第16話 攻城戦に参加します!!
「よーっし集まったなぁ!今日は城取るぞ!!」
「おおーーー!!」
ギルドアジト内にある転送ゲート前ホールで、ゲートを背にした男爵さんが激を飛ばし、ホールに集まったギルドメンバー達は用意された軽食を口にしながら気勢を上げる。
『クロニクル・ワールド』のファンタジー世界はステータスやスキルが無かったりとあまりゲーム的な要素が無い世界ではあるんだけど、この攻城戦に関してはステータスやスキルは無いもののゲーム的な要素が普段より盛り込まれていて、男爵さんの後ろにある『転送ゲート』など攻城戦の開催時間のみ各地にある任意の戦場前にワープすることができる装置があったり、他にもギルド設備として『ギルドコンソール』があって転送ゲート前ホールの『空間投影ディスプレイ』にはギルドコンソールの画面が表示されている。
あと通常時と大きく違うところでは、死んだ場合のアバターロストやパートナーロストが無く、死んだらすぐにアジト内にある通称『死に戻りポイント』で復活したり、通常カットされる『本体がそれでショック死するような痛みや苦しみ』のカット範囲が増していて『攻撃された!』と言う感覚は残るものの『痛みや苦しみ』はほぼほぼ全カットされたりするらしい。
今日集まったギルドメンバーは19人、在籍人数が27人なので大体7割くらいの参加率で、打ち合わせで聞いてた参加率が大体4割程度で10人くらい集まる感じってことだったから、ほぼ倍の人数が集まったことになるのかな?
攻城戦に顔を出すだけでいいと言われたわたしの役割が、この『参加率の増加』。
さっきの打ち合わせ後に告知された『イズミちゃんとクロエちゃんがアジトで応援!!』の触れ込みがメッセージアプリのギルドチャンネルで話題となって、いつもより格段に参加率が上がったみたい。
さらにダメ押しで軽くつまめる料理をクロエに作ってもらって転送ゲート前ホールにビュッフェ形式で置くようにして、わたしも昔のあるアニメコラボで出たと言う、濃紺のサイハイソックスと前開きスカートとアームカバーとセットの、背中が開きバストを強調するような濃紺のレオタードと言う、そのアニメで出ていた架空のレストランのウェイトレス服を着て配膳している。
攻城戦開始5分前、ビュッフェを置いた側の反対側の壁付近に立っている弥生さんの近くに、黒い髪を短いサイドテールにしたクロエよりも少し背の低い忍者服の女の子が突然現れて、忍者服の女の子が片膝をついて弥生さんを見上げた後、弥生さんは軽く頷いて男爵さんの方に向きを変える。
「男爵はん、シノブからの報告やけど、アクロ17番砦は『天空の系譜』て言う20人規模のギルドのようや。ちなみに砦前はガラガラ言う報告がおましたで。」
弥生さんが忍者服の女の子……シノブさんから受けた報告を男爵さんが聞こえるくらいの声量で伝えた。
「おお!さすがだな。よしっ!今日はまず17番砦から攻めるぞ!!」
「おおーーーーー!!」
打ち合わせで聞いた弥生さんの役割は、攻城戦後の消耗品清算などの会計のほかに、パートナータイプ『忍』のシノブさんに情報収集させて、アジトで待機しながらシノブさんの報告を聞いて攻める先を決めたりする重要なポジションとのこと。
ギルドマスターの男爵さんもサブマスターのショウさんも戦場に出てしまうので、No.3的な立場にいる弥生さんが全体の指揮統制を担っているって感じかな。
ちなみに男爵さんは『
本人の戦闘力もさることながら、一番の強みは50人にも及ぼうかと言うガチャパートナー達による『一人物量戦術』にあって、一度にそれだけの人数を参加させることはできないけど1ユニットあたり4人の『パートナーユニット』を12ユニット組んで、相手との相性や状況によって『ユニットチェンジ』しながら戦う。
相手のパートナーを男爵さんのパートナーで抑えてしまえば、あとは本人同士の戦いで男爵さんが負けることはあまり無い。
