第6話 芋娘、貴族と夜営でネネディウム。
(ゴゴゴゴゴゴゴゴゴ………)
「良し! こんなモノかな♪」
野営の為、私がせっせと土魔法で今夜の小屋を建てていると、
「まったく、ネーネシアと居ると庶民という言葉の意味を根底から壊されそうになるな………」
グリフォン達のお世話を終えたお二人が、揃って何だか頭の痛そうなお顔でやって来ました。
「??? そうですか? 土属性に適性がある方なら皆さん割とやっていると思うのですが? 違いますか、バルドス様?」
「ネーネシア殿、確かに商隊や軍の野営などでも土魔法を使った簡易的な拠点を造りはしますぞ。ただ………」
「ネーネシア、それは最早小屋とは呼ばんだろう………、むしろ中々に善いレベルまである家だ。
野営で風呂にトイレやベッドに男女別の部屋。それに加え、屋外には竈門と食事の為の円卓まであり、そしてそれらをグルリ!と囲う見上げる程の高さの壁………と、何だあの壁の上アレは? 村に居た子ドラゴンの石像か!?」
「あ! アレはモンスター避けの御守りになるかなぁ~♪ って、思い付いてつい………」
「とにかく! そんな物を一人で、かつ、目を離した一瞬の隙で造る
「え!!? い、いえ、私なんて魔法でお芋を育てる位しか能が無い、ただの芋魔導士ですよ!? た、確かに魔力量は人並みよりちょっとだけ多くなった自覚はありますが、こんな石の小屋は何人かで分担してワッセとすれば、シケ村の村人でも6、7人で出来ちゃう庶民の魔法です!」
「ネーネシア………」
「ガハハハハハハ♪ 良いではありませんか姫様。これ程快適な野営、今回は運が良かった。という事で」
「ま、まぁ、それもそう………なのか?」
イザベル様は未だ、解せぬ。と言いた気なお顔をされていましたが、私達の師匠という理不尽の塊みたいな魔導士を間近で観ればきっと、私がいかに平凡なただの芋魔導士なのか納得して貰えるはずです! だって、
『師匠! なんで一晩寝るだけなのにこんな無駄に大っきな塔なんか建てるんですかぁ!』
『ええ、だってぇ、どうせなら大きい方が目立ってカッコいいしぃ、お得じゃない? ネーネシア、野営の基本は高く、硬く、そして広くよ! オーホッホッホ♪』
とか言って、あの人はパチン!と指鳴り一つで地上6階・地下2階建ての迷路や罠に屋内ぷーる?に
なので、私が石壁の四方にオマケで造ったクーちゃん像なんて、全然可愛い物なのです!
**********
それから私達は、
「
とイザベル様が
お二人と出会ってまだ正味一日と少ししか経たないのに、私は妹と離れてからの四年分の楽しいが纏めてやって来たみたいに、たくさん笑いました。
「イザベル様、イザベル様! わ、私、お友達と枕を並べて寝るの初めてなんです! 何だか目が冴えて眠れそうにありません!」
正直なところ、まだお貴族であるお二人を苦手に思ってしまう所も、少し、あり、ますが………、
「ハハハ、まったく仕方ないなネーネシアは。と言ってもまぁ、じ、実は私も誰かと同衾するのは、コレが初めてで………」
お二人と、出会え、て………………ほん、に………嬉………………ZZZ。
「フッ♪ 目が冴えているのでは無かったのか? この自称芋魔導士め………」
「………………ZZZ」
**********
「おや姫様、寝付けませんかな?」
「まぁな。バルドス卿は風呂上がりの晩酌かな?」
「いやはや、火の番も野盗や魔獣の見張りも要らず、加えて姫様方との外聞にまで配慮がされておれば、護衛など用済みも良いところですからな。ハハハ」
「まったくだな、加えて芋酒なる新種の美酒が在れば尚更か………。どれ、偶にはこの不肖の弟子が杓の一つでも注がせて頂こうではないか」
「ハハハ、コレはまた恐ろしく畏れ多い一杯ですな、おととと………。うむ、実に美味い♪」
「それは何より。………………ところでバルドス卿、」
「何ですかな?」
「今更だが、此度のネーネシアの王都行きの件。どう思う?」
「…………良くも悪くも、荒れる。でしょうな」
「だろうな………。これでも私は、シスリアの姉自慢を散々聞かされていたからな、ある程度の予備知識はあったワケだったのだ。
だが正直なところ、幼い妹の姉自慢など幼さと憧れに多分と脚色された夢物語であろうなと、話の半分すら真に受けてはいなかった………。
それがよもや、私と二つしか歳の変わらぬはずの文友達が、これ程の傑物であるなどと誰が想像出来る? ましてシスリアに聞いた話はすべて四年前、つまりネーネシアが12、3の頃の話なのだ………。
本人は
「ガハハハハハ。姫様、時に規格外と云われる者は何の前触れも無く、ポン!と突然世に飛び出てくるもの。
人々はそれを英雄とも、魔王とも呼び、総じてそんな存在が現れる時世は、歴史の転換点と呼ばれるのです」
「英雄……か? 確かにオリハルコンの剣を握り砕いた姿は強烈であったが………」
「おっと姫様、我が剣を砕いたのは古龍の子。間違えておられますぞ?」
「ハハ、卿は未だ其れを言うのか?♪」
「姫様、コレは一重にネーネシア殿が要らぬ外聞を抱かれぬが為の苦肉。小説より奇なる真実は、時に秘めるが吉ですぞ?」
「ハハハ、それが真の本心ならば確かにそうだな♪」
「ぬぬぬ……………。ともあれ、
「あぁ、分かっている。それについては、あの腹黒な陰険眼鏡の手を取ってでもどうにかしてみせるさ。何と言っても私は、あの二人の友人。なのだからな♪」
「ハッハッハッ、それはそれは何より。真に案ずるべきは、イブリアス卿の胃の方かも知れませんな、ガハハハハハ♪」
**********
「………ぅ〜ん、イザベル様ぁ、私はただのお芋で……フフ♪………ZZZ」
「まったく、他人の気も知らずに嬉しそうにしおって、この芋眼鏡が………………ペシッ♪」
いつの間にか一人で寝落ちてしまっていた私には、お二人が夜中に何をお話だったのかも、夢の中でおデコにペシッ!と走った小さな痛みの後に感じた、柔らかくて優しい感触の正体が何だったのかも、知る由はありません。
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