第2話『フロウライト誕生秘話?』

EPISODE:フェデリコ

 鉱石人間フロウライトは、ラクシア世界全体で見ても、極めて特異な種族と言われている。

 全身が透明な鉱石によって構成されていて、呼吸も食事も水分も必要としない……のだが、睡眠は必要とするし、何故か声を発することは可能だという。

 このような不可思議な生態から、どちらかというと人族ではなく魔法生物なのではないのか? と考えられたりすることもあるようだ。


 フロウライトはその出生……というか、「発生」すら謎に包まれている。

 何らかの鉱石が、地中で何らかの力を受けて知識が蓄えられ、何かの拍子で地上に現れて、自我が生まれて「フロウライト」となる……という。

 何しろフロウライトは滅多に見かけることが無く、フロウライト自身も地上に現れる前のことを忘れてしまうそうなので、未だ解明されるには至っていないのだ。




 フェデリコは地上に「出土」してからしばらくの間、自我があまり目覚めておらず、ぼんやりとその場に佇んでいた。

 その時、偶然通りかかった森羅導師ドルイドの老婆に拾われ、彼女の家で過ごすこととなったのであった。

 ……占い水晶の代わりとして。


「なんでやねん!!!!!!!!!!」


 机から顔を出すだけの形となっていた生首水晶……もとい、フェデリコは、ある日唐突に自我が目覚めた。


「どういう状況!? いくら僕が水晶みたいや言うても「わー生首に占ってもらお」てならへんやろ!? 不気味やで!? アカン! 興奮して光るの止められへん!!」


 フェデリコは生まれて初めて感情が爆発し、怒涛の勢いで喋り出した。その感情に合わせ、頭部は七色に発光を繰り返す。

 その様子を見た老婆は一言「パーティのようじゃ」と呟いた。


「誰がディスコボールやねん!!!!! もうええわ!!!!!」



* * *



「──てな感じで、拾ってくれた森羅導師ドルイドのばあちゃんちを飛び出して来たってわけなんですわ」


 闘技場での戦いに勝利し、フェデリコたちが『魔女の家』を拠点に活動することが決まった、その日の夜こと。

 フェデリコ、ワズン、メルヴィンの男三人は同じ部屋で寝泊まりすることになったのだが……お喋りなフェデリコは、消灯時間になっても頭部を光らせてペラペラと喋り続けていたせいで、怒ったメルヴィンに部屋から追い出されてしまったのであった。


 そんな風に廊下に放り出されていたフェデリコを見かねて、家主であるコハクは彼を居間へと連れて行った。まだまだ喋り足りなかったフェデリコはこれ幸いにと、コハクと二人でお喋りを再開する。

 今はフェデリコがどのようにして旅立ち、放浪者ヴァグランツとなったか、という話をしていた。


「それじゃあ、そのおばあ様とは喧嘩別れをしちゃったのかしら?」


「いや、ちゃいます。一旦ピューって飛び出しはしたんやけどね、僕そのとき全裸だったんですわ。流石にそれで街中出たらアカンなと思いまして。とんぼ返りしてばあちゃんに何か着るもんくれへんか~!? て頼んだんですわ」


「あらあら、ずいぶん短い家出ねぇ」


「そしたらばあちゃん、親切に僕の服を仕立ててくれましてね。何や杖とかもくれて、ついでに森羅魔法とかも教えてくれたりもして」


「まぁ。じゃあ、あなたは素敵なおばあ様に拾われたのね」


「僕もそう思てます。あー、いや、落ちてるフロウライト拾って、せや! 水晶玉にしたろ~! ってセンスは今でもどうかっちゅー気はしますけど……」


 その後もフェデリコの話は、本人によって面白可笑しく脚色されながら続いた。

 曰く、フェデリコ自身は真面目に働こうと思っているのだが、この奇抜な見た目とどうにも胡散臭く思われてしまう性格が相まって、あまり信用されずに苦労をしてきたのだとか。


「希少種族の生まれって、中々大変ねぇ……」


「ナハハ! でも僕、この身体が結構オモロいと思ってますんで、フロウライトに生まれて良かったな~と思ってますねん」


「ふふ。フェデちゃんは明るくて、前向きで良いわね」


「そらもう! 何色にでも光れまっせ!」




* * *




「失礼する。フェデリコは……」


 深夜。

 ワズンが居間を訪れると、喋り疲れたフェデリコは机に突っ伏した状態で寝息を立てていた。


「迎えに来てくれたのかしら? ありがとうね、ワズちゃん」


「ああ。静かになったのならメルヴィンも怒らないだろうし、俺が部屋に連れて戻ろう」


「うふふ。フェデちゃん、今日はとっても楽しかったみたいで、全然喋り足りなかったみたいだったの。怒らないであげてね?」


「いや……。俺は別に、怒ってなどいない」


 そう言いながらワズンは、フェデリコを起こさないようそっと背中に担いだ。


「あなたは……眠れないのか?」


「心配してくれてありがとう。メリアは睡眠が必要ない種族なのよ~」


「そうだったのか。勉強になる」


「おやすみなさい、二人とも」


「ああ、おやすみ」


 寝室へと戻っていく二人を見送って、コハクは静かに笑みをこぼす。


「この出会いが、あなたたちにとって善きものでありますように……」




────

 挿絵 https://kakuyomu.jp/users/papiemon/news/16818622171272200879

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