13・理解

 「あぁ、やっぱり。」

僕はそう思った。


スマとドロウは、あの人たちはもう、僕を諦めるつもりだったんだ。


知ってたよ。

誰も、僕を期待してなかったって。


わかってたつもりなんだけどな_。

僕にはもう「信頼」なんて無い、って。


つい顔が薄笑いを浮かべてしまう。

これだって、癖だ。

そんな僕にはそりゃあ嫌気が差すさ。

たくさんのことで迷惑をかけちゃったからな。

外側では忘れていても、奥底ではしたことを人はよく覚えてしまうから。

もっと早く、変われたら良かったのにな。


 困って、焦って、考えたほうが良いのかもしれない。

でも。そんなことは頭にない。

僕の頭に浮かぶのは、渦巻く思いと小さな怒りだけだ。


僕はここで生きるすべも、動機もエネルギーも凪いでいる。

取り敢えず近くにあった路地に入った。

硬い地面に腰掛け、息をつく。

やっぱり何も考えれない。


気持ちが暗くなるとわかっているのに、

自然とうつむいてしまう。

ああ、あの人たちを信じてたんだけどな。

けど、僕の方がいっぱい裏切ったかもね。


心がぐちゃぐちゃになる。

不思議だよ。


僕は考えを持てなかった。


そのとき、獣人の女の人に呼びかけられた。

「どうしたんですか?」

僕はハッとした。

急に呼ばれて頭が重い。

「あっ、どうも。」

「こんなところで座ってたら営業妨害で訴えられますよ?」

お茶目にその人が笑った。

腕を組んだその様子が何だか面白くて僕もつい笑ってしまう。

「最近ここに来たばっかりで!」

吹っ切れて僕もおちゃらけた。


「そうなんだ~!何してたの?」

すごく、答えづらい。

僕はほんの少し考えて言った。

「ホテルを予約されてなかったみたいでー!!」

「え、大丈夫?あ、そうだ。泊めてあげようか?」

あまりにも不用心で愕然とした。

「なんて言うんですか?」

「ハロンです」

そもそもまだ名前も聞いていなかった。

「私はマイカっていいます」


マイカさんに根掘り葉掘り聞かれて疲れてしまった。

今僕はマイカさんの家にいる。

初対面の人に家へ泊まらせてもらうのは物凄く違和感があるし、実際マイカさんもああいったところでやめておくかと思っていた。

マイカさんは何も感じていないらしい。


「ハロンくん、ごはん食べるよねー?」

奥のキッチンから確認が来た。

「はい!ありがとうございます!」一旦承諾しておく。

ありがたいんだけど、違和感は大きい。

「ハンバーグ作るから手伝って!」

動員されてそれからは考える時間はなくなったが。


肉と具材を合わせてこねる、こねる、こねる。

これがハンバーグの難関だ。

9:00。

「よし、できたー!!」

ついに、マイカさんと僕はハンバーグへの達成感で満たされた。

空腹を忘れるほど、長い戦いだった。


お米とハンバーグの心地よい香りで鼻腔が満たされる。

一口食べる。

ふんわりとした食感にたっぷりの肉汁が続く。

マイカさん、焼くの上手だ。

お米をかき込む。肉汁とお米の優しい味がハーモニーを作っている。

美味しい。


「お腹いっぱい!」マイカさんはそう言うと、僕のハンバーグを取ろうとした。

「ダメでーす」


案外楽しいかもしれない。

何とかなりそうだな。




━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━☆


こっち側に現れるのは初めての、旅幸です。

勝手ながら自分の独断で一部文章を変えさせていただきました。

ハロンの旅はまだ始まったばかりなので、皆さんこれからもよろしく

お願いします。


ではまた、どこかで現れます。


    

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