クラス転移〜転移先は、まさかの自分が考えた世界でした〜

いとう縁凛

第1話 ありふれた修学旅行のはずだったのに……


「っ」

「きゃぁっ」


 わたしの所に枕が飛んできた。怖くて思わず目を閉じちゃったけど、大君が守ってくれたみたい。


「大君!? 大丈夫!?」


 修学旅行初日の夜。学校が主催する枕投げ大会が行われていた。勝ち進んだクラスは、明日の夜キャンプファイヤーの前でやるダンスの選曲権がある。オクラホマミキサーを踊りたくない人達が、ものすごい速度で枕を投げてきた。


 一応、ルールがある。枕を落としたらアウトで、防御として使っていいのは布団のみ。人が人を守ってもダメだし、守られた人も連帯責任でアウトになる。

 大君に守られたわたしも、守ってくれた大君もリタイアだ。


 二人で大広間の端に行く。


「大君。さっきは守ってくれてありがとう」


 大君がコクンと頷く。

 大君とは幼なじみだけど、声を聞いたのは片手で数えられるぐらい。


 でも大君はずっと優しくてかっこいいんだ。さっきみたいにさっと守ってくれるし、おバカなわたしが高校に進学できるように勉強を教えてくれた。そのおかげで、大君と同じ学校に行けたし、クラスも同じという奇跡も起きている。


 幸せだなぁ。


 大君の隣にいられる。もう、それだけで幸せ。

 大君は身長がすごく高いけど前髪が長くて、わたしは背が小さくて。一緒にいても、彼氏彼女だとからかわれない。いわゆる、クラスカーストの下位だから。


 でも、大君の幼なじみだから知っている。日本人のご両親だけど、隔世遺伝らしい大君の瞳は、すごく綺麗なんだ。まるで森を凝縮したような深い緑色なの。幼稚園のときにからかわれてからずっと前髪で隠しているけど、もし見える状態だったら、絶対モテる。


「?」

「ふふ。大君の隣にいられるの、すごく嬉しいなって思って」


 じっと見つめすぎて、大君が首を傾げた。だからわたしの気持ちを伝えたら、照れたのか体育座りしている足と体の間に顔を隠してしまった。


 大君は、基本スペックが高い。高身長だし、優しいし、頭も良い。それでいて、ときどきかわいい一面もある。癒やされるのは、幼なじみの特権だ。

 そんな時間に無粋なことをするのは、いつも決まっている。


「おい、大森おおもり大樹だいき!」


 竹塚たけづか君に呼ばれた大君が、立ち上がった。どちらかというとわたしに身長が近いはずなのに、竹塚君は大君に見下されても怯まない。


小林こばやしを守ってナイト気取りか!」


 竹塚君は今日も黄色と黒のTシャツを、旅館の浴衣の下に着ている。前がはだけているのは、枕投げをしていたからかな?


 竹塚君に睨まれた大君は、まるでわたしを守るように前に出る。うん。今日も大君はかっこいい。


 大君と竹塚君が睨み合っているのは、大広間の端。その奥では、わたし達のクラスが枕投げ大会の優勝を決めていた。クラスカースト上位の人達が、アイドルの曲名を言っている。


 え、無理じゃない?


 アイドルに詳しくないわたしでも知っているグループだけど、誰も踊れないんじゃ……。

 他のクラスの人達の反応を見るに、意外と多くの人がやる気満々だった。たぶん、体育のダンスの時間に踊っている人達だ。盆踊りしかできないわたしがいるグループとは格が違う。

 踊れる人、踊りたい人がダンスをすればいいのかなって思った。


 その後すぐに解散となり、それぞれのクラスに割り当てられた部屋へ戻っていく。誰かと誰かが同室。そんな部屋割りではなく、ふすまで分けただけの大広間で雑魚寝だ。枕投げ大会の会場は、わたし達のクラスが寝る大広間だった。


 十五ずつ布団が並べられる様子は圧巻だ。襖が閉じら絵、男女が分けられた。中央には、夜通し見張りの先生がつく。


 とはいえ、元々は一つの部屋。大君と同じ部屋で寝ることになる。お母さんにいびきはしていなかったって聞いたから、大丈夫なはず。


 クラスカースト上位の女子二人、双葉ふたばさんと三吉みよしさんが恋バナをしている。隣の男子達には聞こえないような声量だけど、わたし達には聞こえる。


 へぇー。双葉さんって、一ノいちのみや君のことが好きなんだ。爽やかイケメンだもんね。大君の方がかっこいいけど。


 双葉さんと三吉さんの話し声が気にならなくなった頃、わたしは眠りについた。



 翌朝。

 信じられない、いや、信じたくない光景を目の当たりにすることになる。

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