第七話:レバニラとスキャンダル

 料理配信の翌日、事務所に出向くと、マネージャーの表情が固かった。


「ちょっと、二人とも。話があるんだけど……」


 打ち合わせ室に通されると、パソコンの画面には某掲示板のスレッドが映し出されていた。


『【速報】レバニラ姉妹、ガチで付き合ってる説』


 スクロールすると、私と澪の仲の良さを指摘する書き込みが並んでいた。


「これ、どういうこと?」


 マネージャーの声に、私は言葉を失った。


「え、えっと……」


「まぁ、人気が出るとこういう噂も出るよね~」


 澪は特に気にしていない様子で、呑気にスマホをいじっている。


「いや、そういう問題じゃなくて!」


 私は焦る。別に本当にそういう関係ではない……はずなのに、なぜかドキドキしてしまう。


「……とりあえず、公式にコメントを出すべきか検討するから、二人とも軽率な発言はしないように」


「はーい」


 マネージャーの指示に従い、私たちはその場を後にした。


「ねぇ橘ちゃん、この件、どうする?」


「どうするって……」


 澪が突然スマホの画面を見せてきた。そこには、リスナーのコメントが並んでいる。


【百合営業でもいいから付き合っててほしい!】

【レバニラ姉妹、公式化しないかな】

【レバニラ炒めのようにアツアツな関係希望!】


 思わずため息が漏れる。そんなの、どう答えたらいいのかわからない。


「……もういっそ、付き合っちゃう?」


「えっ!?」


 澪の冗談めいた言葉に、私は心臓が飛び跳ねた。


「冗談だよ~、でもさ、もうちょっとこの噂に乗っかるのもアリじゃない?」


 彼女の笑顔が、どこか本気に見えて——。

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