【第25回書き出し祭り】感想(特別会場)

 こちらはタイトル・あらすじの感想、及び本文感想です。


基本的には、

 

①まずタイあら感想として、

 ・タイトルのみの印象

 ・あらすじを加えた感想

 のふたつを公開します。


 このお祭りが「タイあら」を先に発表するのは、

  ・タイトルのみでクリックして/店頭で手に取ってもらえるか

  ・タイトルのみ/あらすじまで読んだ状態で、続けて本文を読んでもらえるか

  ・本文の中身をスムーズに想像させられるか、ターゲットに訴求できるか

 の勉強になるからでは……と思うため、それらを意識して書いています。



②そして本文発表後に、

 ・本文感想を追記

  1/3程度読み進めた時のファーストインプレッション、理解、期待感。

  プラス、最後まで読んでからの感想。

  の二段階を意識しています。

  冒頭の一行、数行、は特に読者を引き込むのに大事かなと思いまして……。

 を公開します。


 ただ(前回は全てこの順でしたが)、今回はマシュマロにて感想を書かせて頂ける方を募集しました。

 ですので、作品によって、いただいたマシュマロの時期によって執筆状況が違う場合があります。


 また、作品によって、文章の長さが違うことがあります。

 ですが連想したこと、判断の材料などについて思い付くまま書いていることが多々あります。作品の好き嫌いや、まして優劣などとは一切関係ありません。

 その他、あまりにも読み違えたと後で気付いた場合は追記する場合もあります。



 感想全体についてですが、もし不都合やご不快になるようなことがありましたら、感想の取り下げ、修正等いたします。マシュマロにてご連絡くだされば幸いです。




 以下、感想を書かせていただいた作品です。

 会場、作品番号順に掲載します。

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■特別会場■


■25-T-1.吸血鬼のお姫さまは、僕と【結婚の約束】をしていたらしい?

タイトルのみ:

 僕(主人公の性別)はどちらか……男性かもですが女性かもしれない。というのも、お姫さまという存在の特別感が(おそらく平凡一般人だろう)男子と対になっているように想像したからかも。

 おそらく平凡、というのは「らしい?」とあるので、隠し持った才能を自覚したような、またはチート系のスタートではなさそうだからです。

 【結婚の約束】の括弧【】も「らしい?」と合わせて気になりますね。お姫さまだけがそう思っているようなことを、昔にしたのではないかなと。

 基本的にはゆるくほんわかした感じの、じれじれ感もある恋愛もののお話ではないかと思いました。


あらすじ:

 まるっきり記憶を失ってしまっている少年。男の子でした。

 ルチルは結婚の約束のために花嫁修業も結婚式も準備してきたそうですし、悲しみの様子から嘘はついている様子はないですね。

 そして姫というからにはおそらく周囲の人間も気にかけていたはずで(国家ないし城運営などあれば)、彼らを納得させるような何かが主人公にはあったのではないかと思います。

 彼女の心を癒やしたとか、国の問題を解決したとか。


 それなのに、異世界帰りでルチルはおろか行ったことすら記憶を失っている。何か本人にあずかり知らぬ事情――第三者の介入とか世界の法則とか――がありそうです。

 或いは、全て忘れることが代償や、望みだったとか。

 関連して、一人寂しい暮らしをしているのも気になるんですよね。元々天涯孤独なのか、行方不明扱いになっているとか。記憶喪失で新たな戸籍を作成したとか……。色々想像が膨らみます。

 お騒がせ異世界姫の押しかけ同棲ラブコメをメインに、それらの謎も解きながら、再び二人の距離が縮まっていく話になるのではないでしょうか?



本文:

 登場からダンスを踊ってるルチルちゃんがとても可愛いですね。はしゃいでいて可愛いです。しかも感謝できる。可愛い。

 マルシマってきっとこの白い毛玉さんのことでしょうね。

 容姿から明らかに、学校帰りの自宅(日本の日常)に存在しない存在の二人ですが、彼女は結婚の約束を果たしに来たという……。

 あらすじ時点で、主人公はどれだけ記憶があるのかなと考えていました。

 初めに見たときには容貌について述べるに留まっており、覚えてない様子でしたね。ただ二回目に瞳を見たときは……(間近とはいえ)もし全く覚えていなくても、惹かれるものがあった様子……? 


 続いて学校の様子と、主人公に家族がいない理由が明らかになりましたね。

 タイあらの時点で色々と妄想してしまいましたが、事故で両親を失ってそれほど時間も経っていないという、異世界絡みでない現実的なものでした。

 クラスメイトの談笑の内容と、ルチルの存在は繋がってきそうです。

 もうひとつ、談笑という日常から切り離された主人公は、苦しい現実の中を生きていつつも、切り離されたが故に「別の世界(非日常)」に足を踏み入れている印象もありました。



 ルチルは最後まで、主人公一直線でしたね。

 たとえば紅茶を勧めたときの「いらない」は単に断っただけでなくて、ずっと吸血したかった相手にお茶を勧められて、相手が意地を張ってしまった……本当に覚えてないのかという傷付きからでもあったでしょうし。

 そんなルチルの内心を(彼女は主人公に対して押し付けたくない、と思っている様子が良いです)、マルシマがあれこれ代弁してくれるのが、忠義可愛いです。

 ルチルは吸血鬼として迫害されていたそうですが――これは主人公と会った時、三百年前の話なので、今は違うかもしれないですが――マルシマはその吸血鬼の眷属になりたくないと思う可能性もあったわけで……。

 ルチルの善意(主人公の善意)が二人を助けて絆も作ったんだな、と思いました。


 最後に、ルチルの境遇とこちらにやって来た理由は分かりましたが、大きな謎は、三百年の隔たりと、記憶の喪失、主人公がそもそもどうやってあちらに行ったか。

 三百年は、二つの世界では流れる時間の早さが(何らかの理由で)違う……と仮定して。

 クラスメイトの言う「事故って死んで転生」に近いことはありそうな気がします。

 飛行機事故、ご両親や他の乗客の遺体が見付かったかどうか(転生的なものがあったか)も気になるのですが……主人公だけが生き残ったとして。

 生死の境を彷徨っている間、あちらの世界にいたのかも。

 あちらの世界に行った直後どんな状況だったのか気になりますね。

 また、主人公が息を吹き返すことが帰還の条件だったなら、「元の世界に帰るのは、避けられない出来事だった」とルチルが言うのも納得です。

 ルチルがどうやってこちらに来たのかも気になります。


 ……とここまで考えて、ストラップの存在が気になります。

 航空機事故が起きたのは四月。二ヶ月前なら、今は六月。教室での会話は今朝。

 ストラップが形見ならば、事故後には鍵に付けている状態な訳で、すぐに気付くはず……直近で今朝の登校時ですね。

 しかも今日昨日紛失し、そのストラップだけが何らかの理由であちらの世界でルチルの元に辿り着いたのでもなく、主人公が手渡ししている。

 異世界転生は昨日今日、本人が知らぬうちに行われていたのか……?

 それとも、元々ストラップは主人公が二つ買っていて、一つを母親にあげたものだったとか。 

 推測が好きなので、冒頭はルチルとの出会いがメインと思いつつ、もう少し謎のヒントがあれば嬉しいと思いました。お話、SF要素も多いでしょうか……?

