セピア色の夢
第11話
卒業式の日。
その日の天気は入学式の日と同じ雪だった。
午後1時から卒業式があった。
その前に、学食へ向った。
食堂は、父兄も多くごった返していた。
最初、オープンキャンパスで来たときと同じようにわかめうどんを頼んだ。
始めてここへ来た時のことを思い出した。
始めて来たのは高校3年の10月。
オープンキャンパスの時だった。
私が実学院大学に興味を持ったのは、もう高校3年の夏休みだった。
大学案内の本で見つけた。
それまでは四国の大学のどこかに入る予定だった。
当時の私は、実学院に入れるような成績ではなかった。
両親を何とか説得し、オープンキャンパスに来た。
そして、志望校を実学院大学に決めた。
この大学に入りたいと思ったのは、実学院に入れば学問が面白くなると思ったから。
学科を社会心理学科に決めたのは、一番面白そうだったから。
ジャーナリストに成りたかった私は、何かを学ぶことの面白さも発信していきたいと思った。
かなり難しいが、何としても実学院に入りたいと思った。
今思えば高校まで勉強は、義務感でやっていた。
それで集中できないから、やってもやっても成果が出なかった。
目標が決まると少しは集中できるようになった。
焦点を実学院の受験対策に絞り、必死に受験勉強をして合格した。
活気がある実学院の雰囲気が好きだった。
キャンパスは広いが建物は高層のものが多い。
半導体や微生物から宇宙、化石からロボットや人工知能まで。
いろんな研究がされていて、これまでに無かったものが何か産まれそうな気がする。
それに、オリンピックに出る人や医者になる人、ベンチャー起業家や研究者に成りたい人。
色んな人が集まっていた。
このキャンパスが未来に繋がっている気がした。
ここから見ると、校舎が山の斜面に建っているのがよく分かる。
山の麓から上へ向う通りがこのキャンパスのメインストリートになっている。
始めてこの通りを歩いたとき、その通りが自分の夢見る世界へ通じているようにすら感じた。
ふとまた思い出した。
当初の希望を果たせなかった無念な思いを。
自分が結局夢破れて地元に帰る羽目になったのだという思いを。
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