戦場での指揮はショウさん。
ショウさん自身は戦えないし一見するとパートナーも一緒にいるように見えないけど、パートナータイプ『暗殺者』の執事アルフォンスさんと、同じく『暗殺者』のメイド長セシリアさんに陰ながら守られていて、相手からしたら『狙おうと思った瞬間、いつの間にか死に戻っていた。何を言ってるのかわからねーと思うが……』状態になるらしい。
『パートナーユニット』の残り2枠には、普段はお屋敷でメイドをやってる『忍』のリリスさん、それにギルドパートナーの『ビット』を入れている。
「男爵はん、そろそろ時間どすえ?」
「そうか!よしじゃあいくか!!皆っ!ワシに続けぇぇぇぇぇぇぇ!!」
「おおーーーーー!!」
男爵さんを先頭にギルドメンバーのみんなが次々と転送ゲートに飛び込んでいき、わたしとクロエと弥生さんの三人がホールに残された。
「さて、しばらく暇になるやろうし、クロエはんの作ったお料理でも頂きまひょか。」
弥生さんは取り皿に盛った軽食をつまみながら、空間投影ディスプレイを眺める。
「それにしても便利やなぁ。今回初めてショウはんに『ビット』使うてもろうたけど、これは、ほんま助かりますなぁ。」
わたしも弥生さんにつられて空間投影ディスプレイに目を向けると、ディスプレイにはショウさんの『ビット』が見聞きしている映像がリアルタイムに表示されている。
本来なら攻城戦参加人数20人程度のギルドでは使われなくて、もっと指揮統制のしっかりした大規模なギルドで運用するものらしいけど、広報のわたしが加入したことでギルドメンバーも増えると踏んで今後の練習のためにも使っていくってことになったわけで。
小規模なギルドで使われないのは、アジトに指揮統制役を残しておく余力も全く戦力にならない『ビット』でパートナーユニット枠1つ潰す余裕もないからと言うのが主な理由とのこと。
実際、先週までは弥生さんが『忍』の情報収集を駆使して戦場での指揮を担当していて、ショウさんは『暗殺者』染めユニット構成で囮役を買っていたらしい。
転送ゲートからショウさんや男爵さんが出たところは目標とする砦の少し手前にある林の中。
林を突き進んでいくと開かれた城門があって、みんな中に入っていく。
「あれ?城門開いてる?」
「そないな仕組みどすえ。二時間しかあらしまへんさかい、城門での攻防から始めたら防衛側が圧倒的に有利になりますさかいな。」
なんかこう納得いったようないかないような……
と、首を捻ってるとディスプレイの中ではみんなで誰もいない砦の外郭を進んでいく。
「誰もいませんね。」
「一層目の外郭は広おすさかい、少人数のギルドやと防衛には向きまへんのや。二層目の城内に入ってすぐあたりで、防衛線を敷いてはると思いますえ。」
しばらく外郭を進行していくとやがて城内への入口前にたどり着いて、ここで一旦みんな停止。
「よーっし、ここからが本番だ!みんな準備はいいかー!?」
「おおーーーーーーーー!!」
男爵さんが腕を上げ、みんなも気勢を上げる。
「まずは『騎士』パートナーから突入してちょうだい!」
入口横に立っているショウさんが指示を出して、まずは『騎士』パートナーから城内へと突入していく。
「続いて『アーチャー』『ガンナー』突入!『騎士』の隙間から階段上の敵を狙って!!」
再びショウさんが指示を出して今度は遠距離攻撃の『アーチャー』と『ガンナー』を突入させると、薄い水色の髪のショートカットで小柄なメイド服を着たパートナーも一緒に入っていった。
「今ショウさんが城内に入れたメイドみたいなパートナーって?騎士でもアーチャーでもガンナーでもなさそうだったけど。」
「あれは……ショウはんの『忍』パートナー、リリスはんどすなぁ。前線の様子、先に突入してもろうて、ショウはんらのために探ってくれてはるんどすえ。」
メイド服で……?
