第4章
**第4章:八万神への挑戦と勝利**
「八万神、全てを滅ぼす」
その言葉は、宣戦布告というよりも、むしろ呪詛に近かった。俺を取り囲む神々の数は、ざっと見渡すだけでも百は下らない。それぞれが異なる武具を携え、異形の鎧を纏い、あるいは神獣の姿をとり、あるいは自然現象そのものと化している。まさしく、神々の軍勢。神話の挿絵が現実になったような光景だが、滑稽なことに、その全てが俺一人を標的にしているのだ。
「ほう、滅ぼすと? 我々全てを? たった一人で?」
神々の中から、ひときわ豪奢な甲冑を纏った神が、嘲笑を浮かべながら進み出る。その顔は獅子に似て、頭からは黄金の角が天を突いている。
「大層な自信だな、鬼神よ。しかし、所詮は人間が成り上がった紛い物。神の真なる力を思い知るがいい」
獅子面の神が右手を掲げると、周囲の空間が歪み、無数の光の刃が俺に向かって降り注ぐ。…神々の先制攻撃。なるほど、神も喧嘩の仕方は知っているらしい。
「つまらん」
俺は、光の刃を素手で掴み、握り潰す。光の刃は、まるでガラス細工のように砕け散り、光の粒子となって消えた。…神の力? 笑わせる。
「次は、俺の番だ」
俺は、地面を蹴り、神々の群れに突っ込んだ。そして、最初に目に付いた神の首を掴み、引き千切る。…神の首は、まるで熟れすぎた果実のように、簡単に千切れた。赤い血が噴き出し、周囲に飛び散る。…美しい。まるで、花火のようだ。
「何をする!?」
「やめろ!」
神々が、動揺した声を上げる。…当然だ。仲間が、いとも簡単に殺されたのだから。
「安心しろ。すぐに、お前たちも同じ目に遭わせてやる」
俺は、そう言うと、次々と神々を殺戮していく。ある神は、雷を操り、俺を焼き尽くそうとした。だが、俺は、雷を素手で掴み、握り潰した。ある神は、風を操り、俺を吹き飛ばそうとした。だが、俺は、風を切り裂き、その神の体を真っ二つにした。ある神は、水を操り、俺を溺れさせようとした。だが、俺は、水を飲み干し、その神の首をへし折った。
神々の攻撃は、多彩で、強力だった。だが、俺には、全く通用しない。俺は、まるで、神々を狩るための獣のようだった。神々の血で、俺の体は赤く染まっていく。…ああ、実に気持ちがいい。
「貴様、化け物め!」
「やめろ、来るな!」
神々は、恐怖に染まった声を上げる。…ああ、実に愉快だ。神が、人間ごときに怯えている。
「化け物? 違うな。俺は、鬼神だ」
俺は、そう言うと、残りの神々を一掃した。…神々の死体は、まるで、ゴミのように散らばっている。
「これで、終わりか?」
俺は、あたりを見回した。…もう、誰もいない。俺は、八万神全てを滅ぼしたのだ。
「……」
だが、俺の心は、満たされなかった。…虚しい。何もかも、虚しい。
「何のために、戦った?」
俺は、自分自身に問いかけた。…だが、答えは出ない。
「何のために、生きる?」
俺は、再び問いかけた。…だが、答えは出ない。
「……」
俺は、空を見上げた。…そこには、何もなかった。
(神々を滅ぼした男は、何を思うのか? 彼は、何を得て、何を失ったのか? そして、この物語は、どこへ向かうのだろうか?)
神々を皆殺しにした男は、荒野に佇む。彼の手は血まみれで、体は傷だらけだ。しかし、痛みは感じない。心は空っぽで、何も感じない。ただ、風の音だけが、虚しく響き渡る。
男は力なく笑う。
「なあ、神様。これで満足か?俺は全てを壊したぞ。お前らの望み通り、何もかも」
返事はない。当然だ。神は死んだ。男が殺したのだ。
「はは、滑稽だな。復讐したところで、何も変わらない。俺はただ、破壊しただけだ。何も生み出さない。何も救わない。ただ、壊すだけ…」
男はよろめきながら歩き出す。どこへ行くのか、自分でもわからない。ただ、歩くことしかできない。歩いて、歩いて、歩き続ける。
その時、男の耳に、声が聞こえた。
「…憎い…」
「…許さない…」
「…殺してやる…」
無数の声。男を呪う声。男を憎む声。男を殺そうとする声。
男は立ち止まり、周囲を見回す。だが、誰もいない。声は、男の心の中から聞こえてくる。
「…そうか、お前らか」
男は、ようやく理解した。これは、自分が殺した者たちの怨嗟の声。
男は笑う。
「そうさ、俺を殺せよ、待ってるぞ」
男は、そう呟き、再び歩き出した。果てしない荒野を、ただ一人。
(彼は本当に狂っているのだろうか? それとも、これが真理なのだろうか? 神仏は、本当に存在しないのだろうか? 存在したとして、何の意味があるのだろうか? この物語は、あなたに何を問いかけるのだろうか?)
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