第4話 フタは開かれた
尚真王が、
しばらくうつ向いていた尚真王の顔に、みるみるうちに赤みが差してゆく。伏せぎみの
櫃の中には、灰色の大きなネズミが一匹、うずくまっていた。
「一匹、ではないか……」
尚真王の肩が、大きく二三度、上下した。
「木田ぁ! おのれっ、ワシをだましておったな! 予はずっと信じておったぞ! ええい、打首じゃ!」
待っていたかのように官吏が数名、ドタドタと踏み込んでくると、一言を発する間もなく、木田大時は、引きずられるように、書院から連れ出されていった。
蓋を開けた
「わっはっは、とうとう化けの皮が剥がれたわい」
「自分のことすら、
三司官や神女らの笑いを最後に、座は、気まずい沈黙に支配された。
裏切られた。
信じ切っていた木田に、裏切られていた。
王府にいる者たちと、木田はちがっていた。腹になにかを
「友」とはこういうものをいうのかも知らぬ。
そう思っていた。
それが……。
このワシは
うかつに人を信じた己の未熟を恥じた。臣下たちのまえに自分の愚かさを
生まれたときから陰謀ばかりの黒い世であった。木田は、そこに流れる清流のようだった。
もしかすると、人の世とは、良いものかも知らぬ。
そう思わせてくれた。
しかし、それはやはり
ゆっくりと息をととのえるが、木田を
息の詰まるような静寂の中、コツコツと脇息の
「ええい! いまいましい!」
そう怒鳴った尚真王は、目の前のネズミの
櫃がひっくり返り、
国王の
と、逆さまになった櫃の中に、チイチイ、と音がする。
はて、ネズミは今、逃げたはずだが……。
不思議に思った官の一人が、にじり寄って
桃色の子ネズミが四匹、櫃の形そのままに、丸く固まっていた。
「
櫃の中で、ネズミが子を産んでいた。
皆、言葉を失い、国王もまた凍りついていた。
ごくりとひとつ息を呑んで、我にかえった国王が、悲鳴のように叫んだ。
「だ、誰か! 早く、早く馬を! 馬を出せ! 木田を、木田を、死刑をただちに
一同ただぼう然として、動こうとする者はない。
「ワシが参る!」
そう叫んで
死刑場のある
間に合うか。
阿波根は
衆人を散らし、集落を突っ切り、刑場へと至る最後の丘を駆け上がる。
「中止じゃあ! 中止じゃあ! 木田どのの刑は、中止じゃあ! 首里天加那志の勅令ぞおおお!」
「おのれらあ!」
阿波根は、怒りにまかせ、首討役ら三人を、その場でたたき切った。
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