と疑問に思ってると割とすぐにメイドの『忍』リリスさんが帰ってきてショウさんに何か報告をする。
「男爵!遠距離潰しのユニット出して入って!厄介なのがいるみたいなの。」
「よしわかった!」
男爵さんはふんどしを締めた腰に下げたカード入れサイズのポーチから一枚の銀色のカードを抜き取り、顔の高さでカードを持つ右手を握りしめた。
「ガウ!ケイブウルフ!ベア!シャル猫!いくぞ!!」
呼ばれた四人のパートナー達はみんな小柄な獣耳の生えた女の子で、前に南大通りで見たフリフリでもこもこなかわいい服を着て垂れた犬耳とふさふさの犬尻尾を付けた小さな女の子と、十二単っぽい衣装にとんがった狼耳とふさふさの狼尻尾を付けて和傘を差した金髪で長い髪の小さな女の子もいる。
男爵さんはパートナー達を呼び出してすぐ城内に入り、パートナー達も男爵さんに続いた。
「男爵に続いて!あたしたちも行くわよ!!」
「おおーーーーーーーー!!」
城内では先行して入った『騎士』パートナー達が階段上からの矢や弾丸を盾で防ぎながら、『アーチャー』や『ガンナー』パートナー達が階段上の敵『アーチャー』や『ガンナー』を狙っていく。
その中で、階段上の通路を大きな砲身を持つ銃火器っぽいナニカを抱えて駆け回る小さな女の子の姿が見えた。
女の子はディスプレイの中だからよく掴めないけどたぶん130cmくらい。
なんだけど胸のあたりのボリュームが小さい体に似合わず結構主張が激しい。
ブロンドの髪を大きな青いリボンでポニーテールにして、少し薄めの青色を基調として縁や袖、襟を白いレースで飾った丈の長いふんわりスカートの長袖ワンピースを着て水色のパンプスと白のオーバーニーソックスを履いてる。
どこかのお嬢様風な感じのかわいい女の子なんだけど、持ってる武器がゴツすぎる。
「んーしょ!……えーい!ふっとんじゃえーーー!!」
女の子が飛び上がって階段上の手すりより上の高さから大きな砲身に見合う大きな弾丸を撃ち下ろし地面で炸裂、撃った反動で軽そうな身体が滞空したところでさらに二発撃ち込んできた。
あとの二発は安定しない空中からの発射だからか狙いが大いに外れて壁に当たるものの、爆風と大小様々な欠片が『
「あれ何?」
「ソウルシリーズのガチャパートナー『クリス・ソウル』が装備化した『機銃砲』と言うものですよご主人様。」
誰に問うでもなく呟いたわたしの問いにクロエが答えてくれた。
装備化と言うのはソウルシリーズのガチャパートナーの特徴で、基本は人型なんだけど武器に変身できると言うものらしい。
「装備化して使われる方はあまりいらっしゃらないのですが、彼女のように扱えるのであれば装備化して使った方が思った時に撃てますし安定しますね。」
身体が小っちゃくて軽くて『機銃砲』に振り回されてる感もあるけど……
「射貫く!!」
と、今度は階段上から弓で強烈な一矢を放ってくる女性の姿がディスプレイに映し出される。
身長は155㎝程度、薄い桃色のストレートロングヘアーを細い三つ編みハーフアップにしてリボン付きカチューシャを着けて、白いブラウスにライトブラウンのベストと胸元には赤いリボンに白い線のチェックが入ったダークグレーのミニスカート、くるぶしまでのソックスに茶色の革靴と言う女子高生スタイルで、茶色の矢筒を背負って両端に反りが入った白いリカーブボウを構えている。
彼女が放つ矢は他の『アーチャー』パートナーよりも、もしかしたら『ガンナー』パートナーよりも強く深く『騎士』パートナーが構える盾を穿つ威力を持っていた。
デタラメに爆風と破片を振り撒く女の子と、正確かつ強力な一撃を放つ女子高生……
ショウさんが言った通りかなーり厄介な相手だね。
「弥生さん、こういう時ってどうするんですか?」
「基本は『騎士』で守りつつ『アーチャー』と『ガンナー』で遠距離攻撃の撃ち合いどす。あの女の子と女子高生がおったさかい言うて変わらしまへん。」
そこで一度話を区切り、扇子を口元に当てて「ふふふっ」と笑う。
「そやけど『
弥生さん推薦な男爵さんはと言うと、城内に入ってすぐあたりのところで両腕を組んで仁王立ちしている。
「よーっし、上にいる弓とか銃を撃ってるやつらな?」
男爵さんが階段上にいる相手ギルドのメンバーやパートナーを指さすと、男爵さんの眼下で男爵さんの顔を見上げる四人の獣耳パートナー達がコクコクと頷いた。
「いい子だ……行け!頼んだぞ!!」
階段上にいる女の子が放つ『機銃砲』の爆風に気を付けながら、タイミングを見計らって男爵さんが号令を下す。
矢と銃弾の雨の中を四つん這いの低姿勢になって駆け出すパートナー達。
彼女たちは猛スピードで階段を駆け上がり、弓や銃で攻撃してくる相手を鋭い爪で次々と倒していく。
「元々小さい体やのに低い姿勢で駆け抜けてくるさかい飛び道具もなかなか当たらしまへん。爆風だけは厄介どすけど。」
男爵さんのパートナーの活躍で階段上の『アーチャー』や『ガンナー』も数少なくなってきた頃……
「あっ!わたしの弓!!」
強力な矢を放ってきた女子高生の弓を奪った犬耳のパートナーは、弓を口で咥えたまま両手を床に着いて片足をあげて耳の後ろを掻き始めた。
「こらっ!返しなさーい!!」
追ってくる女子高生をかわして手すりに飛び乗り、階下にいる男爵さんめがけてジャンプ!
