翼の折れた妖精

広之新

プロローグ

 第3小法廷、そこでは裁判官の前にスキンヘッドの若い男が神妙な顔をして立っている。今や、判決が言い渡されようとしていた。

 傍聴席は少なくない数の人たちで埋まっていた。その左側には茶髪のヤンキー風の若者たちが陣取っていた。一方、右には一人の青年が固唾を飲んでその成り行きを見守っていた。その手はぐっと握られていた。


「判決を言い渡します。初犯ということや加害者に重大な落ち度がないことを考慮し・・・罰金刑とします・・・」


 それを聞いて青年は茫然として立ち上がった。


「そんな・・・」


 一方、茶髪の若者たちは肩を叩いて喜んでいる。彼らは加害者の仲間のようだ。裁判が終わると加害者の男のそばに集まり、わいわいと楽しそうに話している。それにあの青年は我慢ができなくなったようだ。


「おまえ! 反省していないのか! 妹がなってしまったんだぞ!」


 青年が若者たちに詰め寄った。すると彼らの中の一人が前に出て、青年をにらみつけながら言葉を吐いた。


「知らねえな! 裁判は終わったんだ! とっとと帰りな!」

「なんだと!」


 青年はカッとなってその若者の襟首をつかんだ。


「おまえたちのせいで! それを!」


 青年はその若者を殴りつけた。するとその仲間たちが青年を取り囲んだ。


「悟さんを殴りやがったな!」


 彼らは青年を取り囲んで、殴ったりけったりした。


「やめろ! やめるんだ!」


 そこに守衛が止めに入った。そして何とか両者を引き離した。


「きっと罪を償わせてやる! 覚えとけ!」


 その青年は大声で叫んでいた。

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