男女でダンジョンへ
それから自宅の部屋に戻ったがダンジョンに行きたい。
今すぐ行きたいがカリンは意気消沈といった様子だし、マリさんは家にカリンと俺を放り込んでからどこから取り出したのかメイスを持ってケルベロス退治に行くと言っていたので一緒に俺をダンジョンまで連れて行って欲しかったが口を人差し指で塞がれ耳元でささやかれた。
「今日のケルベロス退治はとてもツバサ君が見たらびっくりしちゃうからダメよ。でもまた今度なら連れてってアゲル」
少しドキッとした。
という訳で俺も積極的に死にたくはないので1人でダンジョンへ行くのはためらわれた。
俺も武術を学んではいたが魔物と戦うのだから無傷とはいかないだろうしどんなに弱い魔物だとしてもラッキーパンチを食らう可能性も戦闘なのだからあるだろう。怪我を負って動けなくなった時のカバー要員が必要だ。
この世界には魔法があり皆当たり前に使えるようだが俺はそれを使うことが出来ないからである。
魔法を使うことが出来ても普通に命を落とすことがあるダンジョンに魔法を使えないまま突っ込みたくはない。
ダンジョン、ダンジョン、ダンジョンと駄々っ子のように言いながらベッドの上で足をバタバタさせながら折角のファンタジーなのに楽しむことの出来ない現実に直面していた。
すると俺の部屋がノックされる。
俺がドアを開けると今この家には俺とカリンしかいないので当たり前だがそこにいたのはカリンだった。俺は入るように声をかけた。
カリンを自室へ入れると俺はベッドに座り、カリンも立ったままでは疲れるだろうと俺の横に座るようベットをぽんぽんと叩いてここに座るように促した。
「なっ、急になによ……。臭いかもだし準備がまだ……」
「何って立ったままじゃ疲れるでしょ、それに臭くないと思うよ」
カリンはびっくりした様子でこちらを見てもじもじ内股になりながら唇を真一文字に結んでいたが俺の返答を聞いてハッとなると大人しく横に座った。
「あっ、そうよね。恥ずかしいちょっと期待しちゃった……」
カリンが座ってから何やら呟いたが俺は聞こえなかった。
そんなに臭いを気にしていたのかな。
「ツバサはダンジョン行きたいの」
「行きたい、めちゃくちゃ行きたい。連れてってくれるの」
カリンがそう聞いてきたのでカリンの言葉に嘘はないかと言うようにカリンの肩を揺らしながら食い気味に答えた。
「わ、わっ、顔近いって分かったから。さっきからツバサの部屋からダンジョン、ダンジョンって聞こえてたから来てみたけどそんなに行きたいんだ」
カリンは不意に揺らされたので少し押し倒しそうになってしまっていた。
「ごめんねでも嬉しすぎてさ」
俺はゆっくりとカリンから手を離し、我ながら子どもぽかったなと頭をかきながら笑った。
「やっぱり、ナナさんとソウヤさんの血を引いているのね」
俺の行動を見てカリンはそう言ったが言い終わった後に考えこんでいる俺を見て、しまったと目を見開いた。
「ごめんなさい、私嫌なこと思い出させちゃったわね。本当私って今日の朝から最低ね」
俺としては両親を失った事は乗り越えたし、さっきはこの世界の俺を生んでくれた両親はダンジョン関係の仕事をしていたのかなと俺は考察していただけでちっともカリンは悪い事をしていないがそれを見てカリンは俺が両親を失った時の事を思い出してしまったと考えたのか謝ると涙まで流していた。
それよりこの世界ではカリンの父であるサトルさんが居なくなっているのに俺の父親はいるんかいと驚いた。
「ちょっと待ってさっき俺が考えこんでいたのは俺がその血を引いてるのとダンジョンが何の関係があるのかなっていうのを考えてただけ。それに朝カリンは俺の事を守ろうとしてくれたじゃん、なんで謝るの」
俺はそう言いながらカリンの涙を拭った。
「ツバサって本当に優しいのね。そんな嘘までついてツバサの本当の親は私の母親とクラン『ドラグーン』でダンジョン探索をしていた有名な探索者なのは知ってるくせに」
へー、そうだったのか。
俺はそれを聞いてますますカリンとダンジョンに行きたくなった。
「じゃあ、俺とカリンで俺たちの親みたいに探索者になれば親子2代で有名探索者でスゴイじゃん」
俺がそう言うとやっと本気で気にしていない事が分かったのか笑顔を見せてくれた。
「やっぱりカリンは笑ってるのが1番可愛いよ……」
俺はホッとして思わず心の声を漏らしてしまった。
結構俺恥ずかしいこと言っちゃったな。
俺が赤面しているとカリンが声をかける。
「ツバサも笑ってるのが1番よ」
「それって俺が可愛いってことかな」
カリンも赤面しながらも俺の事を褒めてくれたがこの空気に俺はおちゃらけずにはいられず手を腰にやりドンと胸を張るとそう言った。
「ふふ、ツバサって本当に面白いわね。じゃあ私もクヨクヨするのもここまでにしてツバサをダンジョンに連れてってあげるから準備するわよ」
「よしきた、回復魔法が使えるカリンに連れて行ってもらえるなら安心出来るよ」
俺はベットから飛び跳ねるように立ち上がるとダンジョンで魔物と出会うのだろうからジーンズとか破けにくいものの方がいいと思い服を脱いだ。
