もし「余命」が人生に刻まれたら、あなたは何を捨てて、何を守る?
この作品は、そんな問いを真正面から投げてくる異世界ファンタジーやねん。
主人公は、どこか影のある少年ラピス。記憶に穴があって、自分が何者で、何を失ったのかすら曖昧なまま、異世界の空気に放り込まれる。そこで出会うのが――タイトル通りの“ニヒルな鼠”。ただのマスコットと侮ったらあかん、口は悪いのに頼れる相棒で、二人の距離感がこの作品のいちばんの旨味になってるんよ。
世界は優しくない。息をつく間もなく不穏な影が差してきて、「生き延びる」ことそのものが選択の連続になる。しかも、物語を一気に加速させるのが、ある宣告……。ここが効いてて、読んでる側の呼吸まで少し早なる感じがあるんよね。
暗さ一辺倒やなく、相棒の乾いた軽口が緊張をほどく瞬間もあるから、重さとテンポのバランスがええ。
「相棒もの」「期限付きの運命」「記憶の謎」「貴族屋敷の人間関係」――このへんが好きな人には、かなり刺さると思うで。
◆太宰先生の講評(中辛)
期限がある物語は、卑怯なくらい強い。人間の格好悪さが、期限の前では隠せなくなるからだ。
この作品の美点は、まず“掴み”が確かだということだ。読者に「次を読ませる理由」を、早い段階で複数用意している。記憶の空白、迫る危険、そして余命――。これらは互いに邪魔をせず、むしろ一本の縄になって主人公の首を軽く締める。読者は、その締まり具合に引っ張られてページを進める。
相棒の鼠がいい。相棒というのは、甘い慰めではなく、主人公の弱さを暴く鏡になったときに強い。この作品の相棒は、その気配がある。軽口が、救いにも刃にもなる。そこが良い。
ただし中辛で言えば、情報の運びが丁寧なぶん、場面によっては“整理”が勝ちやすい。世界や状況が分かる代わりに、感情の火花が少し薄まる瞬間がある。だが、これは欠点というより、次に伸ばせる余白だ。会話や行動の中で、情報が揉めたり食い違ったりすれば、同じ説明がドラマに変わる。
向いている読者ははっきりしている。
生き延びるための判断、信頼の作り直し、そして期限の圧力――そういうものを、甘さ控えめに味わいたい人だ。派手さだけではなく、心の傷の湿り気をちゃんと残したファンタジーを読みたいなら、手に取って損はない。
◆ユキナの推薦メッセージ
「余命三年」って、設定だけで泣かせにくる作品も多いねんけど、これは“泣かせる前に、生き方を問う”タイプやと思う。
相棒との掛け合いで読ませつつ、気づいたら胸の奥に小さい棘が残ってる。そんな読後感が好きな人におすすめやで。
暗いだけやない、軽口があって、居場所があって、それでも時間は残酷に減っていく――。
その残酷さに抗う物語を、今から追いかける楽しさ、ちゃんとあると思う。気になったら、第1話から一気に走ってみてな。
カクヨムのユキナ with 太宰 5.2 Thinking(中辛🌶)
※登場人物はフィクションです。
強い抑圧の中で生きてきた主人公が、良縁と呪いによって自分の道を歩き始める異世界ファンタジー作品です。
主人公は親からの虐待によって、人の目を恐れるようになった少年。
その日も母親に言われるがまま、人生を一変してくれるかもしれない祝福を求めて外に出ます。
しかし、その場を訪れていたのは、良識ある者たちだけではありませんでした。
カルト組織の暗躍によって、主人公が飛ばされたのは魔物あふれる洞窟の深部。
優しい出会いによって出口に近付くも、放たれた呪いが彼を直撃。
主人公は3年の余命を刻まれてしまいます。
けれど、失ってばかりではありません。
良識ある大人たちによって母親は遠ざけられ、呪いから逃れるための修行の場を用意してもらいます。
多くの忘却を抱える主人公は、命のリミットまでに呪いを打ち砕けるのか。
ぜひ読んでみてください。