南雲先輩と私

第1話

「南雲せんぱ〜〜い!おはようございます!!!」


今日も前を歩いている南雲先輩を見つけて、駆け寄る。私の声が聞こえた南雲先輩は、振り返って立ち止まる。


『…朝から元気だな、北田』


「そりゃあ南雲先輩が見えたら元気にもなっちゃいますよお!」


へへ、っと笑う私と、そんな私を呆れ顔で見る南雲先輩。会社まではまだ少し歩くので、一緒の出勤だ。朝から先輩と一緒にいられるなんて幸せすぎる。


『…おはよ』


「時差!!!!そこも好き!」


『ハイハイ』


私の告白なんてサラッと流されてしまうけれど、そんなものは慣れっこである。


「本当に格好いいな…脚も長いな…ひぇっ、スーツ似合いすぎてるな…今日のネクタイ超オシャレ…」


『北田、全部出てる』


「あらやだ!でも事実ですよ今日も格好いいです!」


そう告げれば呆れ顔。そんな顔も好き。


他愛無い話(8割私が話してる)をしていれば、会社に着く。朝の混んでるエレベーターに乗り込み、無言。さすがの私もここでまで喋るわけじゃない。


ただ、このエレベーターは至福のときである。前に立つ南雲先輩の香りがすんばらしいのだ。超絶良い香り。香水なんだろうけど、どこのかわからない。以前どこのか聞いたんだけれど、『秘密』と意地悪く笑ってはぐらかされた。そのときの南雲先輩もまだ格好良かった。


本日も良い香りである。朝から先輩の香りを嗅げるなんて幸せだ。って私、変態か?


『おはようございます』

「おはようございます」


『またお前ら一緒か』


「そうなんです仲良しなんで!」


『南雲、ストーカーに困ってたらちゃんと通報しろよ』


『ストーカーは実害でないと動いてもらえないですし…俺男だから…』


「南雲先輩をストーカー!?なんて羨ましい奴だ!」

『そろそろ捕まるぞ北田ぁ』


部長にしても先輩にしても失礼極まりないな。

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