第4話 あの葉が落ちたら

「……私、病気なの。」

「えぇ知ってますよ。何せご入院されてますし。」

「もう、長くないんだって。」

「それも知ってます。大変なご病気らしいですね。」

「……あの葉。」

「ん?何ですって?」

「壁に這ってるツタの葉、見える?」

「あぁあれですか、赤っぽいやつ。」

「そう。……枯れかけのあの葉。ちょっと前までは他にもいっぱい葉が茂ってたのにいつの間にかあれが最後の1枚になってしまったわ。」

「そうですか、それはけったいな話ですね。」

「……あれが落ちたら私はきっと死ぬ。」

「ほう、と言いますと。」

「もう半分枯れかけてるし、あと半月もしないうちに落ちてしまうわ。……まるで私みたい。」

「はぁー、またおかしなことを言いますね。」

「……あの葉が落ちたら、私は死ぬの。」

「……先ほどから何べんも言ってますが、あなたが死ぬのはあの葉が落ちたらじゃありません、今日です。」

「……いや違うわ、絶対にあの葉が落ちたら私は死ぬのよ。」

「違います。……我々寿命管理局が来ているということはそういうことです。まぁ現実を見るのは辛いことかもしれませんが……。」

「そんな訳無いじゃない、今日死ぬだなんて。有り得ないにも程がある。」

「はぁ……、いい加減にしてください。もともとご病気の身でしょ?あなたはもう身辺整理も済んでいると聞いています。なぜそこまで生にこだわるんです?」

「……私がこだわってるのは生きる事じゃ無いわ。」

「ほう、では何に。」

「……あの葉よ。最期ぐらいロマンチックな人間で居たいと思って何が悪いの?」

「ロマンチック、ですか……。ふふ、そんなこと言ってあなた、何よりも生きることに執着してらっしゃる。」

「何が言いたいの?」

「その話最終的に、葉は枯れ落ちることなく病気が治るんですよ。――けどあなたはもう駄目です。これでも待ってあげた方ですからね?」

「……はぁ、夢の無い時代になったものね。」

「あ、あの葉の寿命も調整して、あなたの死に目に落としますよ。少しはロマンチックでしょう?」

「……それこそ夢が無いって話よ。まぁ良いわ。……好きにして。」

「そうさせていただきます。――では、良い来世を。」

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