犬耳のパートナーを男爵さんが受け止めて、弓も男爵さんの手に渡った。
「よしよし、いい子だ。」
男爵さんが犬耳のパートナーの頭をなでてあげると、尻尾を振りながら男爵さんの顔……かぶっている紙袋に頬をすりすりし始める。
「あーーーーーー!もうっ!!これじゃ戦えないじゃない!!」
武器を失った怒りに両肩を震わせ、大きな声で叫びながら女子高生は攻め側から見て向かって左手の奥へと走っていった。
一方で『機銃砲』を持つ女の子に対するは、ライトグレーの髪を猫耳の後ろでツインテールにした薄いエメラルドグリーンのメイド服にフリルエプロンの『シャル猫』と呼ばれた猫耳のパートナー。
威嚇しながらの低姿勢でじりじりと間合いを測り飛び掛かるタイミングを見計らっていた猫耳パートナーが、しびれを切らして両手の爪を立てて『機銃砲』を持つ女の子に襲い掛かる。
女の子は即座に『機銃砲』を手放し、両手を前に突き出して構えつつ身を屈めてシャル猫の懐に飛び込み……
「わぁ!かわいいー!!シャル猫ちゃんだー!!」
と言いながらシャル猫を抱きしめて頬ずりする。
『シャル猫』は一瞬何が起こったのか理解できずに目をパチパチしていたが、やがて女の子の頭を両手で交互にポカポカと叩き出した。
……なんだかすっごくほんわかした空間ができちゃったよ。
「み、みんな!もう安全だわ!一気に駆け上がって!!」
「お……おう!!」
あのほんわか空間をどうしたらいいのかわからず迷いが生じたまま『
「男爵!シャル猫のこともあるし近接攻撃タイプのユニットを!!」
「よしわかった!」
男爵さんは再び腰に下げたカード入れから一枚の銀色のカードを抜き取り、顔の高さでカードを持つ右手を握りしめる。
「いくぞ!!フェニックス!スサノオ!カグツチ!ダブルドラゴン!」
別のパートナユニットを呼び出したことで獣耳パートナー達と入れ替わるように四人……いや五人の女性パートナーが出現した。
「あれ?なんで五人なの?」
「ダブルドラゴンは二匹でワンセットなモンスターなので、その転生ダブルドラゴンも二人でワンセットなんですよー。息の合った連携がとても強いんです。」
なんかそれちょっとズルくない?
「それにしても女性のパートナーやたら多いね。」
「男性パートナーのガチャは不人気で回されませんからどうしてもそうなってしまうと思います。シリーズ全員女性パートナーと言うのも珍しくないんですよ。」
クロエの話だと、転生モンスターシリーズは六期まであって合計で72人いるんだけど、内男性パートナーは三期に出た一人のみ……元が男性の人間型モンスターであっても女性になると言う徹底ぶり!!