 この辺りずっと、盛大な読み違えをしていましたら、申し訳ありません。


 ルチルを落ち着かせつつ、情報を聞き出しつつ。記憶の喪失の理由を探りつつ、思い出しつつ。

 二人の関係が自然と深まっていくのではないかと思いました。





■25-T-2.大逆の勇者よ、我が剣に眠れ

タイトルのみ:

 西洋ファンタジーでしょうか。硬派なイメージです。

 勇者が大逆となると、国家や正義を裏切った元勇者を、メイン武器が剣の主人公が打ち倒しに行く話でしょうか。

 元勇者であれば強そうなので、そこまでの苦難、勇者との戦いを描く話になりそうです。



あらすじ:

 勇者、まさかの国王を惨殺してその後も悪いことをしていました。何か事情があるのかないのか。

 一方、勇者の師である主人公は(若くて30、4~50代でしょうか)、連座での死罪か返り討ちか、と二択を(逃亡などでなく)想定しているので、身内の情や自身の死よりも、国(人の連帯)や法や正義に、価値観を置く持ち主だと伺えます。


 勇者はしかし己より若く、己より才覚がある。「勇者」となるまでの(主人公が着いていかなかった)旅路で、剣の技も強敵と戦った経験も積んでいる。

 主人公に勝ち目があるとしたら、自身の剣技への思索と、(おそらく)幼い頃から見てきた勇者の人格や癖や個人的なものを弱点として……なのでしょうが、そこには痛みが伴いそうです。


 勇者の師である主人公が、愛弟子との修業の地を辿って何度も剣を交えながら、互いを理解し合い、理解し合えないことを理解し、理由を知り、そのように育てた後悔もしまうような。二人の剣士の心中をめぐる、切ないお話になる気がしました。

 たぶん、二人はお互いを必要としていたタイミングで知り合ったのだろうなと……。


 また、硬派な剣戟も期待したいです。扱われていく剣の種類も気になります(これは私のただの興味です)。


本文:

 書き出しの一文が、主人公の契機で、お話の根幹に関わってくることと感じました。

 酒と暴力、せっかく稼いだお金は搾取される。「いつもの、ことだ。」の、読点に腹の底で納得していない感情が伝わってきます。抑圧され続けた上に、その父親の血を自覚させられ、また何者にもなれない「トカゲ」と呪いをかけ続けられ。

 でも大人と子供の境界は――15歳は、国の法が彼を縛っているからですね――抑圧されていた彼が思っていたよりも早く。力関係という目の前の現実を越えて、2年を何とか過ごし、大人の仲間入りをした。


 この辺りで世界観的には、成人年齢と冒険者と魔物の存在で、剣が主役のローファンタジー、王国が舞台かなと思いました。

 個人的には、冒険者の横で手伝う少年のくだりが好きです(たとえば野営とか足跡とか天候とか、そういうディテールが個人的に好きなのです)。そして生活のための冒険者の手伝いの経験は彼だけのもので、父親には奪えなかった。



 その後、大人になった主人公。

 結局彼は「竜」にはなれなかったけれど、ただのトカゲでなく竜の卵を孵す者にはなれました。

 「竜」か「トカゲ」か、「ただのトカゲでない者」か。どれであるかは、自尊心のためや、子どもの時の希望だったかもしれません。

 ただ、彼が、血の繋がっている父と同じ「トカゲ」であることを認めても――「育てた」というのは、血が繋がってもいなくても、擬似的な親子関係を育めたというのは、父親との決定的な差なのだろうと思います(だからこそ「育て方に失敗したかもしれない」、「弟子の気持ちを知りたい」が、弟子の裏切り後の、彼の根幹に繋がる目印なっていくのだろうかとも)。

 主人公はおそらく肉体的な能力は他の冒険者には及ばなかったのでしょう。ですが子どもの頃からの経験と観察眼が「竜砕剣」を産み弟子に伝えたというのがいいですね。


 弟子のアルブレヒトについては、あらすじから子ども時代の話はでてくるかな……と思いましたが、巣立ちの時期が描かれました。倒すのも蜥蜴に似た地竜であるのは、場面もあって師を越えるメタファーのよう(余談ですが、革鎧いいですね……)。

 地面と、空。地で戦う主人公と竜の背の弟子の対比。


 ……実は弟子が国王に祝福され、あらすじにある国王殺害まで、数年はあるのだろうなと勝手に考えていました。未だ病院に身を置くうちに事件が起こり、捉えられてしまうとは……。

 そうなるとアルブレヒトの涙は、師を心配してのものでなく「それはおまえの力だ。無二の才は、正しく使え」に対しての申し訳なさとか、裏切りとか。そういうものでしょうか。

 竜殺しになりたかったのは「何者かになりたい」と思う師を利用して、国王に近づき殺すことが目的であったとか。思い出の地で事件を起こしていくのも、正しく最後に自分に思いを残さずに――など想像しました。



 気付いたことについては……、

 アルブレヒトと(二人の間にある様々な思い出は、今後道中で語られていくものと思いました)の出会いのきっかけや、何年過ごしたかが直接でなくとも描写があると、主人公の衝撃や二人の信頼などが共有できるなと思いました。

 あとは倒した竜を何故選んだか(竜の頭数やこの竜の悪行、竜殺しの英雄の数、倒した事による国・国民のメリットなど)が少しあると、国王に直接祝福される説得感がより出るかな、くらいでしょうか。



 トカゲと竜。父親と子、育てることと育てられること。4000字の中で何度もこちらが繰り返し語られたと感じましたが(私は小説初心者なので、私に言われても……かもしれませんが、すごく巧いと思いました)、おそらくエンディングまで――エンディングを過ぎても主人公は、自分は何者なのか、問い直していく気がしました。

 面白かったです!




■25-T-8.第3X回書き出し祭り第一会場タイあら感想

タイトルのみ:

 そう来たかと唸りました。架空の書き出し祭りのタイあら感想です。すごい。書き出し祭りに注目している作者の目を惹きつける強さがあります。

 30回以上続いている信頼感とネタにする勇気に、作者さんは書き出し祭りの常連さんでは……と思いました。書かれたタイトルが楽しみです。


あらすじ:

 架空のタイトルが25個並んでいました。

 ここから想像できることは……、

 

 ・本文は25作品分の架空のタイあら感想で構成されている(可能性)

  ジャンルは何となく、シリアスと現代、日本舞台のもの多め?

  私が気になるのは「1-22 富豪と謎の八面体」です。現代ものでも大正時代とかでもミステリ、ホラー系でも。「1-07 君と僕と世界のジジョウ」は数学とか衒学的なものかも。「1-23 魔法少女マジカルうどん」は本格うどんものを期待したい。

 ・各タイトルが何らかの暗号になっているかも

 ・「1-25 本文公開を待て!」はメタネタでは?


 私は書き出し祭り、二回目の参加。もしかすると常連さんにしか分からない細かいネタの見落としがあるかもしれませんが、これが作品の「あらすじ」である以上、初見でも通じる何かがあるのでは……?


