした。


「もちろん娘が優先なのはわかる。そんな愛ちゃんを好きになったからね。だから娘ちゃんが成人したら籍を入れようって言うつもりだった…かなり先の話だけど…」


「違うの!」


愛ちゃんは、愛ちゃんの両頬を包んでいた僕の両手を掴んで言った。


「まさか、宏が私との結婚を考えてくれていたなんて思いもよらなくて!!!別に結婚したくないからああ言ったわけではないの!!!」


「うん」



「だって宏は…何も話してくれないじゃん。結婚歴があるのかどうかも知らないし。誰にだって聞かれたくない過去はあるだろうから私からは聞けないし…私が結婚なんて、コブつきだから絶対無理だと思ってたの…考えてくれてたなんて…嬉しい…っ」


また愛ちゃんが泣いてしまった。

せっかく泣き止んでたのに。


「たしかに、話してなかったね。過去の恋愛の話は彼女にはタブーなんだと思ってたんだけど…言えばよかったね。えっと結婚したことはあるけど、子供はいないよ」


「そっそうなのぉ!?」


「うん。あっちの不貞で別れた。だからちょっと優位になる離婚の仕方に詳しかった。」


「あ…なるほど…」


「僕が愛ちゃんと結婚したいと思ってることは、わかっていてほしい。ただ、愛ちゃんは僕と娘ちゃんを一向に会わせようとしないよね?だから、成人するまでは付き合ってることを隠したいのかなって思ったんだけど、違う?」

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