第5章:出会いの街

 二日後、エリオスはラズナの街に到着した。ここは王国の主要な交易路の一つに位置し、多くの商人や旅人で賑わっている。


 「すごいな……」


 村を出たばかりのエリオスにとって、この活気あふれる街並みは新鮮だった。屋台からは焼きたてのパンの香ばしい匂いが漂い、路地では楽器を奏でる者たちが人々を楽しませている。


 「さて、まずは宿を探すか……」


 歩いていると、突然何かが視界の端を横切った。


 「おい、待てーっ!」


 店の主人が叫ぶ声が響いた。振り向くと、一人の少女がパンを抱えて走ってくる。その後ろには、怒った店主が木の棒を振り上げていた。


 「チッ、また逃げ切るしかないか!」


 少女は身軽な動きで人混みをすり抜けていく。しかし、彼女の行く手にはエリオスがいた。


 「どけっ!」


 エリオスはとっさに反応し、身をかわす。だが、少女の足がもつれ、彼の胸にぶつかる形で倒れこんだ。


 「うわっ!」


 二人は地面に転がり、パンが宙を舞う。


 「お、お前!捕まえたぞ!」


 店主が追いつき、少女の腕をつかもうとする。しかし、エリオスはとっさに動いた。


 「待ってください!」


 エリオスはパンを拾い上げ、店主に差し出した。


 「これ、俺が払います」


 「え?」


 店主は驚いた表情を浮かべる。エリオスは懐からコインを取り出し、店主に手渡した。


 「こいつ、お前の知り合いか?」


 「いや、今出会ったばかりですが……事情があるんじゃないかと」


 少女は呆然とエリオスを見上げていたが、すぐに「チッ」と舌打ちした。


 「なんで助けるんだよ」


 「……困ってる人を放っておけない性分なんだ」


 エリオスが苦笑すると、少女はバツが悪そうに顔を背けた。


 「ふん……余計なお世話」


 だが、彼女の表情にはどこか警戒心が解けたような気配があった。


 「名前は?」


 「……リナ」


 「俺はエリオス。よろしくな」


 リナは腕を組み、「仕方ないな」といった顔をした。


 「まあ、あんたには借りができたってことね。じゃあ、あんたの旅に付き合ってやるよ」


 「え?」


 「この街じゃ何かと生きづらいし、行く当てもないしな。それに……あんた、なんか面白そうだし」


 エリオスは驚いたが、なぜか悪い気はしなかった。こうして、彼は最初の仲間を得たのだった。

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