KAC20253 第3回お題 妖精

谷間 の 妖精 (困ってる妖精を見かけたら、救けてあげましょう。きっと、恩返しをしてくれるはず……たぶん)

「……たすけて」


 いつもの公園、お気に入りの木陰に腰をおろす。

 心地よい陽気と涼しい風、揺れる木漏れ日。読書が捗るわ。


「たすけて…… お願い」


 栞をとって、続きから読み始める。

 さあ、ヒロインはどうやって殺されるのかしら? 毒殺? うふふ……


「聞こえてますよね…… お嬢さん」

五月蠅うるさいわね、読書の邪魔よ」


 煩わしくなって見上げると、蜘蛛の巣に絡まってる…… 虫?


「虫が、なんの用?」

「虫じゃねぇ! 妖精っす」


 言われて目を凝らすと…… 人間の様な姿に、蝶の羽根。でも、身長は五センチくらい?


「結局、人外じゃない。読書を邪魔しないで」

「たっ 救けてくださいって…… このままじゃ喰われちまう」


「なんで?」

「なんでって…… かわいそうでしょ」


 そう…… かわいそうかも、お腹をすかせた蜘蛛が。


「いくら出すの?」

「……え、金? 人間の金は持ってねぇけど…… 礼なら必ずしますって」


「ふーん、何ができるの?」

「……飛べます」


「…………それだけ?」

「はい…… あ~ いやいや、僕らのこと見える人間って珍しいんすよ」


「それが?」

「……だから、イタズラしほうだいっす」


「そう…… 救けてあげてもいいわ。標本にすれば、高く売れそうだし」

「ひっ! ひょ 標本?! それ、救かってませんって!」


 本に栞を挟み、立ち上がる。背伸びして手を伸ばせば、届きそう。


「だっ だいたい、JSに標本なんか作れないっしょ」

「一時期ハマったのよ。押し入れいっぱいのダンゴムシの標本、見る?」


「……なんでダンゴムシ?」

「あら、かわいいじゃない」


 手に取ってみると意外とかわいい、妖精も。


「あなた、名前は?」

「……フェイっす」


「私は、聖女ひじりめ魔女マメ。標本はナシにするかわりに、私に忠誠を誓いなさい」

「……へぇ、誓いやす!」





 命の恩人やから、仕方ねぇ。

 まあ、人間の寿命なんてタカがしれとるし…… お遊びにつき合ってやろうかね。


「能力を見たいわ。いま飛べる?」

「お安いごようでさ」


 と、思ったけど…… 蜘蛛の糸が絡んで羽根が!


「ありゃ……」

「ひゃっ ……ぅん」


 あっけなく落っこちて……

 なんか柔らかい谷間に挟まっちまう、あったかくて…… いい匂い。


「意外と大きいのに、ブラまだなんすね」


「やっぱり…… 標本にしようかしら!」

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