鳥と風船ものがたり〜True badend story

アほリ

鳥と風船ものがたり〜True badend story

 結局、僕らの干潟は守れなかった・・・


 あの風船大作戦の大成功も、結局何も効果は得られず。


 干潟は人間に埋め立てられ、その上に見渡す限りのメガソーラーパネルがところ狭しと敷き詰められてしまった。


 更に周囲の樹木まで尽く切り倒され、その上にもメガソーラーパネルが敷き詰められた上に、更に風力発電の巨大な風車が次々と建てられてしまった。


 かつて、ここにあった干潟を守ろうと、風船を大量に膨らませた野鳥達・・・


 空き地を後にした野鳥達の一群は、一斉に危機迫る干潟へと飛び立った。




 ヒヨドリのビア 、


 カラスのジョイ、


 ドバトのポポ姉さんとその下っ端、


 カワウのジーダ、


 オオタカのピム、


 シラサギのロイ、


 ムクドリのムック、


 スズメのチュンタ、


 キンクロハジロの3兄弟、


 オナガガモのナフとスフ夫婦、 


 オシドリの夫婦、


 アオサギのビッダとブルーム、


 そして、シメやシジュウカラ、ツグミ、ヤマガラ、モズ、キジバト等のこの干潟だった周辺に住んでいた鳥達。


 この、もう取り返しの付かない位に変貌した醜態に悲嘆に暮れて、呆然と見詰めていた。


 「カワセミのじいさん・・・死んじゃったね・・・」


 カワウのジーダはボソッと呟いた。


 「結局、僕達が守れなかったあの干潟を、最期まで抵抗していたは、カワセミのじいさんだったんだな・・・」


 「でもな。カワウ。あの時、君が干潟の危機を知らさなければ、皆が団結して風船大作戦を決行して一時的にでもこの干潟を埋め立てようとした人間を追い払う事に成功したんだしな・・・

 なっちまったのは仕方無い。気を落とすな。」


 オオタカのピムは、項垂れるカワウのジーダを宥めた。


 「でも・・・結局僕達は無力だったんだ・・・

 本当に何で・・・何で・・・」


 遂に、カワウのジーダは大泣きしてしまった。 


 「嘆くなよ。カワウ。こうやって、僕らはお互い仲間になれたんだから・・・」


 「そうさ、こうやって干潟が埋め立てられて山林が切り開かれて住処を失っても、お互い連絡を取り合ってまた集まれたんだから!」


 「そうさ!住処を失っても、永久に死ぬまで仲間さ!!」


 ヒヨドリのビアやシラザギのロイ、そして鳥仲間達は皆お互いの顔を見合わせた。


 「こうやって、皆でまた出会えたんだから・・・

 あの時みたいに、皆でまた風船を膨らまそう!!」


 カラスのジョイは、目から溢れる涙を羽根で拭い胸を張って皆に言い聞かせると、鳥達は持参したゴム風船に嘴で息を入れてぷーぷー膨らませた。


 皆、涙を流しながら、ゴム風船を大きく膨らませて・・・


 嘴から風船の吹き口を離した。



 ぷしゅ〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!ぶぉぉぉぉぉ〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!



 鳥達の吐息を吹き出して、無数のカラフルなゴム風船は忌まわしきメガソーラーパネルが敷き詰められた元住処を弧を描いて飛び回り、

 そして、メガソーラーパネルの下に墜ちていった。

 

 「もう・・・終わったね・・・」


 オナガガモのナフは、涙でグシャグシャになった顔で呟いた。

   

 「終わりじゃないさ、我々の鳥生はここから新たに始まるんだ。」


 アオサギのビッダは、真っ赤に腫らした目でオナガガモのナフに言い聞かせた。


 「僕達は、翼を持った風船だったんじゃ無かったのか・・・?

 そうだよ。何時までも何処に居ても僕達は、お互い翼を持った風船だ。」


 「風船は放たれたんだ・・・ここから遠くへ・・・」


 鳥達は、先行きの分からない鉛色の空を見上げた。


 「さあ、飛び立とうぜ。そして始めよう。其々の暮らす場所へ・・・」


 そして、鳥達は去っていく。


 変わり果てた、思い出詰まったこの元住処を後にして・・・


 鳥達は、新天地での其々の生活の場所へ。


 あるいは、何処にも住処が見つからない路頭の日々を再び続ける為に・・・


 さようなら、僕達の素晴らしい日々。





 〜鳥と風船ものがたり〜True badend story〜


 〜fin〜

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

鳥と風船ものがたり〜True badend story アほリ @ahori1970

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