【15話】魔法学園でのフィオ
フィオの通う魔法学園――ルドルフ魔法学園に講師として勤務するようになってから、一か月が経った。
エレインは今、フィオのクラスの副担任をしている。
手続きの方は、すべてリファルトの方で済ませてくれた。
詳細は聞いていないが、デルドロア公爵家の名をもってすれば造作もないことだったらしい。
流石は大きな力を持つ公爵家。
デルドロアの名は伊達ではないということだろう。
(よし、今日も頑張りましょう!)
大きく息を吸ったエレインは、胸を張って校門をくぐる。
そうして敷地内に入るったところで、後ろから小走りで近づいてきた女性にポンと肩を叩かれた。
「おはよう!」
爽やかな笑顔で快活な挨拶をしてきた彼女は、グレイシアという。
オレンジ色の髪をした十八歳で、とても元気で明るい女性だ。
ルドルフ魔法学園の講師で、フィオが在籍するクラスの担任をしている。
「今日も色々頼むわね!」
「うん。サポートは任せて」
副担任であるエレインの仕事は、ざっくり言ってしまえば担任であるグレイシアの補佐をすること。
エレインとグレイシアの関係は、いうなれば部下と上司だ。
しかしそこには、堅苦しい上下関係などはいっさいない。
同い年ということもあってか、グレイシアとは友達同士のような関係を築けている。
そのため、エレインは毎日楽しく仕事ができている。
彼女と一緒に仕事をすることができたのは、本当に幸運だったと思う。
受け持っているクラスの教室へ、グレイシアと並んで入る。
「「「おはようございます!!」」」
子供たちの元気いっぱいな朝の挨拶が、一斉に聞こえてきた。
汚れを知らない無邪気な声には、いつもながらに癒される。
その中で最も元気な声を上げたのは、教室の真ん中付近にいる子ども――フィオだった。
(今日
フィオの周囲には、男女関係なく多くのクラスメイトが集まっている。
みんながみんな、フィオに引き寄せられていたのだ。
それは、いつも通りの光景だった。
クラスメイトに嫌われることなく、楽しい学園生活を送れるのか――エレインとリファルトは、そんなことを心配していた。
しかしいざ学園が始まってみれば、それは杞憂に終わった。
一か月が経った今、フィオはクラス一の人気者になっていたのだ。
闇属性適性者であるフィオのことを、初めのうちは皆怖がっていた。
中には、心無い言葉を浴びせてくるような子もいた。
しかし、フィオはまったく気にしていなかった。
それどころか悪口を言う子に対して、積極的に話しかけにいっていたのだ。
メンタルの強さとアグレッシブな行動力によって、フィオはクラスメイト全員とあっという間に打ち解けていった。
エレインにはできなかったことを、成し遂げてみせたのだ。
きっとフィオは、将来大物になるだろう。
どんな素敵な女性に成長していくのか、今から本当に楽しみだ。
******
その日の夜。
「今日の報告は以上となります」
リファルトの部屋を訪れたエレインは、学園でのフィオの様子を報告した。
ネガティブな内容などいっさいない。
元気に過ごしているという内容だった。
そんな報告を聞いたリファルトは、口角を小さく上げる。
「学園に通い出して一か月。問題はないようだな。……どうやら心配し過ぎていたようだ」
「はい。フィオは毎日いきいきしていますよ。闇属性適性者だというのに、本当にすごい子です」
「良かった。これで安心して、遠方視察に行くことができる」
「遠方視察? どこか、遠くの地に行かれるのですか?」
「君にはまだ伝えていなかったが、仕事の関係で遠方の地に一か月ほど滞在しなくてはならなくなってな。出立は明日だ。その間、俺は不在となる」
「……一か月、ですか」
微かな呟きが上がる。
リファルトと一か月会えなくなる――そう考えると、なんだかブルーになってしまった。
「迷惑をかけてすまないな」
「迷惑なんて滅相もありません! 行ってらっしゃいませ!」
慌てて出した声は、いつもより大きめだった。
落ち込んでいる気持ちを悟られたくなくて、無意識に大きな声が出てしまったのだ。
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