 しかし本文は全く違う可能性もあります。

 このタイあら感想を書いた主人公の、創作や生きる意味にまつわる話とか、ホラーとか……? 監禁されている人物からのSOSのメッセージとか? 想像は膨らみますが、正しく「1-25 本文公開を待て!」が正解でしょうか。



本文:

 >「なんだ、もう気が付いちまったのか。つまらねぇ」

 本作品『T-8.第3X回書き出し祭り第一会場タイあら感想』のあらすじは、そのまま25作品のタイトルでした。

 ですので、このあらすじの一文を、主人公がどんなつもりで入れたのかは冒頭では分からないのですが……別の意味を持つようになったというところで、ホラーや神の手のような「何か」がある予感がしました。


 書き出し祭り参加者からの視点モノ、面白いですね。ベテラン参加者さんのようで、今回参加2回目の私は、そんな主人公が入れたギミックとは何だろうとわくわくしました。彼の作品は第一会場のラスト「1-25 本文公開を待て!」、タイトルが予告っぽいのも関係あるのでしょう。

 続いてタイあら感想に話題が移りますが、 自分が今まさに、タイあら・本文感想をしていますので、主人公に共感しながら読んでいきました。

 しかし……「1-01「全覇掌全帰無」」から力強い内容が続いていきます。まだタイあらの時点なのに独特な固有名詞がたくさんです。

 そして次第に主人公は違和感を覚えていき……同様に読者の私の中でも(既に共感しているので)じわじわと違和感と、得体の知れなさが大きくなっていきました。

 そして最後に……。



 実際に24本も同じような内容が集まるかと言えば、書き出し祭りは基本的に、未発表の話を作者が運営さんに託すものなので、まずあり得ないですよね。もし、天文学的な確率で偶然に100本中24本に似たような内容があったとしても、第一会場に集まることはないです。

 運営さんが24本用意するとかしなければ。誰かが24アカウント使って一斉送信しなければ……? 現実的じゃないですよね。

 そして最後に主人公も、自分の意思で入れたと思っていたはずの、

 >「なんだ、もう気が付いちまったのか。つまらねぇ」

 が別の意味を持つことに気付いてしまって……。

 これはちょっとぞくぞくするオチですね。

 他の24作品も何者かに「書かされていた」のかどうなのか……(余談ですが「1-22 富豪と謎の八面体」は本文でも少し紹介されていましたが、普通に読みたかったです。が、何者かの意思が介在するとなると怖いですね)。



 作品全体で気になったことですが……贅沢ですが、全て第一会場の中のお話で、オチも綺麗について、短編を読み切ったときのようにだいぶ満足してしまったことでしょうか……。

 >「なんだ、もう気が付いちまったのか。つまらねぇ」

 は、ここから相手がアクションする気があるのかどうかが気になり。

 主人公はもっとあらすじを書いていたと思うので、相手の意思のヒントになりそうなので読みたかったです。とはいえ、最後の一文が本当にぴったり嵌まってるので、蛇足になりそうです。


 最後になりますが、このお話に続きがあるならまず知りたいのは、次の主人公のアクションは何で、相手の正体は何か、でしょうか。

 それに他の会場に異常はないのか、あったら「全覇掌全帰無」関連なのか。

 何者かは驚かせることだけが趣味なのか、「全覇掌全帰無」について人間に何かさせようとしているのか。

 主人公に特に介入したのか、主人公の現実や参加者、運営さんに影響はあるのか……。匿名作者同士で連携取るのも(自分はどんな風に思い付いたとか)、難易度が上がって面白そうです。

 もしバッドエンドであっても、謎が解明されるところを読んでみたいお話でした。




■25-T-10.胎図奇譚~くノ一誉の三世界地獄結びの術~

タイトルのみ:

 胎図というと、何となくおどろおどろしく、内蔵、性的、毒、仏教なイメージが何となくありました(たぶん字で、胎蔵界曼荼羅のイメージを思い出したのです)。「くノ一」、「地獄」と続きますので、舞台は戦国時代~近未来までの日本でしょうか。

 三つの世界を結んでしまうと悪いものが吹き出してきてしまうイメージですが(人と、人でないものが集まって住む場所とか)、主人公は逆に「地獄結び」の術で何か世界を揺るがす災厄を解決しようとしているのかもしれません。

 仏教の三界というと欲界・色界・無色界……? 詳しくないのが残念です。

 忍術アクション、冒険、血! のイメージです。



あらすじ:

 日本神話や仏教に関わる話のようでした。

 異邦神――外来(外国)の神か、或いは邪悪な神か――によって他の神との繋がり(祝福なども?)を失った人々。

 何となく、舞台設定は昔の、まだ神々との繋がりが濃い時代の日本っぽいと感じました。

 異邦神は固有名詞もあるので、この神が人間だけでなく、他の神に対して何かを企んでいたか、どのような存在かがキーになりそうです。もしカナエが鼎と関係するなら、この器の足が三つだ、というのも三世界と関連するのか気になるところ。


 主人公ですが、彼女はそもそもが複雑(で不幸とも呼べる)な生まれのようです。

 半分が鬼神であるというのは、鬼神は神々でもあり、その中でも人間よりの存在なのでしょうか。

 しかも彼女に背負わせた大人の行為のために、無力なまま地獄へ(舞台神界に移って仲間を得る、とのことですが、ここは書き出し祭りの4千字以降、ストーリーが進んでからのことかなと想像しました)。


 主人公の、自分の生まれを呪ってもおかしくないハードな状況、神界・人間界・地獄(ここが「三世界」でしょうか)――地獄のような世界に、墜ちた神々の怨念(神は助けになる存在ばかりではなかった)。

 他作品のゲームの引用で申し訳ないのですが、『俺の屍を越えてゆけ』もなかなか救いがない状況の日本と神々のお話で、そちらを思い出しました。


 主人公の前には次々と困難が立ち塞がりそうです。そして胎図を集めて鬼神の力を取り戻したとしても、すんなりと神々との縁を結び直すという運びにはならないのではと思いました。ことの真相や、主人公の気持ち的にも。

 マスコット的な可愛い犬張子が、読者にとって一服の清涼剤となりそうです(ので、犬張子は何かの陰謀側ではないといいなあと思いました)。



本文:

  神楽鈴の音を合図に開かれたのは、誰かの――数行先で神々の意識と目と分かりますが――より先に、読者の視界のようでした。

 豪華絢爛な色彩と異形の瞳。神聖かつ不気味で不可思議で、宗教画のような世界が思い浮かびました。

 主人公の誉の声は、神への祈りと同時に、人間が生きる世界とは明らかに異質な状況を理解できる形で読者に馴染ませるようです。


 しかし、神眼……人間が想像するいわゆる日本神話の神様とはまるで違った姿と反応ですよね。その向こうに一柱一柱、いるのでしょうか。それぞれに意思はあるようですが……この違和感は、祝詞をあげている主人公も同じのようです。

 主人公、こうやって異質そうな神々の前に立てているだけで凄いと思いますが、扇を使った身の上話で、生まれの由来とその不憫さ、胆力とユーモア、それに勿論、ただ者はでない能力――扇に映像を浮かび上がらせる、凄くいいですね――が披露されました。

 主人公の語りがまた和の劇のようで良いです。それに神々が興味を惹かれて、というのも天岩戸に通じる和を感じました。


 姿を現し話を聞いてくれた龍神はオーソドックスな姿でしたが……話によれば人間は神域を穢したとのこと。多くの神様はもう以前の姿でなかったり、力も削がれていって省エネになっているのかもしれませんね。

 ここに来るため作った社が犬小屋の大きさだから犬が仲間に、というのも凄く自然で昔話的で、面白いです。前向きに受け入れることにした主人公の強さも感じました。

 そして、カナエノミコトの眷属の街で犬張子と出会うわけですが……。


 (設定関連になってしまいますが)カナエノミコト、一応神域に眷属の街があるということは、神様の一柱であることは確かなんですよね……そこの不穏さも引きになってますよね。あらすじにあった「どの世界も地獄と変わらない」は、正常化されるのか、とかも気になります。



