第36話 タカキとサハトゥスの共同戦線
「出てきたは良いけど。あいつらどこに居るんだ?」
俺は夜9時になろうとしている街を飛び回りながら言った。
元禄から飛び出し、里ヶ伊とメドゥーサを探し始めたは良いものの、手がかりなんてよく考えたらまるでないのだ。このまま夜の街を駆けまわってもらちは開かない。
「心配いらない。連中はすぐに姿を現すだろう」
俺の懐から声がする。ポケットに入れたラムネの瓶からだ。そこに入っているのは黒いビー玉。過重侯爵サハトゥスだった。
キヨコは必ず状況を打破する力になると言って俺にこのビー玉を渡した。ラムネ瓶に入っているのはキヨコなりのシャレのつもりなのだろうか。
「そういうものなのか?」
「ディアベルを手中に収めた今、連中は最早手をこまねいている意味はない。人間のデモゴルゴン化が始まっているというならさっさと話を進めたいだろう。すぐにでも行動を開始するはずだ」
「でも、デモゴルゴンの術式ってやつは俺たちが結構潰したぞ」
「そうだな。おそらく儀式は中途半端な形にしかならない。だからこそ連中は動く。神にささげる人を直接狩るために」
「なんだって?」
「削られた術式で足りない数を直接自らの手で合わせるだろうということさ」
削られたデモゴルゴンを生むための術式。本来殺すはずだった数の足りない分を里ヶ伊は自分で殺すことで数合わせをするということか。なんてやつらだ。人殺しにまるで抵抗がないのか。
だが、その理屈なら確かに里ヶ伊たちは障害となるリーゼを閉じ込めている間に行動を起こしたいだろう。どこかで里ヶ伊は動き始める。
「じゃあ、この街のどこかで里ヶ伊はそれを始めるのか」
「ああ、おそらく人の多いところ、そこを狙うだろう。心当たりはあるか?」
「いくつかは」
繁華街や駅前あたりが怪しいだろうか。
しかし、それもそうなんだが。
「お前、いきなり裏切ったりしないだろうな」
俺はビー玉に言う。果たしてこいつを信用しても良いものなのか。今日の日中まさに殺し合いをした相手だ。そもそも、メドゥーサと手を組んでいたやつなのだ。
今はなぜだか協力しているが、正直まるで信用できない。
「君の気持は分かるがね。私もキヨコと契約している身だ。信じろと言っても無理だろうが信じてもらうしかないだろう。そもそも、私の協力なしでは君はやつらに文字通り何も出来ない」
「それはそうだけど」
サハトゥスが居ないければやつらと戦うなんて無理だし、リーゼを開放することは不可能だ。
まったく信用ならないが、それでも俺は信じるしかないんだろう。
「じゃあ、とりあえず繁華街の方へ行く」
「良いだろう。君の思う通りに行けば良い」
謎に力強い言葉を俺に送るサハトゥス。なにも考えてないだけなんじゃないのかこいつは。
とにかく、俺は街の中心部、繁華街に向かって家々の屋根を蹴る。なにも分からないがとりあえず行動しないと落ち着かない。
しかし、その時だった。
───ゴォオオオォオオォン
得体のしれない音が街に響き渡ったのだ。鐘の音のような、生物の鳴き声のような得体の知れない音。
俺は足を止める。
「今のは....」
「どうやら連中が行動を開始したらしいな。あれはデモゴルゴンの声だ」
「里ヶ伊がデモゴルゴンなんだろう? あれが里ヶ伊の声なのか?」
「どう言えばいいか。デモゴルゴンになるというのは神と同化することに近い。デモゴルゴンになった人間はその人間自身であると同時にデモゴルゴンでもある。人格が二重になっているといった感覚が近いか」
「難しい話は全然分かんないんな」
俺はサハトゥスの言葉を理解できるほどの頭は持っていなかった。
だが、とにかく里ヶ伊たちが動き始めたということだった。
───ゴォォォォオオオオン
またさっきの音が、デモゴルゴンの鳴き声が響く。
「これは、駅前の方からだ!!!」
俺は音のした方角に向かってビルの屋上から飛び出す。
音は北の方、主要交通網が集中する駅前から響いていた。
俺は街の上を全力で飛び、一気に駅前に近づく。
「なんだあれ」
しかし、駅前の様子はおかしかった。
近くに来たら分かる。
巨大なものがのたうっている。
それはタコの足だった。
大きなタコの足が数えきれないほどうごめき、翻り駅前を蹂躙している。
そして、その中心に居るのは。
「ふむ、今回のデモゴルゴンはタコをモデルにしているのか」
「タコ以外もあるのか?」
「ああ、デモゴルゴンは基になった人間の思う姿になる」
「そうか、今はどうでも良い情報だ!!!」
俺はそのまま一気に駅前に降り立った。
「里ヶ伊!!!!!」
俺は叫ぶ。
うごめくタコ足の中心、そこに居たのは里ヶ伊昌助とメドゥーサだった。
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