第2話 どんどん良くなる恋

「夢なんでしょ? だいじょうぶだよ」


 いつもと違い、ひろあはわらって返事ができた。


「でもね、闇にきらめく白刃。逃げ惑う人々。黄色いテープに警察の鑑識。怖かったな」

「だ、だ、だいじょうぶだよ」


「実は先週は四十回見たから全部で四十九回だ。数も不吉」


 だいじょうぶだ。怖くない、怖くない。

「それに、なんだか正夢になりそうな気もするんだよね」


「こ、心を強く持てばだいじょうぶ」


 じっとひろあの様子をうかがっていた貴人は、急にふふふとわらい出した。


「どうしたの? 貴ちゃん」


「強くなったね、ひろあ」


「初めて会ったときとは違うよ。だんだん変わっていくんだね。ありがとう、ひろあ」


 ありがとう?


「俺、変わっていくひろあをいちいち好きになるんだ。つき合いはじめてから時間が経つと、関係がわるくなることもあるだろ? 俺の場合は逆なんだ。だから、ありがとう」


 ひろあは頬が熱くなった。


「それから、夢も」

「夢?」


「五十回近く同じ夢を見たっていったよね。俺はそれくらいたくさん、ひろあの夢を見るんだよ。ひろあは何回俺の夢を見た?」


 ……。


 たまには見ることもある。でも、貴ちゃんほどじゃない。最近だと、三回くらいだろうか。


 ひろあはちらちら貴人を見た。結局、貴ちゃんはすごくすごくあたし好きでいてくれるんだ。

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