 お話全般についてですが、テンポが良くて楽しかったです。

 残酷な設定、シーン(言葉)もあるのですが、あまり重くならないように配慮されていると思いました。

 欠けた力を取り戻そうとする主人公の生い立ちと力、個人的な動機。神様に協力を求めて断られてほとんど孤立無援な中、相棒を探しに行き、犬張子を眷属からでも咄嗟に助けようとする彼女の優しさや礼儀正しさ。

 カナエノミコトの眷属・ハタリクチの非情さで、人間の過去の過ちが深かった、神様に見限られて当然なのだろうという想像もしました。それに主人公含め、神々の本質を容易に理解できていなかったという、人間と神の世界が隔てられている状況(神界には殆ど人間は訪れなかったのでしょうから)も。

 続く主人公のピンチと、かわいい犬張子の決意と使命は、そのまま次のシーンでの犬張子の活躍と救出された主人公の更なる活躍と決意・決断――ハタリクチを傷付けるか、逃げるか――期待を持ちました。

 犬張子、可愛い格好いいですね。こんな相棒最高です……。


 地の文はシビアな状況を……和や神々の世界を思わせる言葉遣い・たとえで、状況を分かりやすく(私はややこしい修飾を重ねた文を書いてしまいがちで……)綴ってくれていますし。

 台詞の方は誰が何を話しているか、どのような文化で育ったのか――祝詞や少女らしい口調、おじゃる口調にカタカナ言葉、犬張子が子どもの守り神だからかのひらがな等――明快に示しつつ、感情豊かで。

 もっと二人の活躍を読みたいなと思いました。失礼ながら大変巧いと思いましたし、細部に渡って作者様の気遣いが行き届いていると思いました。

 とても面白かったです。ありがとうございました。





■25-T-11.根回しの魔女〜モブ地味子、魔王様人事部長直伝社内政治で天下取り!?〜

タイトルのみ:

 現代日本のオフィスを舞台としたお仕事もの。実は有能だった的活躍で成り上がり要素あり。ついでにスパダリとのラブ要素もあるかも……?

 また、もしかしたら(「魔女」は称号的なものだと想像しましたが)「魔王様」まででてくると、ダブルミーニングで、現代ファンタジー要素もあるのかもしれない……と少し思いました(色々な種族が生きてる現代日本舞台、のような)。


あらすじ:

 職務経歴書! 最初にこういう書類を読み上げる形、絵でも表わせる漫画ではこういうスタートを見た覚えもある気がしますが、小説では珍しい……と思っていたら、職務経歴書そのものでした(ファンタジー要素はなさそうでした)。

 しかも、神の視点ではなく、提出後に受け取った「人事部長・丹羽」が評価した後のです。

 つまりこれはこの書類が実在したと受け取って良いものと思います。


 主人公の名前、性別、経歴、容姿、等がはっきりしています。そして性格もにじみ出ています。

 人事部長の通称を魔王様と書いてしまうし、「女の武器で~」とも経歴書に書いてしまう。更に「社内で「魔女」の名を轟かせる」と高い自己評価をダメ押しし、「←イマココ」&その後の経歴(予定)でますます、上司も人目も気にしない傍若無人ぶりを発揮します。

 経歴書の前に書かれた「卓越したビジネスマナー」再び輝きましたね。


 とはいえ、主人公、魔王の右腕になりたいようで、自分がトップになりたいわけではない様子。魔王もまた、人事の評価を気にせず「必ず欲しい」とあるので気が合うのでしょう。

 旧体制を、二人でハチャメチャにかきまわしながらの、「社内政治で天下取り」(タイトル)が期待できそうなあらすじでした。



本文:

 改めて主人公の名を確認し、「三つ葉葵」って徳川家の家紋でもある、強い……と思いながら読みまして一文目、いきなり「改竄ですよね?」強い。

 この一文で主人公の強気な性格、曲がったことが許せない(かもしれない)が伝わってきます。三対一(丹羽部長は部下だからという理由で庇う性格ではないことを、主人公も承知している)でも諦める気はない。

 対峙する悪役――女性の武器を使う月詠さんと、たらし込まれた男性陣を一人で何とかしようとしている。

 ……まずここでやはり、「魔王」や「魔女」がファンタジー的な意味ではない、と確定しました。月詠さんがとても和風な名前なので、その意味では、主人公が破竹の勢いで改革する雰囲気を表現しているのかなと感じました。 


 そしてもうひとつジャンルに関して言えば、この時点で、いわゆる「お仕事もの」ではなくて……メインは女性向けざまぁなのかなと思いました。

 月詠さんのキャラクター造形、彼女が丹羽部長を味方だと思ったこと。

 彼女に対する主人公の内心の表現。それに部長のいわゆる「主人公を公平に評価する」スパダリっぽい感じ。

 根回し済みな優秀な主人公。対決したと見えたときには、既に決着がついていて――以前部長に助けられた自分はレベルアップして――更に成り上がっていく期待感。

 相手にされたことと、USBメモリの中身など仕事についてはここでは語られなかったので、やり返したという「ざまぁ」を冒頭に持ってきたのかなと感じました(実はこの時点では、現代恋愛も入ってくるのではないかなと思ったのですが、メインではなさそうかなと思いました)。

 そして以後は、ことここまでに至った話になりますが……。



 思ったままとのことなので、ごく個人的な趣味で語りますと……。

 タイトルやあらすじのコメディ感で想像したよりも、ドロドロしていると感じました。

 また、主人公の、部長以外のほぼ全員に対する評価がきつく(社内も結構縁故採用とか良くない雰囲気のためかもしれませんが)、あまり応援できる感じでなく……。

 特に、

 >こっぴどく彼女に捨てられた男性社員と、行きたくもない合コンに行ったりして

 根回しのためなら、どんな手段でも使うのが「魔女」かもしれないのですが(泥にまみれる、と主人公が自身を語ってますし)……月詠さんの性的アピールを罵倒しているので、性別に関わりそうな場でない方が良かったかなと思いました。済みません。

 月詠さん、悪魔とか呼ばれてるし、あらすじに「派閥を操る」とありますし、どうしても探らねばならぬ理由があったのかもしれないのですが。


 ただ最近はこういったドロドロ、復讐系をコンテストの応募などでよく見かけるので、そういったジャンルなのかな、そういったものを求めてる方も多いかなと思います。

 また、2シーンとも、コミカライズ映えするなと思いました。




■25-T-12.僕が好きな幼馴染が正体不明なイケおじに惚れてしまったようです

タイトルのみ:

 主人公の少年が、幼馴染みの女の子が不審者かもしれないイケおじに惚れてしまった。自分の揺れる恋心に影響されつつ、幼馴染みを大変心配してイケおじの正体も突き止めるような話になりそうです。

 イケおじが反社会的なことをする人だったりしたら大変そう……。


あらすじ:

 青春もの!


