第15話

就業時間まであと少し。私は何をしているかというと。南雲先輩と資料室で過去の資料を探していた。


部長の管理が甘いせいで、とは言えないけれど、実際そうなのでイライラしてしまう。ナンバリングもバラバラ。たまには整理してほしいものだ。


「南雲先輩、この資料…」


声をかけても返事がなく、先輩が探している棚を覗いてみれば、蹲み込んだ先輩がいた。


「先輩!やっぱり、体調、悪かったんじゃないですか!」


『…うるさい、平気だ』


「ぜんっぜん平気そうに見えません!誰か呼んできます!」


『やめろ』


立ち上がろうとした私の腕を掴み静止する先輩の手は、とても暑かった。やっぱりあのとき抱いた違和感は間違いじゃなかった。


「…しょうがないですね」


よし!と気合を入れた私を不思議そうに見る先輩。ここは文句など受け付けてはいけない。何よりも南雲先輩の体調が優先だ。


「お姫様抱っことおんぶと、どっちがいいですか?」


『…は?』


「上に戻らないと」


『やめろ、体格差考えろ』


「だって先輩、見るからに体調悪くて、歩けなさそうじゃないですか」


勤務時間内に蹲み込んでしまうレベルだ。普段の南雲先輩ならそんなことはあり得ない。相当体調が悪いってことだ。


『お前に抱っこされるくらいなら、匍匐前進したほうがマシだ』



よろよろと立ち上がる先輩を止める。



「わかりました。お姫様抱っこもおんぶもしません。でも、支えるくらいさせてください」



よっ、と先輩の左腕を肩に回し、笑いかける。



「伊達に、ご飯たくさん食べてませんから」 


『…ばーか』



こんな時に不謹慎なのはわかってるけれど、気怠そうな南雲先輩の色気はとんでもなかった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る