第22話 わたしの部屋は暗かった

 心環ここあを見た後のことはあまり覚えていない。ハナコさんはあの後も説明を続けていたような気がするけど、それすらも定かではなかった。何をすればいいのかわからないまま、心環をずっと眺めていたのだ。そして本当に何もできないまま教会を去り、家に――お婆ちゃんの駄菓子屋に帰った。


 部屋に戻ってからずっと、寝転がっているのは自分でもわかった。すでに日は落ちているのに、電気はついていない。それでも何も問題なかった。


 目は開いているけれど、わたしの目には何も映っていない。代わりに脳裏に焼き付いた心環の姿だけが、ずっと見えている。


「久しぶりに会ったのに……」


 わたしは声一つかけることができなかった。どうせ何も返ってこないからとか、そういう理由じゃない。罪悪感……いや、これも違う。後ろめたかったのだ。


 病院に行けば、いつでも心環に会うことはできた。実際、毎日欠かさずお見舞いに行っていた時期もあった。でも、耐えきれなかったのだ。


 機械に繋がれて、機械に生かされているような妹をずっと眺めているのだ。最初は話しかけたりしていたわたしも、意味を見出せなくなってただ静かに泣くだけになった。そして泣くことすらできなくなったとき、心環のもとに通うのをやめた。


 誰もわたしを責めなかった。なんならお婆ちゃんはわたしの決定を喜んでくれた。お婆ちゃんの予想通り、わたしの心は少しづつ平穏を取り戻し始めた。少なくとも意味もなく泣くことはなくなった。


 ただわたしの心の中に後ろめたさだけが残り続けた。わたしを責めたのはわたしだけだったのだ。


「どうしよう……わたし、どうしたら……」


 わたしが何かしたって、心環が目を覚ますことはない。だからといって、教会で美術品のように飾られている心環をそのままにしていいのだろうか。


 そもそも、どうして心環が病院ではなく、教会にいたのだろう。ハナコさんが説明していたかもしれないけれど、わたしは一つも聞いていなかった。


 あのときもっと冷静でいられればと、今さらになって思う。心環のため、例えば心環を目覚めさせる研究ために移動させたのなら、それでいい。でももし、象徴として飾るためだけに移動させたのなら、どうにかして心環を取り戻さなくては。


「病院に連絡……いや、でも……」


 普通なら、心環を移動させる前にわたしに連絡があったはずだ。だって心環がああなった原因である事故で、お父さんもお母さんも亡くなってしまったのだから。病院に渡した連絡先はわたしのものだけ。


 病院……名前はたしか、白乃誌しろのし病院。教会と関係があったのだろうか。


 推測で考えてしまうのはよくない。明日もう一度教会に行って、今度はちゃんと話を聞こう。


 一人だとまた取り乱して、話をまともに聞けないかもしれない。でも今は一人じゃない。


「談ちゃん」


 わたしは顔を上げた。決心を談ちゃんに聞いてもらうためだ。


 ここで初めて、近くにかたりちゃんがいないことに気付いた。

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