第30話 過去を知る者

 一方その頃、ビロードさんは。



「シチューさん、大丈夫でしょうか。

 ここ最近は街へよく赴いているようですが。

 私は、それが理由という訳では無いのですが…

 シチューさんには最近買い物をよく頼むんです。


 シチューさんは、普段は大人しいですが、買い物はしっかり出来ますし、今のところミスをしていないのが不思議です。

 少しぐらいは、不慣れな世界で失敗を経験するというのも、悪くは無いのですけれどね。

 シチューさんは、何と言いますか…

 どこか、失敗を恐れているような気がします。


 シチューさんは、自分から進んで『怠惰』であろうとしているような気がします。

 過去に一度、シチューさんが〝ニート〟という言葉を使っている所を聞いた事があるのですが、何か因果関係があるように思えてなりません。


 ただの怠惰であれば、シチューさんの振る舞いは、どこか腑に落ちない点がいくつかあります。

 勿論、常に怠惰であれ、というものでも、無いのかもしれませんが。


 ただ…何でしょうか、私には分かりませんが、シチューさんは、シチューさん自身にも把握出来ていないものが、あるかと思います。

 それが何かは、分かる日は来るのでしょうか…」



 そう言って、ビロードはコーヒーに口をつける。



「クロワッサン、どう思いますか?」


 そう、目の前の〝客人〟に、声をかける。



「下らん、それが貴様の話したい内容か?

 僕は時間を無駄にする気は無い。

 貴様が、其奴に何を肩入れしているかは知らん。

 だが、いつまでこの森に引き篭り続ける?」



 美形の犬竜、クロワッサン。

 性格は、キツいのだろう。



「いつまで、というのは分かりません。

 ただ、今すぐに此処を去るつもりもありません。

 私は、其方と協力するつもりもありませんが…

 ですが、シチューさんは其方サイドに預ける方が、良いのかもしれませんね。」


「そんな事はどうでも良い。

 其奴は腐っても至高領域の存在の端くれだ。

 放っておける訳が無いだろう。

 〝中身〟がどうなろうと、僕の知る所では無い。

 それに、其奴と同形態の同種が『堕ちた』との報告も既に挙がっている。

 余計な胡乱を招く訳にはいかない。」



 クロワッサンは、紅茶に口をつける。



「私にはあまり関係の無い話ではあります。

 其方には、私は協力する事は当面ありません。

 やらなければならない事も、ありますので。」



 ビロードは、コーヒーを静かに置く。



「フン、貴様が何処へ行こうと僕は大して気には留めんが、何処へ行く予定なのかは検討がつく。

 『鍵』と『鍵穴』を探すのだろう?

 貴様の脳内施錠を、解除されたようにな。」



 クロワッサンは、紅茶を静かに置く。



「ええ、そうですね…

 私は、脳内施錠が解錠された事で、いくつかの記憶を取り戻しました。

 ですが、まだ不完全です。

 これは…私の仮説ですが、シチューさんが『鍵』であると思っています。」


「そう考えるのが妥当だろうな。

 それで、貴様はどうするんだ?」


「この世界は、恵まれているのでしょう。

 かつてのこの世界は、シチューさんの言葉を借りるのであれば…『剣と魔法のファンタジー』と言った所でしょうか。

 ですが、今は違います。

 少なくとも、人間種が明らかに増えたので。」


「昔話に花を咲かせるつもりは毛頭無い。

 貴様のその漆黒の姿…」


 眉間に皺を寄せる、クロワッサン。



「ええ、これは…かつて、カオティック・デフレーションが発生した原因、そのものによる影響なのでしょうね。

 キメラテックなこの身体は、本来の私では無いという事は承知しております。」


「そうだろうな。

 貴様の本来の種族は…」




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ビロード と クロワッサン の 邂逅

──────────────────



 そして、その頃のシチューは…



「んねぇ!ミルクちょっと落ち着いてよ!?」


「だってだって〜!!」


「だってじゃ〜ぁ、ありませーーん!!」


「やぁ〜だぁ〜!!!」


「これ!これ凄い良いセーターだから!

 今ギリで買えるのってぶっちゃけこのクッッソ安いバーゲンセールのセーターぐらいだからぁ!!」


「何言ってるのか分からないよぉ〜!!!」


 ぎゃーすぎゃーす!!!



「ほっぺた膨らましてもダメなんですぅ〜!!」


「じゃあ凹ますもん!!」


「そーいう事じゃありません!!!てか逆になんでそんなにミルクは服着るのが嫌なの!?」


「シチューだって服着てないから!!!」


「そりゃそうなんだけどぉぉぉ!!!」


 わちゃわちゃ!!!



「もうやめてよ〜!ミルクそんなの着ないもん!」


「じゃあどうすれば服着る気分になるの!?」


「無い!!なんない!!」


「だぁぁぁ!!可能性を考えてェェェェ!!!」


「夢も希望も救いも無いもんね〜っ!!!」


「ねぇそのネタはガチでやめようかァァァ!??」




 ねーーーえーーーーーー!!!!!

 誰かこの子を何とか説得して下さいよォォ!!




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《ピッキングマスター/習得率0%》

《ロストワード・メシア/習得率0%》


・incense

 ピュリフィケーションを、行動で示した。

 グルーミングウォッシュ

 飢餓の救済者メサイアを、行動で示した。

 フィーディング・ミルク


 名付けが合計3名に達した。

 マルチ・ネーミング・ミーニング

 ロストワード・リネーム

 ネーミングセンス・安直


 他者の命運と運命を動かした。

 Fate and Destiny

 FAD:ロストワード・メシア+30%


 『鍵』となり得る可能性が示唆された。

 それは、直接的なincenseでは無い。

 有効となるか否かも定かでは無い。

 脳内施錠の解錠経験は補正を増強する。

 ■■■:ピッキングマスター+30%


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