ちいさな恐竜と、夏の雨
明るかった空が、
一瞬で 墨を流したように 暗くなる。
風が ざわざわと 木々を駆けぬけ、
熱をとかすように 雨が落ちる。
ぽつ、ぽつ、ぽつん。
葉は ほっと 頬をふくらませ、
ごくごくと 雨を飲み干す。
アリたちは きちんと並んで お引っ越し。
アスファルトの熱は じんわり冷えて
さっきまで焼けていた地面に
犬の足音が 軽やかに響く。
ぴょん、ぴょん、ぴょん!
いち、に、さん。
「よし、いまから走るよ!」
雨と競争するみたいに。
黄色のレインコートは ちいさな恐竜。
しっぽがピーンと立って、ぶんぶん大さわぎ。
ふとふり返ると~
彼が笑ってた。 雨がはねてた。 風がうたってた。
窓辺の猫が じっと それを見つめる。
「なんてぬれねずみな ばか犬~」
ぺろりと足をなめて、顔を洗って、
けれど、犬のうれしそうな背中に
つい くすりと 笑みがこぼれた。
夏の雨——
それは、暑さに咲いた ちいさなおまつり。
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写真はこちら:
https://kakuyomu.jp/users/kuripumpkin/news/822139839093491824
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