ギルドでの日々と葛藤(仮)
みなと劉
第1話
「だから言ったじゃないですか、ギルドのランク制度は――」
「わかんねえんだよ!」
受付嬢リディアは深いため息をついた。目の前の新人冒険者は、もう五度目の説明にも関わらず首を傾げている。
「もう一度言います。冒険者ギルドにはFからSまでのランクがあり、新人は基本的にFから始まります。依頼にはランク制限があり、自分のランクより上の依頼は受けられません」
「で、CランクになればBランクの依頼も受けられるんだろ?」
「違います!」
「え?」
「Cランクの冒険者はCランクまでの依頼しか受けられません。Bランクになれば、ようやくBランクまでの依頼を受けられるんです。ランクは、あくまで実力を測る指標ですから、下のランクの依頼なら受けられますが、上のランクの依頼は実力を認められないと受けられません!」
「なるほど……。じゃあ、Fランクの俺がAランクの冒険者と組んだら、Aランクの依頼を受けられるってことか?」
「違います!!!」
バンッ!と受付カウンターを叩くリディア。周囲の受付嬢たちがチラリと視線を向けたが、「またか」と言いたげに肩をすくめて各々の業務に戻っていく。
「依頼は“パーティの平均ランク”で判断されます! FランクのあなたがAランクの方と組んでも、Aランクの依頼は受けられません! せいぜいDランクが限界です!」
「まじか……」
「まじです!」
新人冒険者はガックリと肩を落とし、リディアはこれで終わったと思いたかった。が、案の定、次の質問が飛んでくる。
「でもよ、Fランクのままじゃ大した依頼も受けられねえし、どうやったら早くランク上げられるんだ?」
「依頼をこなして実績を積んでください」
「どれくらいこなせばいいんだ?」
「それは依頼の難易度や評価によります。単純に数をこなせばいいわけじゃありません」
「じゃあ、何すれば……?」
「冒険してください!!!!!」
リディアはもう一度カウンターを叩いた。今度はギルドマスターのオズワルドが奥から顔を出す。
「おいおい、リディア。新人を怒鳴るなよ」
「マスター、私もうダメです。この人、何度説明しても理解しません!」
「ま、そういうのも仕事のうちだ。ほら、もう一度説明してやれ」
リディアは頭を抱えた。今日もまた、終わりの見えないランク制度の説明が始まる。
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