Le jour où toutes les planètes se sont effondrées
作業は土の選定に始まる。泥団子には或る程度、粘性の高いものが適す訳だが、うちの裏山の畑は正に打って付けの土質だった。
両手に土を一掬いし、混入している小石や枯れ葉等の
土がそれなりの団子状になったら、土間の平らな箇所で転がし、本格的な真球へ近付ける事となる。表面の細かな凹凸を慣らし、この段階で微細な
僕はいつも姉に遅れを取った。僕が一合目をえっちらおっちらと登っている時、姉は三、四合目辺りに居る。
姉は、あらゆる場面で僕を凌駕する存在だった。その技術的且つ心理的な距離感は桁外れなもので、僕の少年期は劣等感と共にあったと言っても過言ではない。
成形作業は最も注意を要する工程だ。誤れば、崩壊の危機を招く事となる。前工程の水分調整が好い加減だったり、土間へ押し当てる力の加減が杜撰だったりと、実際、僕は何度も辛酸を舐めたものだった。
そんな哀れな僕に、姉は手を差し伸べる事も待ってくれる事もしない。単独登頂に向け、素知らぬ顔で歩を進めるだけだった。
いよいよ最終工程に至ると、納屋が工房に選ばれた大きな理由が解る。土間の端には、僕等が
塵を泥団子にたっぷりと
勿論、その出来栄えは、名工の域に達した本物の技巧があってこそで、偽物に等しい僕の駄作は土星の輪に紛れた石塊に過ぎなかった。
納屋の棚に居並んだ、姉の逸品。悠然と輝く大小様々な泥団子は、正に惑星直列だった。僕は
生暖かい風の午後、木々は
ところが、姉は違った。気も狂わんばかりの猛り振りは、一足飛びに嵐が到来したかのようだった。僕は首根っ子を押さえられ、納屋へと連行された。
黴臭い薄闇には、煤けた硝子窓の仄かな光だけがあった。僕は土間に突き倒され、訳も分からぬまま惨状を目の当たりにした。
泥団子星系の崩壊。
或る物は真っ二つに割れ、或る物は
姉の眼は、
そこで
棚の
泥団子の陰から、
僕等は思わず身を寄せ合った。まるで共通の敵を前にした時の行動だった。
案に
それは一つの儀式だった。悪戯や嫌がらせの類ではない事は、雄々しい所作と執拗さとが如実に物語っていた。惨劇とも労務ともつかない孤独な振る舞い。全ての泥団子が本来の姿に戻るまでに、どれだけの時間を要したのだろう。
やがて、
そして、
どういう訳か、僕等は置き去りにされたような心持ちで、
あの出来事を境に、姉は人が変わったように思う。
いつか
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