第10話 君は誰を犠牲にするか分かっているのか?
「私は、誰も犠牲にしたくないの!みんな私の大事な友達なのよ。」
彼女は思い余って、もうこれ以上は我慢できない、ここでガツンと言っておかないとという表情で彼に食って掛かった。予想していた態度だな、という表情で
「ほお~。それは、それは・・・流石に聖女様だね、君は。では、ナイーブ・ティ王太子殿下は、君の大切な友達ではないという事だね?」
と言うと、
「か・・・彼だって、大切な友達・・・だと思っているわ。」
言葉を濁した。
"なんか、微妙に迷いがあるようだけど・・・まあいいか。"
「彼は、愛する魔王ジョア・ジョウ陛下と離婚させられ、彼女が別の男ヘル・ハマ大公殿下と結婚して、これから初夜を迎える時に友人として祝福することになり、ヒスタ・ミン殿に頭を下げて、王太子の座を降りて、せめて辺境の領主として余生を過ごさせてもらえることを期待して、彼の裁きを受けるわけだけど、それで彼は幸福なのかい?愛する女を他の男に寝取られ、地位を失い、辺境に追放になる・・・ぼくには、実に不幸だとしか思えないね。それを彼に強要しようと思っているのは、僕は君が彼をひどく嫌っているとしか思えないがね。」
「そ、そんなこと・・・言っていないわ・・・。」
"言っていないけど、言っているんだよ。"
半べそをかきかけている聖女サイナとあきれ顔のマクロ・ファジが、対峙しているように座っているのは、2人きりになって、あてがわれた寝室の中で、不可知魔法を周囲に張ってからのことだった。
「2人とも立派な人だし、ジョウだって本当は彼のことを・・・ナイーブだって彼女が本当に好きな男性と結ばれることを喜ぶはずだし・・・。王太子なんかより、のんびりとした生活があっている・・・。」
「愛する女性を失い、一人寂しく辺境で暮らすのが幸せかね?それが、ヘルやミンではダメなのかい?」
「そんなのひどすぎるわ。可哀そうよ。」
「ナイーブ殿下ならいいのかい?」
「・・・。」
「それに、ジョオ陛下がヘルの方がいいと言うのは、どういう理由なんだ?ナイーブ殿下と今ラブラブ中に見えるけど?それは気の迷いで、本当は、真の愛はあれではない、とでも言うのかい?陛下が望み、殿下が納得するのであれば仕方がないが、そうでなければ、私の方針で進む。君はそれに従ってもらう。」
「・・・。」
「まあ、心配に及ばないよ、多分。」
「え?」
「君が思っているとおりに、いい奴らなら、2人を祝福して、かつ和解と謝罪を申し入れてくれるさ。」
「・・・。」
絶対彼らはそんなことはしない、と彼女は思った。彼もあり得ないと思っていた。
翌日、ナイーブ・ティ王太子殿下とジョア・ジョウ女魔王陛下は、自分達に集う家臣達を前にして、臨席する聖女サイナ・カイナとデビド王国王太子マクロ・ファジ
の上で、
「聖女サイナ・カイナ様は我らに加護を与えるが、敵対する者達への加護を与えないことを宣言された。デビド王国王太子マクロ・ファジ殿下は、デビド王国は我らを全面的に支援することを宣言され、アトピ国魔王アイジ・ダイジィ陛下が我らの支持を約束されたとおっしゃられた。」
と宣言した。
彼らの家臣達の中には、身内がハア大公派やミン宰相派に属し、かつ連絡を取り合っている者達が少なからずいた。どちらが勝っても、一族の存続を保障する、互いに寛大な措置を要請し合うためである。だから、ここで宣言された内容は、それだけで各地に広がった。積極的に、各地に伝える使者も送ったが。
それだけで、ハアとミンの下に集まった勢力はかなり減少した。サイナが与える加護を期待して、ハアとミンの下に集まっていた者達が多かったからだ。ナイーブとジョアよりも、自分を選ぶと彼らは確信を持っていた。それ故に、周囲もそう信ずる傾向が強かったからだ。また、そういう印象を受けてもいた。
そして、実際サイナもそのつもりだった。争いが続くなら、ナイーブが争いを止めなければ、彼には加護を与えないつもりだった。
それで彼が没落してもしかたがない、と考えていた。小さな領地を与えて、そこでささやかな幸福を捜させればいい、と考えていた。"それが、どうして悪いのよ・・・。殺されるわけではないし・・・かえって、そのような生活の方が幸せじゃない?"
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