9・覚める

冷たい空気が顔をなでつける感触で、目が覚めた。


まぶたをこすって、重い体を持ち上げると僕は、白い息を吐いていた。

昨日は《傑人》ルクアの祭りだった。


でも、昨日僕は行くことができなかった。

あのダンジョンにいたからだ。


寒い空気の残る階段を降りて、僕はリビングに入った。

ソルマや、父さんも母さんもまだ起きていなく、僕は一人水を飲んだ。


ダンジョンを解決しないといけないな。」


僕は一人でダンジョンの問題を解決しなければならない。

町長は僕をえさにするだろうし、ソルマや父さんには助けをえない。


「準備をしよう。」

今日は学校だが、先に調べることにした。




ルクア様の像の周りには色々な施設がある。

今は図書館に行くことにした。


僕は木造の荘厳な思い扉を押し開き、図書館に入った。

本の芳しさが鼻いっぱいに香り、僕は少し喜びを覚えた。


まあとりあえず、僕はお目当ての本を探し始めた。


「マルーデンの宮」という話を知っているだろうか。

ある国の後宮に住んでいた一人の令嬢が、婚約していた王太子と結婚できる

その前日。王子の宝物が盗まれ、令嬢が消えていたという話だ。


王子は令嬢がやったと信じられず、令嬢を自ら探し回った。

ついに全く見つからず彼は穴を堀り、死のうと決心した。

「令嬢のいない生き方など、あり得ない」とそう言い残して。


数十年後、令嬢が通ると失踪するというの話が王のもとに届いた。

そこは、怪物のいる場所になり、穴は「ダンジョン」と名付けられた。


そんな話だ。

僕はこの話があまり好きではなかった。

だが、ソルマが好きで何度も僕に読ませてきたため、僕はこの話をよく覚えていた。


この話以外、「ダンジョン」というものが出てくる話はない。


だから、町長がなぜそう思ったのか僕は不思議だった。

もしかすると、町長は知っていたのかもしれない。


真実を。

ダンジョンがある理由。ノルドの正体。ルクアの人生を。


そうこうしているうちに僕は、「マルーデンの宮」を見つけた。

さっそく読んでみることにした。


この本の作者は、オルントというらしい。

なんて怖い話を書く人だ。


内容は覚えていたこととほとんど同じだった。


ただ、違うところが一つあった。

「ダンジョン」という名をつけたのは王だったはずだったのが、

そこに、ナルドとソルドと書いてあった。


ひょっとすると、ナルドとソルドはノルドとルクアに関係しているのかもしれない。


そう思って、僕は家に帰った。


「ただいまー。」


まあ今はいい。

そろそろ学校の準備しなくちゃな。

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