オープンソース
第18話
その後、大学の正門から出て、戸島の家へ向った。
その頃、両親は新幹線で先に帰っていた。
戸島は既に結婚して、子供がいた。
大学の前は普通の住宅街になっている。
その中に戸島のマイホームがあった。
彼は今もこの大学が好きなのだろう。
大学の近くの家を選んで住んでいるのだから。
しばらくして、来客がやってきた。
なんと以前の彼女、優里だった。
なんと彼女は4月から助手として、実学院大学の四国経営情報学部に勤めることが決まっていると聞いた。
私は四国経営情報学部で講義を受けていた。
そのとき、人事管理を教えていた教授が今年で定年を迎えると聞いたことがあった。
その後任だった。
何たることか。
彼女は地理的には私の住んでいる所のすぐそばにやってきた。
なのに、どうしても手の届かない存在になってしまった。
部屋にある棚に入試を受ける前にもらった実学院大学のパンフレットが保管されているのが目に付いた。
それを引き出して、みんなでめくって見た。
今見ても何かわくわくするものを感じた。
私もまた今でもあの大学が好きだ。
そして、当時の記憶がまた一つ蘇った。
私が戸島と知り合ったのは、優里と出会うより少し前の頃だった。
彼はいつも大学のパソコン室にいた。
私がレポートを書いたり、インターネットで調べ物をしていた、その隣によく居た。
だが戸島はそこで大学の勉強をしていたことは無かった。
彼がパソコンでいつも開いていたのは、コンピュータープログラミングのソフトだった。
自分たちの学科とは関係がないプログラミングに夢中だった。
彼は色んな本やホームページを見ながら、クリップボードに挟んだ紙に、流れ図やプログラムを作るためのメモを書いていることも多かった。
あとはクリップボードの紙を見ながら、ひたすらプログラムのソースコードを書いていた。
クリップボードの紙には、新しいプログラムのアイデアがびっしり書かれていた。
彼のアパートにも何度か行った。
彼は普通の人が絶対に使わないようなパソコンを使っていて、驚かされた。
ただ部屋にはどこにでもあるようなデスクトップパソコンが置かれていたが。
しかし、その中身が他と大きく異なっていた。
見たこともないような不思議な画面を開いていた。
普通の人が使わないような特殊なソフトを、インターネットからダウンロードして使っていた。
私もその操作をやってみたことがあったが、全く使うことが出来なかった。
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