 図書館にいる、見た目の変わらないおじさん(エルフだったり?)……。

 たぶんこのスタート時点で、幼馴染みの日和ちゃんはおじさんが好きになっているのでしょう。怪しいということが気にならないくらいに。


 元の世界に戻したい、というのが十代の青春っぽくていいですね。日和ちゃんの自分よりおじさんを優先する優しい性格とか、異世界の話を信じるとか(たぶん異世界の物とか魔法とか見たのかな……)、自分はこの世界が居場所(少なくとも当面は)だと思っているのかなとか。

 そういう性格だから主人公は好きだし心配だし協力するのかな、などと想像しました(双子のお姉ちゃんは、何となくしっかり者っぽいイメージ)。


 おじさんは簡単に帰れないと思うので、舞台は日本で、痕跡とか過去の事例とかを調べるお話になるのでしょうか。

 忘れられない夏、という締めの部分が甘酸っぱい青春と冒険のイメージです。


 

本文:

 一行目から登場した不思議な「おじさん」を紹介する、幼馴染みの日和ちゃん。既に何度も見かけている風ですが、友人から情報も得ていた様子。

 「おじさん」目当てでわざわざ家から遠くの図書館に来た――紹介・情報共有されたのは幼馴染みとしての距離の近さも感じますが、それ故に彼女の男性の見た目の好みを把握して、おじさんが好みに合致していたと気付くのが切ないです(最後まで読むと、もしかしたら恋愛的な意味でなく、異世界っぽい人が気になるからなのかなとかも思いました)。

 

 驚いたのは、日和ちゃんに魔法が見えるということ……この世界には、意外と魔法が存在しているということです。

 おじさんの存在もですが、殆どの大人たちが気付かないか気付いても忙しくて通り過ぎてしまうようなことに目を留める子ども、そこを起点に動き出す青春の気配。主人公たち三人の秘密。とてもいいです。

 しかし主人公は、もし恋愛を持ち込んでしまうと、バランスが崩れて、今の関係もかわいい日和ちゃんもきっと見られなくなってしまうと思っているのでしょうか。こちらも青春ですね。


 後半、「おじさん」の三郎さん首がなくなった! のに主人公が気付いたことから一気に動き出しておじさんとの距離が縮まります。

 あちらの世界とこちらの世界、魔法はあっても法則などが違う様子……そして割とカジュアルに使われる魔法。切られた首に、帰れない世界。本人には深刻かもしれないですけど、ひと夏に似合っている謎でどきどきします。



 タイトルは「イケおじに惚れてしまったようです」でしたが、日和ちゃんのそれは恋愛対象として大好きというより、憧れとか格好いいから(そしていい人だから)、困っているから手伝いたいというもののように思えました。奥さんいますしね。主人公が日和ちゃんが好きだからそう見えたのかな、と思いました。

 一番行動力のある彼女に巻き込まれる形で、主人公は恋のライバル(?)を手伝うことになったわけですが……。

 手伝っている最中はおじさんと日和ちゃんとの仲にやきもきしても、終えればおじさん、異世界に帰ってくれるから――日和ちゃんと仲良くなりすぎたり、また同じことで首切られて飛ばされない限り――夏の間、試験対策共々頑張ってほしいですね。

 夏の終わりにはおじさんとの思い出ももりもり増えていて、主人公もさみしがりそうな気もするのですが。


 日和ちゃんは主人公が思っていたより魔法に詳しそうですし、この世界に彼女以外にも魔法について知っている人がいる、異世界がある。

 事件とおじさんやマスターといった(今まで日常にいなかった)大人たちとの交流も通じて、主人公は魔法と日和ちゃんのことも、より知っていくのではないでしょうか。

 ピンチはチャンス。夏の終わりに、主人公には一歩踏み出して欲しいと応援したくなるお話でした。




■25-T-13.これから死ぬ女 √ もう死んだ男

タイトルのみ:

 ご希望で、タイトルのみについてが、少々長くなります。


 まず主人公は女性男性のどちらともか、神の視点か、どちらかかなと思いました。

 生きている方の女を主人公にして、彼女の生き様が、もう死んだ男の過去を絡めて語られるという可能性も考えたのですが……。

 死んでいても、生前のシーンを入れる、あるいは知人の誰かを通して生きていた頃の思い出を語れますし、遺品などで物語をかなりの分量で語ることはできるとも思いました。


 理由としてはたぶん、タイトルが、なるべく対照になるように作られたように感じたためです。

 それは生と死、女と男という対照的なものを記号√がきっぱり別けているからなのですが、視覚的にも坂・崖の下と上というような印象があるからではないかと思います。

 もしポスターで現すなら、二人が対等の分量と大きさで(何かの線を挟むか、きっぱりした明暗や反対色の中に)配置されるような話をイメージしました。



 話の内容の鍵となるのは、ルートがどういった意味か、だと感じました。

 ……先にお断りしますと、私は算数・数学がとてもとても苦手ですので、全くの読み違いをしている可能性が高いです……。


 もしゲーム的な「ルート」の平行世界が絡むような話であれば、運命が変わっていくような社会派なテーマも含む話(ゲームの引用になってしまいますが、たとえば『428』とか)。


 ルートがゲームと関係なくとも、二人を分けた決定的な何か(と選択)がお話の中心になるのかもしれません。同じ場面で別のものを選んだからそうなった、のような。その場合女性は生き残るのでしょう。

 この場合は、「√」に正と負がある(……合ってますでしょうか)ならその両側面という感じもしますし。


 ただ、これはルートが二人の(文章の)「中心」にある、と想定してのものですので、たとえば数学の「ルート2(√2)」の屋根の下に、2の代わりに「もう死んだ男」が入っていた場合、意味合いが全く変わりますね……(私がテキストでのルートの書き方を知らないだけという可能性も大いにあります)。 

 

 全体的には、小説ならハードボイルド、文芸、外国文学の翻訳、そんな印象を受けました。

 落ち着いたイメージの、基本的には抑制された感情の中に時折深い悲しみに慟哭し、強い怒りが発露される。それらはその後も、あちこちの仕草やシーンに滲む。そんなストーリーと文体かなと。

 完全なハッピーエンドではなく、ビターエンドでしょうか。

 


あらすじ:

 具体的に1973年オーストラリア、戦争後の~とあったので、世界史図録を出してみました。

 同年にベトナム和平協定調印、第一次石油危機があったようです。


 主人公のリリは「これから死ぬ女」でしょうか。そしてジェイクは本当に死んだわけでなく、戦争後の虚無感により「もう死んだ男」。


 リリはなんとなく若い女性で、未婚であるジェイクも同様だと想像しましたので、ここでの戦争は大戦でなくやはりベトナム戦争でしょうか(調べたところ、オーストラリアも派兵していたそうです……米軍のイメージが私には強かったです)。

 虚無感とありますが、そこにだけ活躍の場があったタイプの人間か、もしくは仲間を失ったことなどによるサバイバーズ・ギルド的なものか、無意味であった……との個人的な感情か、など色々と想像しました。


 はじめは互いの打算や思惑で始まった結婚生活でしょうが、二人は各々のやり方で自分と他人を理解し(互いに相手を、というのとは違う気がします。恋愛というよりも、それぞれ傷を抱えた人、生に執着したことがある人として)。


 イメージとしては、かつては快活に動き回っていたけれどもベッドで死ぬリリが。 

 かつては床で壁にもたれて座り、またベッドの側に座るジェイクを、長い人生を歩かせる原動力になる。タイトルのように、二人は対照に(ただここに数学的な意味のルートが暗喩されていた場合、申し訳ないのですが私の読解力では難しかったです……)。

 そんな洋画のようなお話になるのではないでしょうか。



本文:

  おお、ちょっと洋画っぽいといいますか、舞台っぽい、海外ドラマっぽいといいますか。それに会話主体ですが、台詞でも動きを説明しているので、気持ちと状況がするすると飲み込めます。


 何故そう感じたのか少し考えてみたのですが、たぶん、主人公のリリの台詞に括弧がないこと。(当然ながら日本人離れした)親しみやすそうな口調と、(今の日本では一般的でない)個人宅で使用人を雇うという状況……かもしれません。

