第4章 真の神として⑥
4.3.5 社会の反応
「神の行進(シェストヴィエ)」と呼ばれた白き者たちの行進は、都市の静寂を引き裂き、夜の闇に異質な輝きを放った。
――異形の神が現れた。
この衝撃的な出来事は、すぐに社会全体を揺るがした。
翌朝、テレビのワイドショーはこの事件を一斉に取り上げた。
「正体不明の集団が深夜に行進。神を名乗る異形の存在とは?」
「狂信的カルトか、それとも新たな宗教運動か?」
「市民の不安広がる――警察は沈黙を続ける」
コメンテーターたちは、センセーショナルな映像を前に、それぞれの立場から意見を述べていた。
「これは明らかに危険な集団です。新興宗教といえば聞こえはいいですが、実態は過激派カルトでは?」
「いや、これは何かのアートプロジェクトかもしれません。異形の美を追求するパフォーマンスという可能性も……」
「しかし、SNSの投稿を見る限り、彼らには確固たる信仰があるようです。ただの仮装行列ではない」
画面には、行進を捉えた映像が繰り返し流される。
異様な美しさを湛えた存在。
純白の衣を纏い、静かに進む信者たち。
そして、その中心に立つ、神。
銀色のスーパーロングヘアが月光を反射し、眼球全体が深い青に染まった異形の者。
巨大な乳房と極端にくびれた腰、滑らかな純白の肌、額には宝石のように輝く一本の角、鋭利な肉食獣の牙、24本の長く鋭い指、蹄のような足、しなやかに揺れる純白の尻尾、そして背には白く半透明の翼。
その両脇に寄り添い、慈愛に満ちた微笑みを浮かべながら支える二人の女性。
「……美しい」
誰かが呟いた。
番組のディレクターは、ニュースの見出しを変更することにした。
「不気味な異形」ではなく、「神秘的な存在」へと。
行進の映像は瞬く間にSNS上に拡散された。
「これ、やばい。目の前で見たけど、マジで現実じゃないみたいだった」
「宗教とか興味ないけど、あの“神”はヤバい。美しすぎる」
「警察は何やってんの!? 異形の化け物が堂々と街を歩いてんだけど!?」
「美の極致とはこういうことか……。私は人間の姿に縛られすぎていたのかもしれない」
「なんだこれ……怖すぎる」
「都市伝説かと思ったらマジでいるのかよ」
「リアルに神降臨してる」
「こんな美しい存在、見たことがない……」
「白華神様、あなたに従いたい」
反応は二極化していた。
恐怖と嫌悪。
畏敬と憧れ。
「#白華神(ヴァイス・ブルーテ)」というタグは数時間で数十万件に達し、ある者はそれを神として崇め、ある者は危険なカルトとして警鐘を鳴らした。
あるユーザーが書き込んだ。
「これは人類の進化では?」
その言葉に、多くの「いいね」がついた。
警察庁は緊急会議を開き、この異様な集団についての対応を協議していた。
「映像を見る限り、直接的な暴力行為は確認されていない。しかし、放置すれば社会不安を煽る危険性がある」
「彼らは何者だ? 指導者らしき人物の身元は?」
「未確認だが、一部の情報によれば、以前より身体改造を行い、“人間を超えた存在”になろうとするカルト的集団が存在していたとの噂がある」
「警戒レベルを引き上げるべきだ。もし市民に危害を加えるような動きがあれば、即座に対処する」
警察の監視網は、静かに「白華神美新生(ヴァイス・ブルーテ)」へと向けられた。
その間も、シノは静かに微笑んでいた。
報道が過熱しようと、SNSが騒がしくなろうと、警察が警戒を強めようと――
それらは「人間」の営みでしかない。
レアとミナは、シノの足元に跪き、恍惚とした表情で呟く。
「すべてはシノ様の御心のままに……」
「この世界が、ようやくシノ様の存在を知ったのですね……」
シノはただ、甘く囁いた。
「さあ……次は、どんな奇跡を見せてあげましょうか?」
「わたしの愛おしい子どもたち……怖れることはないわ」
その甘美な声が響くたびに、信者たちは陶酔し、より深くシノに傾倒していく。
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