運営を批判していれば良い「イージーな」風潮について

カクヨムSF研＠非公式

　先日、カクヨムのアカウントを持っていない人向けのトップページが人気作ばかりのページへと変わりました。ページが人気作や書籍化作品に変わったことの是非を問う記事が出て大きな反響がありました。

　Xでもそうした話題が出て、考えてみてほしいと訴えかけるポストが並びました。

　目に見えるので一瞬戸惑うわけですが、ウェブ小説投稿サイトの話題について少し考えてみたいと思います。

・二極化は始まっている。

　カクヨムを始め、ウェブ小説投稿サイトでは人気作家とそうではないユーザーの二極化はすでに始まっていると言って過言ではないと思います。

　カクヨムは投稿者と読者の差はかなり曖昧なサイトですが、それでも作家の間で評価をぐるぐる回す層と読者の目で篩に分けられる層はくっきりと分かれていると感じています。読者から実力を認められている作家の意見が創作論では声高に映りやすい、構造的な問題があると考えています。

（さらに言えば、作家の間で評価を回す層はコンテストでも下駄を履かせている状態になりますから賞の候補にはなりにくいのではないかと感じています。またサイトのサジェストもより人気作への導線が出来やすくなるので、そうではない層と人気作の層とで島宇宙化、似た価値観を共有する者同士が集まるような現象になるでしょう。）

　残念ながらカクヨムが慈善事業ではないことは確かなので全てのユーザーを平等に見ることはできません。

　それが運営がビジネスに走ったという言説を生んだり、良くないと促したりする記事には少し首を傾げます。

　カクヨムというサイトはウェブ小説投稿サイトというフェーズから一歩違うところにいます。サイト自体の利用者を増やすことはもちろんのこと、書籍化して市場にその作品を問うことも視野に入ってきています。

　そういう意味でサイトにとって数字を運んできてくれるという意味で貢献しているユーザーとそうではない登録ユーザーでサイト全体の共有している前提や価値観が乖離していくのは当然の成り行きです。

　カクヨム崩壊の兆しとか不安感を煽る手法も良くないと感じます。

　ほかのセルバンテスといった投稿サイトがオープン直後からすぐ撤退、サービス終了といった流れを目にしているのでわかりますが、９年維持されたカクヨムの舵取りはそこそこ上手く行っているのではないでしょうか。

・カクヨムは編集コストをかけないサイト。

　前々からカクヨムは編集コストをかけて、いわば編集者主導で何か作品を送り出すサイトではないと言われています。あくまでカドカワのなかで投資事業という位置付けで、サイトのユーザーによる生産力のみを重視しています。ウェブ読者に読まれる作品が選ばれ、そうではないものは篩にかけられる、残酷ですがそういうサイトだと思います。ここから先、カクヨムの編集方針が劇的に変わることがあるのでしょうか？　しばらくはないと思います。なぜならカクヨム発の商品がきちんと数字を出しているからでしょう。ウェブという一つの縮図で目立てないと書籍化すら難しい。そういう厳しさを真っ向から受け止めておくのも知恵だと思います。

　編集部がTOPを変えたくらいでは編集部がコストをかけたという見方も難しいでしょう。　

・小説投稿サイト外で活動する。

　Xで活動する作家とやりとりをしていくなかで、より読者のいるサイトを探しているという意見はよく聞きます。カクヨムの印象が作家が多い印象だというのは確かにその通りだと思います。ただ駆け出しの作家にとってその作家というのは主に人気作家以外のユーザーである場合もあるのではないでしょうか。反対に読者を得て活動している層はサイレント・マジョリティーかもしれません。積極的な発言はしませんが多数派であるような人たちです。

　私たちはカクヨムディスコードなどで普段いろいろなユーザーを目にしますが、誰がそうしたサイレント・マジョリティなのかは分かりません。

　ただ私がよく話をするのはどちらかと言えば人気作家以外のユーザーである場合が多いです。

　何を言いたいのかというと、そういう人たちはカクヨムの施策で一喜一憂しない強靱さのある人が多いと感じています。

　Xで発信したり、ファンを作っていこうと考えたりしている人がほとんどでしょう。

・我らはカクヨムのファン。

　ファンベースという言葉がいま流行っているらしいです。カクヨムを憂う層は、ある意味カクヨムのファンです。そうしたカクヨムのファンが離れていくことを危惧する発信ならそれは意味のあることだと思います。

　カクヨムのファンであることを自認せずに無闇矢鱈に運営を批判すれば「良い」とされる風潮はここで一旦断ち切るべきです。カクヨムのファンであるならそうした立場でモノを言って欲しいと思います。

元記事：

https://kakuyomu.jp/works/16817330655763574688/episodes/16818622171255999928