第7話 見る人の想像力を膨らませる絵画の死体
「おい
ぎゅっと擬音を立てながら
わざとらしく体をこすり当てながら俺の首に紙エプロンを丁寧につける。
「明日のデートとお食事の前に、大切な事を一つお伝えしなくてはと思いまして」
「大切な事??」
それっていったい何なのって聞こうとした矢先、
急な行動への驚きと、美人に頭を撫でられているというシチュエーションがぐちゃぐちゃにかけ合わさり、恐怖半分嬉しさ半分の奇妙な感情が胸の奥で渦巻いた。
「わたくしね、
「それはもう聞いたぜ」
「あなたの才能は私の目指す【究極の一枚】に必要なものなんですの」
「それも聞いた聞いた」
「でも、あなたと同棲する計画を立てたのはそれだけが理由じゃないですわ……わたくしは心の奥底からあなたの事が好きなんですの」
ふっと耳元でつぶやくと、
「画家としてのわたくしは
うん。
マジで
多分俺の動画のファンってのは本当で、ガチ恋勢的な感じだったんだろう。
女性として俺と言う男を求めている。
その理由が俺の動画だ。
じゃぁなんで画家としての
絵とは無関係も良い所の炎上系配信者だぞ。
う~ん。
考えるだけ無駄な気がする。
もういっそ思い切って聞いてみるか。
その方が早い。
「
「……気になりますか?」
「そりゃぁ、俺の炎上させる手腕はその一枚作る為に使われる訳だし。完成形は知っておきたいだろ」
とってつけたような理由を並べる。
こういう聞き方をした方が良いだろう。
「誰もがその絵素晴らしいと思う一枚。見る人の想像力を膨らませる絵画の死体」
「死体ってぇ。ちょっと大げさすぎないか??その表現は」
あまりにも強い言葉が出てきたもんで、俺は思わず笑ってしまった。
しかし、そんな俺に対して
「そうですわね。
「……もっと具体的に教えてくれても?俺の灰色の脳じゃ
「そうですわね。わたくしはこの一年で渾身の一枚を描きますわ。その一枚はコンテストで大きな賞を取り、画家であれば皆がうらやむような『箔』をつけるんですの」
「お、おう」
「そして……その絵を悲劇を装って粉々にぶっ壊しますわ」
「なんで??」
「今のSNS社会だときっとバズると思うんですの。『なんか知らないけど、価値のある絵画が壊された!!こんな悲劇は許されない!!』って」
世間の目なんてどうでもよくて、自分の世界を熱狂的に生み出すのが芸術家だと俺は勝手に思ってた。
だけど
どっちかっていうと、承認欲求に飢えている俺達に似ている価値観みたいに思えてしょうがなかった。
「そして、残骸になったわたくしの絵を見た皆さんは思うんです。『きっと凄い絵だったんだろう』って」
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