天下無双・ダンス・布団

@curisutofa

天下無双・ダンス・布団

『ガキンッ』『ぎゃあっ!』『ドサッ』『ザシュッ』『ぐへっ!』『ドサッ』


『『だ、誰か何とかしろ。これは命令だっっ!』』


野営地の天幕に迫る戦いの音と配下の断末魔から逃れる為に、頭から布団を被りつつ絶叫をすると。


『敵地の奥深くまで誘い込まれました。それに加えて敵には精霊魔法の使い手である、呪術師ベシュヴェーラー女呪術師ベシュヴェーレリンが居るようです。男爵バローン閣下』


取引関係のある金融機関から紹介されて雇った、金髪ブロンデス・ハール瑠璃之青アツーア・ブラオの瞳をしている魔法使マーギアーいの傭兵ゼルドナーが、天幕の外を眺めながら無表情に淡々とした声で話しをしている間にも。


『ガキンッ』『ぎゃあっ!』『ドサッ』『ザシュッ』『ぐへっ!』『ドサッ』


『精霊魔法の使い手と対峙するのは初めてですが。不可視状態から一方的に男爵バローン閣下の軍勢を攻撃して蹂躙じゅうりんをする様子は、死のダンスを踊っているかのように感じます』


異様な程に冷静な金髪ブロンデス・ハールの若造に対して、怒りをぶつけて。


『他人事のように話しているでない傭兵ゼルドナーっ。金を払って雇っているのだから迎撃して来いっ!』


雇い主の発言に対して金髪ブロンデス・ハールの若造は、瑠璃之青アツーア・ブラオの瞳による冷ややかな視線を向けると。


『構いませんが。私が居なくなると男爵バローン閣下の御身おんみを護れるだけの能力の持ち主がいなくなります』


『ガキンッ』『ぎゃあっ!』『ドサッ』『ザシュッ』『ぐへっ!』『ドサッ』


『敵の精霊魔法の使い手の正体は解りませんが、天下無双な活躍にて、軍場いくさばにて死のダンスを踊っています。天幕内にて頭から布団を被られている男爵バローン閣下に対しても、容赦をしない可能性があります』


『『わ、ワシは貴族の男爵バローンだっ。貴様らのような賤民せんみんとは違い、身代金を請求が出来るわっ!』』


『ガキンッ』『ぎゃあっ!』『ドサッ』『ザシュッ』『ぐへっ!』『ドサッ』


『解りました。男爵バローン閣下の家臣団の皆様方は、主君を護る盾として戦い名誉の戦死をことごとく遂げられました。敵地の真っ只中で、家族ファミーリエや仲間を殺された相手に対して、身代金を支払えると単身にて交渉なさって下さい』


金髪ブロンデス・ハールの若造はそう言うと、本当に天幕から出て行こうとしたので慌てて。


『ま、待て。依頼主であるワシの身に万ヶ一の事があれば、貴様は報酬を受け取れんぞ。ワシを安全な場所まで逃がし…、転進させよ』


天幕から出て行こうとしていた金髪ブロンデス・ハールの若造は、依頼主であるワシの方を振り返ると。


『私は学費と生活費を融資してくれている金融機関から、今回の仕事を斡旋あっせんされた傭兵ゼルドナーです。依頼主の要望に従いませんと、仕事を斡旋あっせんしてくれた金融機関からの信用を失います』


『『だったらさっさと逃げ…、転進をさせよっ!』』


『はい。男爵バローン閣下。私のような傭兵ゼルドナーにとっては、命よりもお金が大事で、お金よりも信用が大事ですから。依頼主の要望に従います』

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