第2話

『まゆり、こっちこっち〜』



連絡があった通りのカフェに行けば、すでに相手は来ていた。



「ごめん奈都子。先輩たちが喋ってるとこに捕まってさ〜」


『あ〜…あんたんとこの先輩たち、面倒くさそうだもんね』



待ち合わせをしていたのは、同期の吹雪奈都子ふぶきなつこ。同期入社の彼女は、同期の中でも高嶺の花である。透き通った白くて綺麗な肌に、ぱっちりとした瞳、まつげはバサバサ(羨ましい)、高くて形のいい鼻に、これまたセクシーな唇。髪の毛は染めてないらしく、全く痛んでいない自然な黒。惚れるなというほうが無理である。



性格は姉御っぽいところがまた魅力である。



「さっきもさ〜、自分は仕事に集中してないくせに、私に書類作成押し付けてきたんだよ…チラチラ出入口見てる暇あるなら指を動かして仕事をしろ!」



このカフェは会社から近いものの、隠れ家のようなお店のために社内の人はほぼ来ない。マスターがとても渋いおじさまで、珈琲が格別に美味しい。



私は本日のランチセットAを頼み、奈都子はBセットを頼む。



「して、本日の予定は大丈夫か?」


『あったりまえよ。今日のために仕事調整してるもの』



なぜ私と、高嶺の花である奈都子が仲良いかというと。



『なんせ我らの推しCPが画面に映る日だもんね!』



趣味が同じだからである。




「はぁ〜、ようやくだよ、ようやく。待ちに待った記念日だよ今日は…」


『ほんとそれよ。アニメ化してからどれほど待ちわびたことか…』



2人してお冷の入ったグラスで乾杯する。



「部屋も掃除したからそのまま泊まれますぜ、姉御」


『まゆりの部屋はいつも綺麗じゃない』


「修羅場中は汚いけどね」


『それは世の中みんなそうだから気にすることじゃないわ』



にっこり微笑まれて、危うく恋に落ちるとこだった。

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