 それに、ハウスキーパーの聞き手・エマの台詞には括弧があり、立場を踏まえた口調からかなと思いました。

 リリの台詞は彼女の身の上や動作を説明しているのに、説明的すぎず、彼女の表情や口調、動き、温度が感じられるようでした。ちょうどエマを通して客席の観客に語りかけているに似る……表現が難しいですが、このまま舞台劇の台詞にできそうな印象を受けました。


 それからリリの過去の話をエマと一緒に聞いて――重い過去をこうやって言ってしまうのは、辛いと逆に深刻そうに話せないとか、心配させたくないとかあるなとか思いつつ――リリは性被害者で、少し感情移入してしまいました。

 ……叔母さんは殺しきれなかったのか……叔母さんも辛かっただろうなとか……従兄弟生きてる可能性あるのか……などとこう……私刑はいけないんですけどね、未成年への罰が軽すぎるのもそういう時代かなとか……。



 リリはアメリカの温かい家庭出身でしたが、それを捨ててここに来た――では、顔見知りのジェイクとは、どこで出会ったのかなと思いました。あらすじの時点ではてっきり、オーストラリアに、リリもジェイクも住んでいたと思っていて……。

 ジェイクが『本当はこの世に存在しない人なの。戸籍上は死んでいるのよ』と話していたので、もしかしてアメリカで出会ったのかなと。

 アメリカ兵としてベトナム戦争に赴き、オーストラリア人の戦友が死に(彼は天涯孤独か何かだったのか)、混乱の中、自分を死んだことにして彼に成り代わったのかな、と想像しました。

 戦争では辛い思いをしたでしょうし、オーストラリアは分かりませんが、アメリカの帰還兵はPTSDの名称ができる契機であり、また帰国しても世間の冷たい目に晒されたと聞いたことがあります(今ちょっと調べたら、帰還兵自身も反戦運動に参加した方がいるとか……)。

 リリは「死ぬ前のジェイク」と知り合いで、何らかの伝手でそれを知ってここに来たのかなと。

(9/13追記:タイトルの「√」について。タイあら感想で書いたこと以外に、新しいことを思い付かなかったのですが、心電図とかないですよね……ないですね……)


 帰宅したジェイクですが、彼も台詞が軽やかですが、リリと同じく内面には辛そうなものを抱えているように感じました。「愛しのリリ」って本心ではなく、明るく振る舞う演技でしょうし……。


 ただ、ここで式の提案――提案ではなく、もう決めてしまっているのですが――で、このまま一人で無気力に死にゆくことを決めているように感じました。

 >「来週ゲストハウスを借りたんだ。僕の生前の友人を呼んだから~」

 この「僕の生前の友人」は秘密を守ってくれる、「死ぬ前のジェイク」の友人……お別れの会として、前の自分にきっぱり別れを告げることを決めているようですし(リリも「生前のジェイク」を知っているので、彼女とまとめて、でしょうか)。

 >「もう死んでる僕と、これから死ぬ君の、葬送式だ」

 これはもう、すごい引きですね。明るい口調と声音で提案している様子が目に浮かびますが、内容は陰鬱で。


 ですが、葬送式がジェイクのどん底だと彼が思ってても、あらすじのように、式はリリと(形だけでなく)ともに過ごすきっかけで――生きるための契機と悲しみはリリの看取りにあるような気がしました。

 これからの二人の、短くも長いやりとりが気になるお話でした。




■25-T-18.さようなら、私が愛した嘘の花

タイトルのみ:

 女性向け異世界ファンタジー、それも百合ものを想像しました。または、悪役令嬢復讐もので、復讐相手は聖女を中心に国家権力とか。

 書き出し祭りでは様々なジャンルのお話が集まるので、文芸的なもの、SF的なものの可能性も考えました。

 ただ何となく、主人公は大人の女性なのではないかなと感じました。さようなら、が柔らかく思えるのと、私という一人称の男性は女性と比較して少ないからです。

 また、「嘘の花」は冒頭のように、女性の比喩ではないかと感じました。



あらすじ:

 現実日本を舞台とするお話でした。私が異世界(恋愛)もののタイトルに触れすぎているからかもしれません。


 アイドルと嘘/偶像というテーマは語られることが度々あると思いますが、アイドルものはアイドルの才能、努力があるというイメージだったのに対し、「才能など微塵も」とまで言われるアイドル。そのアイドルが天才の横で上り詰めた理由「嘘」である。

 そこまで力強い嘘とは、どのような嘘だったのか。


 アイドルとしての輝き、魅力に関わってくることは間違いないと思うのですが、同時に「私すらも欺ききった」とあります。

 名前は勿論、経歴や性格、姿かたちまで本来の彼女とはまるで違っていて、主人公が気付かないくらいだった。あるいは勘付いた主人公が接触して彼女も気付いても、全く別人のふりをしていた――まであるのかもしれません。

 「命を懸けて、ときには死をも覚悟して」という言葉からは持病なども想像できますが……「私すらも欺ききった」がこのことなら、心配させじと明るく振る舞っていたようなイメージも抱きました。


 ただ全体的に主人公からの語りに不穏な感じが漂っていて……。

 もしかしたらアイドルになる前から「ミナト(の本名)」を知っていたであろう主人公。直接言葉を書けているというより、離れた距離から観察し、心の中から一方的に呼びかけているような。

 「さようなら、ミナトさん」は虚構が崩れるのを待ち望んでいるのでは(そのために何かしたのでは)と思わせられました。

 本文はこの主人公(信頼できない語り手かもしれない)の一人称で進むのではないかと思ったのですが、そうなると、華やかなステージの裏で進む主人公の企みや言葉に、ハラハラしながら読むお話になりそうです。



本文:

 「私」は誰か――が、最初に思い浮かんだことでした。

 最初の視点である「僕」は、あらすじでは観察対象だった「ミナト」でした(実はあらすじ時点ではミナトもハルも女の子かな……と勝手に想像していましたが、どちらも男性でした)。

 では「私」が日向ハルなのかといえば、あらすじからもそうとは思えず。彼の一人称が(舞台上ですが)「俺」であることから除外できます。


 彼らを知っているファンも少ない中から熱狂を作り出した、見事にステージをやり遂げた二人。

 それらを冷静に観察する視点はミナトから、舞台から「私」は見えてきません。五百人中の数人のファンなら顔を認知していてもおかしくないのに、不審な動きや目つきの人がいるなら気付きそうなものなのに、それもありません。

 金城が登場してもなお、順調すぎるほど順調にスターダムを駆け上がる二人の姿だけ。

 明るいハルの音楽の天性の才能、彼をよく理解している冷静なミナトのサポート。売り出す才能がありそうな(芸能界らしい少々の嫌らしさを備えた)社長の金城と、どこをとっても自然で楽しいシーン。

 でも、このままアイドルものとして読んでいくには引っかかると、落とし穴を探す気分でした。



 ……実は、この後するすると最後まで読み切りました。4000字はけして長くはない分量ですが、書き出し祭りでたくさん読んでいると、文章の重さとか情報量などで歯ごたえなども様々で。推理したいものがあると、あれがヒントかこれはどんな意味かとか色々考えてしまうのですが……。シーンの切り替えのひとつひとつで、情報と謎が次々に、分かりやすく提示されていったからだと思います。


 二人の日常とハルの天才性、ミナトの努力と「嘘」……兄の代わりになったこと(この時点でハルが気付いているかは不明ですが、社長は何にせよ芸名としての「月島ミナト」がいればいいような気がします)。

 ミナトが、兄の死体を埋めたこと。彼自身の一人称が「俺」であること。ハルを仇と思っていること。

 死体の側に立っているだけでは殺人犯と断定できないのですが、彼は(凶器を持っていた……とか、何らかの理由で)そう思い、復讐しようとしている。それはアイドルとして頂点に立ったとき……?


