第二章 始まる
8・行ってきます。
あの光が僕を包んだとき、僕は満たされていた。
怠惰な生き方をしていた僕は、迷惑をたくさんかけた。
そのとき僕は、こんなにも素晴らしいものが世界にあるのかと心に響いていた。
だから、こんな僕が「生きてもいいのか」不安だった。
でも、僕が今できることは「生きること」だった。
時には、辛いことがあるとしても、あの光を見たとき僕は、
「生きろ」と言われた気がした。
それで僕は、ドアを開いた。
目の中が少し水っぽくて、目を開けた。
小鳥のさえずりと、風が過ぎる静かな音がする。
「あっ」
体を奮い立たせて、起き上がると、足の先に
僕の体はまるで舐められたように、べっとりとした液で濡れている。
「うう、何だこれ?」
僕は顔についたそれを紅葉の葉っぱで拭き取った。
あの光のおかげか、今は
この数日、像を見に行ったあの日から僕の考え方は変わっていた。
僕が怠け者であることは解っていたが、ずっと僕は変えようとはしていなかった。
けれどもあの日、像を見にいったときに僕の心は間違いなく変わった。
今、僕は満たされていた。
「”よいしょっ”」
僕は変わるよ。
とりあえず僕は家に帰ることにした。
ただ、その前に僕は一つ調べようと思った。
この町の外れに元々は「像」があって、そこには「ノルドからルクアへ」と
書いてあった。
そして、この街の中心には「ルクアの《像》」がある。
もしかすると、
ルクアに関係があった人物の像があるかもしれない。
少しだけ雨は止んだようで、虹がかかっていた。
体が冷えて、動きたくないけど、歩く。
でも、一向に像は見えてこない。
二周、三周とした頃には、もう汗でシャツが更に重くなっていた。
「たっだぃまぁー」
やっとのことで家に帰ると、リビングにソルマが居座っていた。
「え」
まだ首都に帰っていなかったのか。
僕は少しだるさを感じた。
父さんと母さんも祭りから帰ったらしく、楽しそうだった。
「おかえり!ハロン。 すごい疲れてるけど大丈夫か?」
一瞬甘えそうになった。
が、僕は変わらないといけないと思い直した。
「いや、大丈夫だよ!ちょっと散歩してきただけ。」
「へー珍しいな!今日はなにかあったか?」
「うん、まあね。ちょっとだけ。」
僕はそう言った。
そのとき、ソルマが振り返って近寄ってきた。
「あのこと、町長が国と修道院に聞いたらしくて。そしたら町長、バカにされて
恥かいたんだって!
!だから、ハロン心配しなくていいよ!」
「え?」
それはダメだ。あの穴は《ダンジョン》だった。
ソルマは、笑い話のようにダンジョンのことを話した。
でも、穴は《ダンジョン》だった。
「待って!」
「え、なに?」
「いや、なんでもないよ。」
僕は、一人で解決しなければらない。
「はい!みんなで夜ご飯作るよ!」
気まずい空気になりかけたところで、母さんが助けてくれた。
「スマさんありがとうございます!楽しそう!ハロンも作ろー!」
ソルマも賛成してくれた。
「スマ、ちょっと休んでもいい?」
父さんが逃げようとした。
「ドロウも作ってね!」
すかさず母さんが止めてくれた。
ありがとう!
「じゃあ、今日作るのは、鮭の銀紙焼きです!」
母さんがどんどん役割分担していく。
ドロウは玉ねぎを薄切りにして。
ソルマちゃんはエノキをほぐしてね。
ハロン、銀紙を切り取っておいて。
じゃあ母さんが、焼きます!
バターを鮭にのせ、みんながした材料を合わし、フライパンで10分ぐらい蒸せば、完成です!
「お好みでポン酢とかネギをつけてもいいよ!」
あっという間に鮭の銀紙焼きができていた。
鮭のいい香りと少しのエノキの匂いが鼻に届いて、僕は早く食べたくなった。
「いっただきまーす!」
ソルマも父さんも母さんも疲れてたみたいで、お米と一緒に平らげていた。
鮭の身がふっくらとして、鮭のうまみがたくさん出た銀紙焼きは、
とても美味しかった。
米と一緒に食べると更に味わいが広がり、僕は米を何杯も食べてしまった。
みんな楽しそうで、今日あったことなど忘れそうだった。
でも僕は忘れられなかった。
今日は、眠りにつくには少し難しい日だった。
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