「バカ、バカ、バカ。なっなに考えてるの私がいるのに急に脱ぎだすなんて。私だからいいけどツバサは無防備すぎるわよ」
カリンは手で目を隠してこちらを見ないようにしながら急いで出ようとして壁にぶつかった。
そうか貞操逆転世界っていうことを忘れていた……。って元々の世界でも上はともかく下は駄目だろ。
「イテテ、ツバサ準備出来たら声かけてね」
カリンはおでこを擦りながら部屋を出ていった。
そっか今は貞操逆転世界だもんな気をつけないとビッチぽく思われちゃって良くないかも。
前の世界で例えるなら所構わず裸をさらす女の人みたいなもんだし、いくらカリンが家族とはいえ良くない。
反省しながら着替えを終えた俺はカリンに声をかけた。
カリンも着替えているだろうからカリンの部屋にいきなり入るということはせずしっかりと確認した。
「ちょっ、ちょっと待ってね。オッケーじゃあ行きましょう」
そう言うと少し息を荒くしたカリンが出てきた。
息を荒くするほど急いで準備してくれたカリンに感謝しながら俺はカリンと家を出た。
途中、ダンジョンというと田舎の方にあるイメージがあったのでバスとか電車に乗ってある程度遠くに行くのかなと思っていたのだがバス停や駅がある所からは遠ざかっていった。
近場にダンジョンがあるのかな。
俺はダンジョンの知識がなかったので慣れているであろうカリンを信じて歩くこと15分。
俺たちがついたのは何の変哲もない建物の前だった。
ダンジョンというと洞窟みたいな場所に入って行くと思いこんでいたがこういった人工物が変異してみたいなパターンかとワクワクしながら自動ドアを通ったがそこはダンジョンではなかった。混乱して辺りを見回すが中は今のファンタジーな世界でなければコスプレ会場かと思うほど鎧やローブを着た女の人ばかりだった。
その人たちの会話を聞くとオーガが出てきて焦ったや防具を壊されてアイテムを取ってきたけどプラマイゼロだよ。とダンジョン内の事を話している内容が聞こえたが。
あれ、ダンジョンじゃない。
俺は混乱して不安な視線をカリンに向けるがカリンはそれに気づかずにカウンターへと進む。
「この子の探索者登録お願いします」
なるほどダンジョンにいくにはまずは登録が必要なのか。
カリンが嘘をつくとは思っていなかったが不安になって疑ってしまったことを心の中で反省する。
カウンターにはこの鎧やローブを着た女の人ではなくスーツをビシッときた女性がいた。
「はい、ではこの書類に名前など必要事項を書いて……、ってオトコぉぉお」
手元のパソコンで何かの作業をしていた女性はカリンの言葉を聞いて手元にあった書類を渡してくるが俺を見て驚きの声をあげるがカリンが急いでその口を塞ぎにいった。
すると先ほどから聞こえていた会話が聞こえなくなり場が静寂に包まれた。
こちらを全員が見ているような気がする。背中に火が付くんじゃないかという程の熱い視線を受けているとカウンターの女性が頭を下げるとミスをしてしまったという顔で誤魔化すようにわざとらしく大きな声をあげた。
「って、オクトパスキングの討伐に成功したんですかー、でもここは登録窓口なので違う階ですよー。私がご案内いたします」
カウンターの女性がそう言うと俺に向けられた視線は散った。
「何だオクトパスキングか」
「くぅ~、男がいるのかと思ったぜ」
「男が探索者なんでやるわけないでしょ。今まで探索者になった男なんて両手で数えられる位しかいないんだから」
そんな声が聞こえなんとかカウンターの女性は誤魔化す事に成功したことに胸を撫で下ろしていた。
貞操逆転世界といっても全員男にがっついてくるわけじゃないんだな。まあ駅の時みたいになっても面倒だったから良かった。
カリンの前で性欲に負けてる俺を見られるのは恥ずかしいしね。
俺はカウンターの女性が案内した部屋にたどり着くとその女性は頭を下げた。
「申し訳ございません、私のミスです。書類に必要事項を書き終わったら受け取りに参りますので女性の危険がないこの部屋でお書き下さい」
「そうよ、全く。探索者ギルド職員なんだからちゃんとやってよね」
俺はぷりぷり怒っているカリンをなだめながらカリンが言うには探索者ギルドの職員の女性に頭を上げるように言った。
探索者登録をする所があるのと鎧とかまとった人が居るからもしかしてと思ったがここがギルドだったようだ。
現実とファンタジーが混ざるとこんな感じになるのか。
「あっ、お呼びになる時はこのメールにお願いします」
職員の人は出ていく時に俺に紙にメールアドレスを渡してきたがそれを横からカリンがかっさらっていった。
「これギルドのメールアドレスじゃなくてあの女のメールアドレスじゃないの。本当油断も隙もない、書いたら私が呼びにいくから捨てとくわね」
カリンはそう職員に言って目の前でその紙を『ファイアー』と唱えると魔法で燃やした。
「あー、私の結婚チャンスがー」
職員の女性はヨロヨロと倒れたがカリンにゲシゲシと蹴られると一礼して部屋を出ていった。
やっぱりこの世界の女性は男に飢えてるんだなと再確認した瞬間であった。
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