第2話 そうと決めたら、しっかり練習
受諾したからには、しっかりと社交ダンスを身につけなければならない。番組の「社交ダンス部」を監修し、指導されている夏野 緑に指導を受けることとなった。
「親方、初めまして。現役時代は、力強く、またときに技巧が冴える相撲を応援していました。この度、ダンスの指導を仰せつかった夏野 緑と申します。よろしくお願いいたします」
「どうも、初めまして。双葉川 英也と申します。お褒めの言葉ありがとうございます。この度、番組の企画、ということで参加させていただきます。全くの素人ですので、ぜひご指導のほど、よろしくお願い申し上げます」
お互いに、一つのスポーツにすべてをかけてきたもの同士、夏野の誠意と情熱、英也の誠意と情熱は互いに伝わった。
「親方、現役時代にひざを痛めておられましたね。お身体も大柄ですし、下半身のことでは、一番の心配は、親方の「膝」です。ダンスの中の「ジャイブ」という種目は飛び跳ねる動作が多く、親方の大きな体では膝が心配になります。なので、この種目は集中して練習するのではなく、毎回の練習で少しずつ下半身の動きをマスターしていきましょう。親方の現役時代の相撲を見ていると、時に「業師」と呼ばれるだけあって、力強さと器用さを感じます。大柄な方なので、この特徴を「優雅さ」として表現するように練習しましょう。私が不在の時も多いですが、私の主宰する教室には、常に指導者の資格を有する者がいますので、時間がある時は随時お寄りください。また、月に一度、番組の出演者全部で合同練習会を行ないます。親方のパートナーは2週間後の合同練習会で「発表」ということになっています。」
と夏野は英也に伝えた。そしてその日は、ワルツの基本姿勢、そして足の運びを中心に練習した。夏野の教室の男性指導員が、英也に丁寧に指導をしていく。もともと運動神経のいい英也は、ワルツの足運びについては、この一日で大きく進歩した。そして最後に、夏野と指導者とのワルツの踊りを見た後に、夏野をパートナーとして、その日最後のダンスを行なった。
「親方、初めてにしては上手です。やはりもともとの運動のセンスがおありなのだと思います。ただ、親方、身長が185cmと背が高いので、身長が150~160cmくらいの女性だと、ちょっとバランスが悪いかもしれませんね」
と夏野は言って、その日の練習は終了となった。
しばらくは、朝は部屋の稽古に汗を流し、午後は夏野の教室で、少しずつ課題をこなしていった。番組の企画では、「大会に出場」がゴールとなっているが、さすがに6カ月ほどでの出場は「促成栽培」である。毎回の課題も、結構厳しいもので、教室の先生方にお世話になりながら、コツコツと練習を続けた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます