ノスタルジー

第17話

式が終わり、卒業証書を貰い、大教室を出た。

すると、同期の友人たちが校舎を出た所で待っていた。


学内の喫茶店でお茶を飲んだ。

博士号を取得した生駒も一緒だった。

その後、写真も撮った。


彼らと一緒にキャンパスを出ようと正門に向かった。

雪は積もりこそしないが、まだ止まない。


傘を差して、学内のメインストリートを歩いていた。

丁度夕暮れ時だった。

日はほとんど暮れかけて、周りは薄暗かった。

路沿いの木々を夕日が赤く染め、その様子がとても奇麗だった。

それは、いつか見た風景だった。


まだ大学に入って間もない頃だった。

その日4時限目の授業が終わり今頃の時間、この道を通って学内の図書館に向った。

目の前に、かつてこのキャンパスで頑張っていた自分の姿が浮かんだ。

懐かしい、大学の勉強にあれほどまで夢中になっていたあの頃。


そのとき、私は深く感動した。

涙が出そうだった。

私がかつていたキャンパスはこんなに美しかった。

今まではそれに気付く余裕すら無かったのだろう。

小さな幸せに気付けることが、本当の幸せなのかもしれない。

その小さな幸せを抱き締めるような気持ちで大切にすることが、きっとやがては大きな幸せに繋がるのだろう。


そして思った。

この大学に入ってきて良かった。

卒業できて本当に良かった。

私は10年かかってやっと卒業できた。


同期のみんなは既に社会人として、何年もキャリアを積んでいるが。

既に相当差を付けられている。


でも、私は自分を誉めたい。

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