第3話 だって。
アイドルは、所詮本心でないデマカセの言葉しか発さない。愛してるだの、好きだよだの、ファンは宝物だよだの、嘘しかないじゃないか。
アイドルや顔のいい俳優達が発した言葉は、翔子にとっては穴あき問題にしか聞こえない。
……翔子には、ウソの部分が聞こえないから。
例えば、彼らが「ファンはオレたちの宝物さ」と言ったとする。この言葉は、翔子とってすれば「ファンはオレたちのーーだ。」としか聞こえない。わかりやすく言うと、面白い動画を見ていて、動画の一番盛り上がる部分で音が無くなり、盛り上がった後に音が戻ってくる。この感じは、翔子をイライラさせる。
だって、そうでしょ?
想像してみて。動画見てて途中で音声ぶった切れてまた戻って来るのイライラしない人なんていないでしょ?
だから、アイドルは嫌いだ。出来るならウソで作り上げられているアイドルという偶像の発した声や言葉を翔子は耳に入れたくない。
***
講義が終わり、帰路についているとスマホが鳴った。発信元は、大家さん。この電話に出たことが翔子にとっての人生最大の転機となるとも知らずに……。
***
翔子は、大学入学と同時に一人暮らしを始めた。大学生の世間で言う一人暮らしデビューだ。
翔子が住み始めたマンションは、セキュリティ重視のマンションで、部屋もまぁまぁ広い。一般的な大学生では到底住めないであろうマンションに住んでいた。翔子の実家は、代々能力を受け継ぐ家系ともあって裕福な家庭だった。そのため、一人暮らしを翔子が決め両親に伝えた時の反論がすごかった…。しかし、それに負けじと翔子も反抗し返し1カ月近く口を聞かず半ば反抗期のような日々を過ごした。それほど、翔子は実家をすぐに出たかったのである。翔子の反抗、少し遅い反抗期に根を上げたのは両親の方だった。
そして両親から翔子は念願の一人暮らしに対する言質をとったのだ。しかし……
「マンションの家賃も光熱費も全部払うから、バイトも何もしなくていい。その代わり、好きなことをみつけなさい」
と言われた。普通に考えたら、中々ない好都合な言葉であるが翔子の変なプライドがそれを許せず、両親に向かって
「光熱費は全額払ってほしい。でも、家賃の半分は自分でバイトして払うから。私だってもう子供じゃないんだから !」と言い放ってしまったのだ……。
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