 そして最後に、視点があらすじの「私」に変わって。

 「ハルの中には、天才がいるそうです」の言葉、最初はアイデアが降ってくるようなものと考えていましたが、真相は違いましたね。

 ハルの身に過去に何かあったのかなかったのか、別人格のシリアルキラー(のような気がします)が入っているなら、いずれ表のハルも破滅しそうです。


 もしミナトが「私」の存在と犯行を知り、更にハルの主人格を助けたいと思ったら……どうするのでしょうか。あらすじの「私すらも欺ききったその虚構で」にかかってくるのでしょうか。

 ……というのは、「私」はもうミナトの復讐心を察知しているよう。ただミナトは当初の復讐予定の上に、「私」の存在を加味して、罠を仕掛けてきそうな気がするのですよね。それも武道館の、大勢の観衆の前で。

 そして、「私」のあらすじでの勝利宣言と最後の挨拶を……ミナトは(ハルも?)「私」の予想を超えて逆転するのか。見てみたいです。


 一人のハルの中にいる、「俺」と「私」の二人。二人の体で演じる一人の「ミナト」。この設定だけでも、すごいのですが。

 複雑そうな頭脳戦とアイドルものの組み合わせ。続きがとても気になるお話でした。 




■25-T-22.悪の幹部はアルバイト!〜常連が魔法少女だった時のマニュアルってありますか?!〜

タイトルのみ:

 ラブコメ×魔法少女もの。明るくわちゃわちゃした雰囲気もしました。

 主人公は少年~青年。

 はじめは、悪の幹部自体がバイトで、あまり強くない悪の組織なのかなと思ったのですが(コメディ色が強くなり楽しそうです)。


 悪の幹部とアルバイトの兼業で、バイト先に顔見知りの魔法少女がやってくる。

 悪の幹部の場合は仮面とか被っていて、魔法少女とは敵対をせねばならず……バイト先では常連さんの彼女と仲が良くなったり。とかでしょうか。


 「マニュアルってありますか?!」なので、根は善人で、悪い悪の幹部ではない(?)気がするんですよね。

 バイトの身分ではバイト先に来ないでとも言えないし、言いたくないし、正体がバレるバレない、バラすバラさないと、おいしいシーンがたくさんありそうです。



あらすじ:

 「ダラーク」、堕落……甘い誘惑ですね。傍点がついているくらいですから、あんまり世間的に悪いことをしていない気がします。

 バス爆破はしないけど、運転手さんに「もっと仮眠しろ」とか言ったり、歯医者さんの前でスイーツ店を開いたり? ゲーム時間の制限反対! で、ロックがかからないようにしたり、みたいなことを想像しました。


 魔法少女たちはきっと品行方正、真面目なので許せないんでしょうね。実際電車のダイヤが狂ったら、困る人や怒る人はたくさんいそうですし。

 彼女たちは早くダラーク一味を倒したいのでしょうが、主人公はむしろ、膠着状態  を望んでいた様子。


 主人公ですが、高校生で悪の幹部兼業アルバイターとのこと。高校生が本業で、「長引かせたいバイト」が悪の幹部……それも生活のために。泣けます。常連というのは倒しにやってくる魔法少女の比喩だったんですね。

 でもこれも読み違えかもしれません。複数のバイト先の一つが悪の幹部かも。ヒーローショーでは戦闘員役をやってても面白そうですね。


 けれどこの忙しく大変でも本人にとっては望ましい(と思っている)日々が、あらすじの末尾が「だが……。」で終わっていますので、そうそうこんな状態は続けられない様子。

 上が本気出せと発破をかけるか、凄い兵器を開発してしまうか、マジカ・シスターズの猛攻がはじまるのか。


 どちらにしても、主人公はヒロインとうまくいった上で、彼女の力も借りてヤングケアラーといいますか、苦労している日常も好転したら良いなと思いました。

 「魔法少女」は人を幸せにする存在のはず! です。



本文:

 悪の幹部バイト中の主人公。ピグトンは可愛らしい名前ですが、由来は豚でしょうか? 力で人を「怪人」に変えるタイプの悪の幹部と、横にマスコットがいるタイプの魔法少女さんの対決。

 しかしタバコボンノーンとは。変えられたのが禁煙中の人だったら可哀想すぎます。私もたばこの煙の臭いが個人的に凄く苦手なので、アスタ・マジカに吹きかけるのは煙幕兼ねてでも攻撃だと思います(&副流煙……!)

 それにしてもアスタ・マジカは本気なのに、主人公は倒さず倒されずを、お金のためにずっと続けなきゃいけないなんて大変です。

 主人公は悪の幹部以外にもバイトを2つ掛け持ちしていて、深夜にふらふらの姿は可哀想。妹のためとは言え未成年ですよね……。これは勉強もおぼつかなそうですし、高校卒業後もこのままなのでしょうか。何か彼の人生が好転するようなことがあれば良いのですが。



 後半、ヒロインのシオンが出てきますが。彼女、深夜までの特訓&消臭スプレー購入できっとアスタ・マジカなんだろうな、と思っていたらそうでしたね。

 主人公、彼女がグレてないか悩みがないか心配するあたり、いい子だし、悪の幹部バイトはそれでも続けるくらい割が良いのだろうなあと思いました(魔法少女が治安を守ってくれるのも保証されてますしね)。


 ……しかし彼女も主人公を勧誘した理由、秘密を守らせるためだけではなさそうだなと思いました。彼のことを信用しているなら、仲間が欲しいのかなと……。

 毎日深夜までの一人特訓というのは、他に魔法少女仲間がいなくて負荷が高いのかなとか。ピグトンを倒したい、アスタ・マジカになっているときの演技(正体バレしないためでしょうか、でも意外とどちらも素なのかも?)が大変とか。

 主人公が頷いたら、まずは打倒ピグトンが目標になりそうです。連携の特訓とかもしそうですね。


 一方で、主人公が魔法少女になった場合、仕事4つ掛け持ちは生命の危機になりそうで心配です……。

 妖精からはあまり報酬が出なさそうですし……。というのも魔法少女ものだというのもあるのですが、倒すのが煩悩で、ニルヴァっておそらくニルヴァーナですよね。 

 報酬要求しても「セゾクの欲望から解放されよう」って考えてもおかしくないです。妹も自分も食べないといけないのですけど、仏教って断食もありうる宗教ですし(セゾクチキンはさぞ罪な味でしょう)。

 ※妄想を更に重ねますが、仏教と主人公の名前に関係があるなら、猪(豚)は畜生道で苦しむ彼の道で、アスタ・マジカによって苦しみから解き放たれるみたいな意味もあるのでしょうか。



 主人公、魔法少女になったとして、いいことはあるでしょうか……自分の活躍をニュースで見た妹が喜ぶシーンを、主人公が見るかもしれない? ……でもたぶん一緒に夕ご飯食べてゲームとかした方が喜ぶと思うよお兄ちゃん(勝手に妄想が膨らみました、済みません)。

 単なる協力だと収入・生活上のメリットはないので――脅されたからと従うタイプでもなさそうなので――シオンに、同性として妹の面倒を見てもらえるとか、そういうことはあるのかもしれません。