他のシリーズだとちらほらとはいるけど、一期12人中男性パートナーが多かったシリーズで二人とのこと。
あ、でも現行の『英霊』シリーズと『刀剣』シリーズは『英霊』が全員女性で『刀剣』が全員イケメン男性らしい。
しかも抱き合わせ商法なのか装備化した『刀剣』パートナーを対応した『英霊』パートナーに持たせると『英霊』パートナーがめっちゃ強くなるとかで、男性パートナーでも『刀剣』シリーズは回されてるとかなんとか。
「あーーーー!シャル猫ちゃーーーん!!。」
なんて今はあまり関係ないことをクロエに聞いてたりしてる間に、ディスプレイの中では『機銃砲』の女の子が腕の中でスッと消えたシャル猫を惜しんで泣きそうな声を出していた。
「めいや!一旦戻れ交代だ!体制を整えて来い!!舞華もスペアの弓取りに行ったぞ。」
「あっ!お兄ちゃん!!シャル猫ちゃんがーーーー!!」
どうやらあの『機銃砲』の女の子は『めいや』って名前で、弓の女子高生は『舞華』って名前らしいね。
めいやが兄と呼んで駆け寄った相手は、黒髪のロングヘアーを後ろで一本に縛って径の小さい丸眼鏡をかけた割と長身で割とイケメンだけど、水色のワイシャツに白のストライプが入った紺のネクタイを締め、紺のスラックスに黒いローファーを履き、さらに白衣と言うのがなんとも残念。
ちなみに『機銃砲』はしっかりと拾ってから駆け寄ってるあたりさすがとしか言いようがないかな。
「めいちゃん、ここはあたし達に任せて休んでてよ。」
「そうそう、ようやく俺達の出番だからな。」
階段を昇り切った先、次の三層目へと続く階段から現れたのは、黒いショートヘアーの左側を短くワンサイドアップにして、黒無地のアンダーウェアと黒いスパッツの上に赤いスカーフの付いたかなり一般的な白と紺の半袖セーラー服を着て白のハイソックスにダークブラウンのローファー、両手首に黒いリストバンドと両足首には黒いアンクレットを着けた、多分クロエと同じ身長142cmくらいの女の子。
その女の子の横に身長180cm以上はあるガタイが良くて彫りの深い劇画調の濃ゆい顔、スポーツ刈りの短い黒髪に『野球ユニフォーム(練習用)』を着て野球用スパイクを履いた高校球児風なんだけど、得物はユニフォームに似合わない結構ゴツい
「おーう美鶴ちゃん時雄君、出番だか?」
まだいるの?と思いつつ、さらに階段を降りてきたのは時雄と呼ばれた高校球児よりさらに大きく2m近くはあるかと思われる巨漢で、言っちゃあ悪いけど清潔感皆無のボサボサな黒髪に黒ぶち眼鏡をかけ肉の余った丸い顔立ち。
服装は丸太のように太い脚によってピッチリとして折り目も消えた紺のスラックスをサスペンダーで留めて靴は白いスニーカー。
で、その清潔感皆無な風貌にそぐわない鍛えに鍛え上げた筋肉を上半身裸でさらけ出し、ムキムキの両腕を胸の前でクロスさせて自らの脇腹をバシンといい音を立てて叩く。
「ほほぅ……ありゃあリアルでも鍛えて肉体感覚もしっかりしてる筋肉だぜ?でなきゃあんないい音は出せねぇ。」
男爵さんは筋肉の巨漢にゆっくりと近づいてかぶった紙袋を投げ捨てて、ニィっと白い歯をみせつつサイドチェストの構え。
対する巨漢もニィっと白い歯を見せつつモスト・マスキュラーの構えで男爵さんに対抗する。
めいやがシャル猫に抱きついてポカポカ叩かれてたほんわか空間から一転して暑苦しい筋肉空間へと変貌した!!
「ワシは『ヒロ・フォン・スィックウッド』……まぁ長いからか『男爵』と呼ばれているがな。お主、名は何と言う?」
「フヒヒ、おらは
うん、長いからじゃなくてその赤フンから『ふんどし男爵』だからです。
大槌を構えた男爵さんと、ぶっとい金棒を構えた
もちろん他の両メンバーやパートナーもそれぞれ武器や盾を手に構えているけど、どうにもこうもうちょっと人が欲しいような?
『
あっ!そうだ!!
「クロエ!急いでわたしのマイルームに戻って!!」
「あっ、はいご主人様!!」
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