 あとは、主人公とアスタ・マジカの関係で言えば。彼は魔法少女にも、素のシオンのどちらにも、同じ鋭さを感じているんですよね……何か恋の予感がしますね……。 


 もし魔法少女になったら、悪の幹部とバイトと正義の味方の三重生活。魔法少女生活(や女装?)の秘密の共有。

 ならなくても、シオンの秘密を知った上での、悪の幹部バイトの継続。自分の秘密の死守。

 予想されるイベントが盛りだくさんで、主人公が何をどう選択していくか、楽しみな書き出しでした。





■25-T-24.廻り髪結いは謎をとかない

タイトルのみ:

 江戸時代、それも江戸の髪結い(美容師)が主人公の推理もの。

 廻り髪結いという言葉は知らないのですが、出張サービスでしょうか。

 男性は髷ですが、女性の方がきっちり固めてなかなか髪を解かないイメージがあるため、主人公の髪結いは同性である女性ではないかと思いました。


 また、髪を「梳く」、「解く」を、謎解きとかけているからと思いますが、タイトルの「とかない」がひらがなで優しい感じがします。


 謎をとかないというのは本当に謎を解かないのではなく(推理ものを期待します)、それを人前でつまびらかにしないのでは、と思いました。

 それはおおっぴらに人前で髪を解かない女性のイメージとも合致するような気がして、細やかな配慮をして解決するような、そんな人情話を想像しました。



あらすじ:

 冒頭数行で、時代、職業、性別、能力、口調・性格……全て説明した上に、語り口調や台詞から、時代小説だろうと思わせる。力強さがあるあらすじ。

 江戸時代、というのは合っていましたが、遊女の髪とは思いませんでした。後宮ものや遊郭もの、結構好きな人が多いジャンルですね。

 主人公の謎解きの腕はひっそりではなく大いに知られている様子。

 岡っ引き(警察)からも頼りに……というのは、現代の探偵ものにもある美味しい(私が好きな)シチュエーションです。岡っ引きは男性でしょうから、彼女の、吉原に女性として出入りできる特殊性も、頼りにする理由としても強いですね。


 ……と、思わせての急転直下。

 りんは主人公ではなく、いわゆる強い師匠。年齢も技術も、自信も正反対の、見習い少女・たきが主人公。

 この時代に千両盗んでそれが(たぶん猶予はもらえるものの)確実となれば死罪になる。たきにとっては生活面でも心理的な面でも大ピンチでしょう。

 そこで、危機に陥ったホームズを救うワトソン的なお話を期待するのですが……。


 果たして馴染みの岡っ引きは本当に、りんに疑いをかけての逮捕でしょうか。

 一応逮捕したけれど動揺しているとか、上に強く言われて逮捕せざるを得なかったけれど真犯人は別にいると考えているとか。むしろりんに逮捕するように協力を求められたとか。

 りんが嘘をついたのは、逮捕後でしょうが、口裏合わせや狙いがあるのでしょうか。色々と妄想が捗ります。


 そして、たきはりんとはまた別の、個人的な資質で真相に近づいていくのでしょう――新たな探偵誕生か。それとも目の前で師匠が鮮やかにが解決するのを目撃するのか。はたまた、全く違う展開か。

 残された(残した)櫛に託されたメッセージはあるのか。

 何にせよ、背後には吉原全体を巻き込む事件が待っていそうです。



本文:

 吉原が舞台、それもお相手は遊女の中でも格が高いらしい太夫。彼女にお墨付きを受けるほど、髪結いのりんとたきが信用を――それも岡っ引きにも――得ている様子で始まりました。

 奉行所に秩序を守られた江戸と、線を引かれ別世界の秩序を持つ吉原。

 その境界を自由に往き来するのは、経験も自信も対照的な師弟。今までとこれから、どんな活躍をするのか妄想が膨らみます。

 りんはすぐに髪結いとしての腕を披露しますが、すぐにもう一つ人気の理由たる謎解きの腕に話が移りました。

 何度も事件を解決しては頼られている様子なので、タイトルの「謎をとかない」とはどこまで解いてとかないのか気になりますね。それに、聞くと言って仕上げ櫛を耳に当てたところも……。


 謎が解けるシーンですが、「天晴れ!」が決め台詞風で、その前にたきが(助手のように)探したが――としているところが凄いなあと思いました。探偵と助手っぽい雰囲気も好きですし、一度たきに視点が寄っているので、りんの活躍がよりいっそう鮮やかに見えます。

 続く傍目八目という推理部分は、卓越した推理力の披露というよりは、自分の経験にも引き寄せて(柔らかく言いつつ)、「人」をよく見てきた観察眼からの解法。

 しかも、「事件そのものをなかった」ことにしてしまう。

 きっぱり白黒付けることだけが解決ではないというのは、りんの信条でしょうか。その意味では、確かに謎は解いたけれど、なかったことになったので、「とかれ」なかったとも言えますね。

 そしてここで初めて、男性が場に登場して……。



 この後岡っ引きの政次にりんは引っ張られてしまい、あらすじのように、主役がりんから(と、思いました)たきに移りました。

 でもりんを名探偵――主役(のように)たらしめていた要素のひとつが謎解きの力であるなら、実はその推理の主である櫛の、一時的な持ち主になったたきが主役を張るのも、自然のよう。

 そして今までりんが解いてきたという謎のどこからどこまでが、彼女自身の活躍だったのかなと少し考えました。


 タイトルについて言えば、確かに髪結いは「謎をとかない」ですね。櫛が解いてまいます。

 謎を解いたとして、その後の取りなし方は、りんの発案だったのか。もめ事には関わらない方がいいこともありますし……たきの慕い方を見ても、元々世話好きな性格なのかなあと思います。

 この仕上げ櫛は付喪神的な存在じゃないかと思うのですが……りんも若いですから、りんの師匠などから受け継ぐか道具屋などで手に入れて、それなりの年月でお互いに話し合って、二人で今の捜査スタイルを作ったのではないかなと想像しました。

 あの「天晴れ!」、もともと櫛の口調だったのかもしれません。


 さてバディが変われば、スタイルも変わる。

 今は自分に自信がないたきですが、師匠であるりんを助けるためという目的(そして自分の将来、家族のため)にも、謎を解くことをけなげに決意します。

 りんを見習い、櫛に導かれて、やがて彼女なりのものごとの解決方法を見付け、彼女なりの大人像に近づいていくのだろうなと思いました。


 ただ最初の謎の相手が吉原、消えたお金は1000両の大金。しかも櫛に言わせれば「吉原の女は昼と夜じゃ別人」。さっき解決した事件ですらそのままで済むものか、一抹の不安を覚えましたね……。りんと違って、たきは夜の吉原には行ったことがないんじゃないかな、とも。

 そんなところに、まだ若く素直そうな彼女が立ち向かうのは、本当に大変そうです。

 りんに会えればヒントがもらえるかもしれませんが……りんは本当は何をしていたのでしょうか。ここにも人情話が潜んでいそうです。

 それに櫛ひとつなら懐に忍ばせられそうなものですが(一応大きさを検索してみたのですが、飾り用でなければ現代とあまり変わらない大きさなのかなと)、あえて置いて夜の吉原に、そして牢屋に向かったのでは……とか。(牢屋の中と外での連携、私的には好きなシチュエーションなので、そうだったら嬉しいです。)


 不安も謎もたくさんですが……櫛とりんの決め台詞は「天晴れ!」。

 同じ言葉で激励されたたき、絡まった紙のような事件を見事に解きほぐし。事件解決時に再び二人から「天晴れ!」を聞くことができそうな、ハッピーエンドの予感がするお話だと思いました。



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